第十二話
属性適性無しと知ったあの日から1年が過ぎた。
「オラァッ、気ぃ抜くなよ!?」
カッセルの怒声とともに、揺らめく炎のような白い光を纏った拳がユーの顔面を強襲する。
ユーは寸前で首を傾け、その一撃をかわした。頬を掠めた風圧だけで肌が焼けるように熱い。
互いに『纏身着化』により全身を耀気で補強し防御力を得る基本の技術を駆使しつつ、カッセルは白き炎のような光を拳や脚に纏わせ、苛烈な攻撃を仕掛けていく。
今のユーも1年前の非力な少年ではない。
属性の力を持たない彼は攻撃と防御を瞬時に切り替える耀気操作をカッセルに徹底して仕込まれた。
最初は苦手であった耀気操作も1年の絶え間ない修行の末。
荒れ狂う劫火のごとき攻撃の耀気、そして、いかなる衝撃も受け流す陽炎のごとき防御の耀気。彼はその両極に位置する力を会得していた。
「……ふっ!」
ユーは低く沈み込み、カッセルの懐へ潜り込んだ。
激しく燃える炎のような白き光──耀気がユーの全身を包み込んでいる。
最小限の動きでカッセルの繰り出す拳を次々と捌ばいていき、自身の右拳に耀気を集中させた。
ドォォン! と空気が爆ぜるような衝撃音が響く。カッセルは腕でガードしたその上からでも、圧倒的な威力に後ろへと吹き飛ばされる。
(……ったく、驚かせる。大した反射神経と身体能力だ。それにこいつは最初から、敵を倒すための重心の置き方を体で覚えてやがった)
拳を交えながら、カッセルは確信に近いものを抱いていた。
弓使いの魔獣狩り専門の狩人一族、ヴェルライト。ユーには一族伝統の弓の才能はなかったが、その足運び、相手の動きを見てから次の攻防へと繋げる判断力と瞬発力は目を見張るものがあった。
(これは一朝一夕で身につくもんじゃねぇ。……こいつの親父さんだな。接近戦での戦い方を仕込んでやがったんだな。わかってたのか……息子が弓という『道具』に頼らずとも、己の肉体そのものを武器と出来る才能があるってこと)
カッセルは口角を吊り上げ、揺らめく白き炎を拳に宿して再び踏み込んだ。
視線の先では、ユーが鋭い眼光でその軌道を見切っている。
「親父さんの期待通り、いやそれ以上に仕上げてやるよ。来い、クソガキ! 」
カッセルはさらに出力を上げ、白い炎を激しく燃え上がらせる。
ユーもまた、師の熱量に応えるように不敵な笑みを返し、耀気を拳に纏って突き出した。
「……言われなくとも!」
師弟の笑みが重なり、再び爆音とともに二人の影が衝突した。




