第二十八話
「耀石に、高密度の耀気を絶え間なく流し続ける。すると耐えきれなくなった耀石に亀裂が生じ、内包された属性エネルギーが勢いよく漏れ出す」
ユーの言葉に、リアナが息を呑む。
「……耀石に亀裂が入るぐらいの高密度の耀気だなんて、とんでもない耀気量が必要になるはず」
「ああ。だが亀裂が生じ、耀石から漏れ出した直後の属性エネルギーは、適性の有無に関係なく俺の耀気と混ざり合い、同調する。……この現象を『崩化現象』と呼ぶらしい。本来なら操れないはずの属性を、俺の耀気として安定させ、制御出来るようになる」
「ユー、お前……とんでもねぇな。あ、いや、悪口じゃねえ! 凄すぎるって意味だ!」
カイルが戦慄しながらも、興奮を隠せずに叫ぶ。ユーは淡々と続け、視線を自分の右手に落とした。
「だが、混ざり合った瞬間の属性耀気は、あまりに膨大なエネルギーだ。以前、『盾』の耀気でこれを試した時は、衝撃の分散が間に合い、腕が痺れる程度で済んだが……」
「……もし、高密度の『矛』でこれをやるとしたらどうなるんだ?」
カイルの問いに、ユーは短く首を振った。
「流石に、腕を失うわけにはいかなかったから直ぐには実行できなかった。……だが、盾の崩化現象では上級魔獣の装甲を貫く決め手にはならない。だから、やるしかないと判断した」
ユーの両手から光がスーッと消える。静寂。次の瞬間、右手に強烈な『着化』が奔り、一方向へ激しく吹き出す白き炎――超高密度の『矛』が灯った。
「お、おい……?」
「ちょっと、ユー!?」
二人の制止を余所に、ユーはテーブルの白日耀石を拾い上げ、右手の内でそれを凝視した。
「矛の高密度耀気で耀石を割り、属性エネルギーを取り出す。俺の耀気と混ぜてそのまま矛の属性耀気として安定させる。そして属性耀気が爆発的な威力を発揮する直前、盾の耀気で右手の表面と内部を浸透させるように保護する……これらすべてを片手で完結させる」
ユーが指を締め、わずかに右手に耀気を込める。
その刹那、拳の隙間から、まるで真昼の太陽を凝縮したような白い光が鋭く漏れ出した。
ギチ……と、石が軋む音が静かな酒場に響く。
「……っ」
リアナが息を呑み、わずかに椅子を引いて身構える。カイルも言葉を失い、ユーの右手を凝視した
「……今のが、一連の流れだ。理屈は分かっただろう」
ユーは淡々と告げ、テーブルに白日耀石を戻した。
石は砕けておらず、元のままそこにある。張り詰めていた空気が緩み、二人はようやく止めていた息を吐き出した。
「これが、無属性の俺が属性を使う——唯一の手段だ」




