第十一話
「じゃ、まぁ細かい話は置いといて。ぼちぼち、どの属性に適正があるか調べるぞ」
カッセルは、ユーの目の前に親指の先サイズの五つの石を並べた。赤、青、緑、黄、灰色。それぞれが火耀、水耀、木耀、土耀、金耀の耀石である。
「やり方は簡単だ。この五つの石に1つずつ耀気を流してみろ。……単純な話だ。微量の耀気を纏った指先で石に触れ、一番光った石がお前の適性属性ってことになる」
ユーはゆっくりと膝をつき、五つの石に1つずつ触れ、微量の耀気を流していく。
どの石に触れても、結果は同じだった。その内部で光が発することも色が濃くなることもない。ただ綺麗な小石として、そこに転がっているだけだ。
「…………どれも反応なしか」
カッセルが頭を掻きむしる。しかし、ユーは驚く様子もなく、ゆっくりと立ち上がりました。
「……知ってた。父さんにも、昔同じことさせてもらったことあったから」
ユーの声は、どこまでも平坦でした。
「あの時も、どの石も光らなかった。父さんはお前がまだ幼いせいだ、耀気が未熟なんだろうって笑ってたけど……。結局、僕には適性なんてものは、最初からなかったんだ」
期待していたわけではなかったが、それでも目の前で沈黙し続ける五色の石を見つめるユーの胸の奥には、冷たい隙間風が吹き抜けるような感覚があった。
「適性がなきゃ、カッセルさんがさっきやったみたいな転化は使えない。……そうだろう?」
ユーはカッセルを真っ直ぐに見据えた。
属性という武器を持たず、ただの肉体強化(纏身着化)だけで、どうやって強大な魔獣に、そしてあの仇に届くというのか。その問いが、静かな怒りのようにユーの瞳の中で揺れていた。
「……もしかしたら、そういうこともあるかねとは思ったが、まぁ無いもんはしゃあねぇ、切り替えていこうぜ。お前の中に内包する膨大な耀気だよりの修行に変更だ」
カッセルは事も無げに言って、転がったままの五つの石を乱暴に拾い上げた。ユーの期待外れの結果に落ち込む暇さえ与えない、突き放すような物言いだった。
ユーは、自分の指先を見つめたまま動けないでいた。石は、光らなかった。
一瞬の奇跡も、隠れた才能の片鱗も、そこにはなかった。
「湿っぽいねぇ……いいじゃねぇか、これで修行の方針が決まった」
カッセルは豪快に笑い飛ばし、絶望に沈みかけていたユーの肩を、力強く叩く。
「……でも、カッセルさん。耀気を纏った拳を振るうだけじゃ、魔獣は殺せないって言ったよね。気休めはやめてよ」
ユーは膝を抱えたまま、地面に転がった無反応な石を見つめて不貞腐れたように言った。自分が「持たざる者」だと突きつけられた事実は、少年の心に重くのしかかっていた。
「ああ、言ったかもな。属性無しは才能無しなんて言葉もあるしな。だが俺は前にこうも言ったぞ。お前は接近戦で怒りを、そのまま拳や剣に乗せてブチ当てろってな」
カッセルは自分の拳を固く握りしめ、突き出して見せた。




