第二十七話
「え? そんなことあるの?」
リアナのサファイアブルーの瞳が驚愕に染まった。
「無属性なのに、水耀の発化を使ったってこと……?」
「そうだ! お前、あの発化どうやったか教えろよ!」
カイルが身を乗り出し、机を叩いて詰め寄った。
「俺には無理だって言ったよな!? なんで属性もないお前に、あんな芸当ができるんだ!?」
「なら、一から説明しよう。長くなるが勘弁してくれ」
ユーは静かに告げると、懐から白日耀石を取り出した。
「あれは確かに『発化』だが、君たちの知るものとは少し違う。本来、耀気の基礎である『着化』の延長に、武器へ纏わせる『転化』があり、耀石へ直接流し込み属性や身体強化を引き出す『発化』があるはずだ」
ユーが白日耀石を掌で握り込む。刹那、彼の右手から燃え上がるような白い光が溢れ出した。
「これが通常の発化だ。拳の威力は上がり、下級魔獣ならこれでも十分に対処できる。だが……俺はこの発化に、いくつかの技術を使用する」
ユーは耀石をテーブルに置き、両手を持ち上げた。
右手の光は、一方向へ激しく噴き出すように。
左手の光は、一定の形を保ちながらも、ゆらゆらと不規則に揺らめく。
「耀気操作の発展技——右手は破壊力を産み出す『矛』の耀気。左手は衝撃を分散、吸収する『盾』の耀気だ。中級クラスの狩人なら、これらを転化と組み合わせて戦うのが一般的だろう?」
「あ、ああ。俺も戦斧に『矛』の操作を乗せて叩きつける。……だが、おい」
カイルの声が引きつる。
「私も『矛』と『盾』はできるけど……同時だなんて無理。一つこなすだけでも、耀気操作に神経をすり減らすのに」
リアナが信じられないものを見る目でユーの手元を凝視した。
「属性に恵まれなかった俺は、これ(操作)を極めるしかなかった。幸い耀気量だけは多かったから、地獄のような訓練も耐えられた。左右で同時、あるいは瞬時の切り替え……それを死ぬほど繰り返した結果だ」
「よくわからねぇな。確かに同時発動は凄げぇが、それがどうあの『水耀』の発化に繋がるんだ?」
カイルの疑問に、ユーの瞳がさらに鋭さを増す。
「……耀気は密度を上げれば、破壊力も防御力も飛躍的に向上する」
ユーが集中を高めると、左右の手を包む光が一層激しく輝き、空気を震わせた。
「密度を上げた耀気の『矛』と『盾』。これには極限の集中力が要る。今、俺の身体の他の部分は、耀気が薄く弱々しい無防備な状態だ。だがその代わり、この右手の破壊力と左手の衝撃吸収力があれば、大抵の中級魔獣とも渡り合える」
酒場の喧騒が遠のくほどの圧に、二人は言葉を失い、目を丸くした。
「もちろん、物理的なダメージが通りにくい魔獣も存在する。そうした相手には属性攻撃がセオリーだ。……元より仲間を募るつもりもなかったし、属性には縁がないと思っていたんだがな」
ユーはそこで言葉を切り、剥き出しになった手のひらを見つめた。
「属性を持たない俺が、属性攻撃を出来る唯一の方法があった」




