第二十三話
「おい、待てよ……!」
カイルが痛む体を強引に起こし、去りゆく背中に声を荒らげる。礼を言うのも忘れ、その瞳には先ほど目撃した光景に強烈な好奇心が色濃く浮かんでいた。
「さっきのは何だ? ……ただの発化じゃねえだろ。耀石を直接ぶっ壊して爆発させるなんて……どうやったんだ? 教えてくれよ!」
食いつくカイルの問いに、ユーはようやく足を止めた。だが、振り返ったその瞳には相変わらず温度がない。
「……おそらく、君には無理だ」
蔑みも誇りもなく、ただ事務的に事実を告げる。
「なんだと……!? やってみなきゃ分からねえだろ!」
「カイル無事で良かった……でも助けてもらったんだからお礼言わなきゃ!」
背後から聞こえる不服そうな少年と先程まで泣き出しそうだった少女の声を聞きながら、ユーはわずかに安堵していた。
貴重な水耀石を一つ失った。それでも、目の前の命が繋がったという事実は、彼を満足させていた。
「あ、もしかして……すごい勢いで中級に上がったっていう、ユーさんだよね?」
少女は思い出したように声を弾ませた。その顔には、先ほどまでの怯えはなく、同世代の有望な狩人に対する純粋な敬意が浮かんでいる。
「私はリアナ。リアナ・エルフレイド。こっちの失礼なのはカイル・ロディック。これでも私たちも中級なんだ。……でも、今日は完全にユーさんに助けられちゃったね。カイルを助けてくれて本当にありがとう!」
屈託のない笑顔で右手を軽く振るリアナ。
「……ああ。ユー……ヴァングレイブだ」
ユーは短く応じ、それ以上会話を続けることなく背を向けた。
(……相応の力はあるんだろうが、運が悪かったな。中級クラスでもあれは手こずるだろう)
「誰が失礼だ!って、おい待てよユー! 技のこと教えろって!」
背後から聞こえるカイルのという騒がしい声を、ユーは無視して歩を進める。
(叫ぶ元気があるなら、もう心配はいらないな)
ユーは懐のポーチに触れ、砕け散った耀石の感触が消えたことを確認しその場を後にした。




