第十話
「お前、属性の話とかはわかるか? ほら、お前も男ならこの手の話は好きだろ」
カッセルは焚き火の傍らにどっかと腰を下ろした。爆ぜる火の粉を気にする様子もなく、懐からいくつかの小石を取り出した。
それはただの石ではない。親指の先ほどの大きさで、磨き抜かれた宝石のように滑らかな表面を持ち、その奥底では、それぞれ異なる色の光が生き物のようにうごめいている。
カッセルが大きな手のひらでそれらを転がすと、ジャラリ、という硬質な音が夜の静寂に響いた。
「……知ってる。父さんに見せてもらったことある」
ユーは、かつて父から学んだ記憶の引き出しを開ける。
「人間が本来使える耀気は白の無属性のみ。でもこの『耀石』を使うことで五つの属性を引き出すことができる。物理的な防御に適した『金耀』。属性攻撃に転じやすい『火耀』、『水耀』、『土耀』。『木耀』は傷を癒す。属性は組み合わせることでより強い力を引き出すこともある」
「ほう、物知りじゃねえか。座学は一人前ってわけだ。じゃあ、残りの二つは?」
カッセルが試すように目を細め、手の中にある「白く輝く石」と「底知れず黒い石」を指先で弾いて見せた。ユーはそれを見つめ、言葉を継いだ。
「……属性や耀気の効果を底上げする『白日耀』。それと……人の耀気が通りにくく使い手からはあまり好かれない『夜月耀』。これらは七つの耀石は多くの場合、耀気を吸って育つ木、『耀樹』や魔獣の体内から見つかる」
カッセルは立ち上がり、背負っていた大剣を引き抜いた。
「まぁそんなとこだな。纏身着化で肉体の強度を上げる訓練はしたな?あれでだいぶ耀気操作はマシになったはずだ。だが、単純に耀気を纏った拳を振るうだけじゃ、硬い魔獣は殺せねえ。耀気を属性に変換させられれば、戦いを有利に運ぶことができる。……で、だ。こっからはよくある話。適正の問題だ」
カッセルが呼気を吐き出すとともに、白い光が右腕から巨剣の柄へと流れ込む。白い光の奔流は刀身を駆け抜け、鍔元に埋め込まれた赤い耀石に到達した。
次の瞬間、石を起点として刀身全体に変化が起きた。純白だった耀気は、石を通り抜けた瞬間、鮮やかな炎を伴う赤色に変貌する。
「これが属性付与の『転化』だ。俺は火の適正がある耀気使いでな。武器に仕込んだこの赤い耀石に、俺の耀気を流し込む。すると石が反応し、こうして武器そのものが属性の力を宿すってわけだ。身を護るのが着化、武器に属性付与したり、強化したりするのが転化って感じだな」
父から教わった知識という点と、目の前の現実という線が、ユーの頭の中で凄まじい速度で結びついていく。
ユーは無意識に自分の右拳を強く握りしめていた。復讐を遂げるための技術を食い付くように学ぶ姿勢。そのあまりに鋭い眼差しに、カッセルは背筋に冷たいものが走るのを感じた。
「もし、適性と異なる石を使えばどうなるの? 変換効率が落ちるだけなのか、それとも拒絶反応が起きるのか……。それから、石の純度によって、発揮出来る属性の力は変わるの?」
淡々とした口調ながら、本質を突く問いの鋭さに、カッセルは思わず苦笑いを漏らした。
「……おいおい、いきなり質問攻めかよ。まぁいい、少しずつ教えてやるからよ」




