↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
42/68

第四十二話

「あ、……っ! い、い……やっ!」


悲鳴にすらならない、喉をかき切るような音が戦場に響いた。


武猿の黒棒が、震えるリアナの肩口に突き立てられ、ジワジワと体重をかけて地面に縫い付ける。

それは一撃で仕留めるための攻撃ではなく、明らかに弱者を弄び、その精神を折るための残酷な「拷問」だった。


「リアナぁぁ!!」


カイルが叫ぶが、吹き飛ばされた身体は思うように動かない。リアナが苦痛に顔を歪めるたび、その悲鳴が原生林の静寂を切り裂いていく。

ユーの脳内で、何かが焼き切れる音がした。


「……離せ……。その手を、離せぇええッ!!」


ユーが地を蹴った。

その速度は、先ほどまでとは一線を画している。右手に片手半剣を握ったまま、空いている左手で白日耀石を握り込んだ。そこへ、自らの腕に耀気を限界まで流し込んだ。


「ああぁぁあああ!!」


『崩化(ほうか)』──。

耀気の過負荷に耐えきれなくなった耀石に亀裂が走り、そこから溢れ出した白き燃え上がる炎のような光が、ユーの左拳を凄まじい破壊の塊へと変える。


ユーはそのまま肉薄し、全霊を込めた左拳を、リアナを抑えつける武猿の黒棒へと叩きつけた。


パキィィィィィン!!


金属音を超えた、空間が割れるような轟音。

赤蝕の粘液が変化した黒棒は、ユーの拳から直接放たれた『崩化』の暴力的なエネルギーに耐えきれず、粉々に粉砕された。


「……っ!? なんて威力だよ。俺と修行してた時以上じゃねえか!」


カッセルがその威力に目を見張る。だが、武猿の反応は、その驚嘆を即座に絶望へと塗り替えた。


武器を粉砕された直後、武猿はたじろぐどころか、空いた手で、振り抜いた直後のユーの左腕を正確に掴み取ったのだ。


「──ッ!?」


感情を排した魔獣の瞳が、至近距離でユーを射抜く。

次の瞬間、ユーの視界から天地が消失した。

逃れようのない強靭な膂力。

ユーの身体は巨大な鉄球のように振り回され、地面へと叩きつけられる。


ドォォォォォォォン!!

凄まじい衝撃が背中から全身を駆け抜け、肺の中の空気がすべて強制的に押し出された。

ユーの身体はその衝撃の中心で深く沈み込み、視界が真っ赤に染まる。


土煙が舞う中、全身の骨が軋み、意識が遠のいていく。混濁する意識のなかで、ユーはただ一点、震えながら自分を見つめるリアナの方へ、血に染まった手を伸ばした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。