第三十七話
ユー、カイル、リアナの三人がパーティを組むようになってから半年が経った。
中級魔獣、上級引率ありの上級魔獣討伐──赤蝕魔獣や黒霧魔獣の依頼もこなしていき、ついにカイル、リアナの二人は達成する。
ギルド本部の広間は、熱気に包まれていた。
重厚な石造りの壁には、数々の武勲を象徴するタペストリーが並び、その下で多くの狩人たちが、今日一日の成果を報告し合う喧騒に身を投じている。
「……カイル・ロディック。リアナ・エルフレイド」
受付の奥から現れた、初老のギルド職員の声が響く。
カイルとリアナが、弾かれるように前へ進み出た。職員の手元にある盆の上には、窓から差し込む午後の光を反射して、眩いばかりに輝く二枚の『金板』が鎮座していた。
「本日付で、貴殿らを上級狩人に認定する。……おめでとう。期待しているぞ」
「……っ、ありがとうございます!」
カイルが、奪い取るようにライセンスを手に取った。
赤髪をかき上げ、エメラルドグリーンの瞳をこれ以上ないほど見開いて、その輝きを見つめる。
「よっしゃああああああ!! 見たか、リアナ! 金だ、本物の金板だぜ!」
カイルは吠えた。周囲の狩人たちが驚いて肩をすくめるほどの声量だ。彼は隣で呆然としているリアナの肩を強引に抱き寄せ、黄金のライセンスを高く掲げた。
「……信じられない。本当に、手が届いたのね」
リアナは震える指先で、サファイアブルーの瞳を潤ませながら、自分のライセンスを胸に抱きしめた。
二人が目指すのは、単なる名誉ではない。極級に到達し、国から領地の自治権を勝ち取り、滅びた故郷を再建すること。上級への昇格は、その長い道のりの、しかし確かな第一歩だった。
少し離れた柱の影で、ユーは一人、腕を組んでその光景を見つめていた。
銀灰色の前髪が、コバルトブルーの瞳に薄くかかる。
「……良かったな」
口をついて出たのは、いつもの無愛想な言葉。だが、その視線はどこまでも穏やかだった。ユーに口角がわずかに緩む。
自分はまだ「銀板(中級)」。制度上の「貢献度」という壁が立ち塞がっている。
焦りがないわけではない。仲間が光を掴んだ。それが、復讐という闇の底にいるユーにとって、どれほどの救いになっているか。
「よし、ユー! 金板の初仕事、お前もついてこいよ。依頼は『剛角土竜』の討伐だ。上級の力、見せてやるぜ!」
カイルがライセンスを誇らしげに叩きながら笑う。
「……ああ。付き合うよ」
三人は意気揚々と、夕暮れの街を後にした。
同じ頃、一人の男が深い森の入り口に立っていた。『極級狩人』の一人、カッセル・ヴァングレイブ。
彼が追う怪物の足跡が、図らずも若き三人の目的地へと向かっていることなど、今はまだ誰も知る由もなかった。




