表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/36

嘲笑うもの

~100

 タークの冒険者ギルドにて、

「これで皆さんはBランクの冒険者となります、はっきり言ってその若さでBランクになった方は数えるほどしかおりません。

 ギルド側もあなた方には期待しておりますのでくれぐれも無理なことや道を踏み外すようなことはしないようにお願いいたします」

 と受付のギルド職員の姉さんが微笑みながら全員にギルドカードを渡す。


 ニコルが新たな趣味・空中遊びに目覚めてから3カ月がたとうとしていた。

 その間にこの大陸に戦乱の兆し的なものが吹き荒れていた、簡単にいうと北大陸サームスギでデモン種の建てた国が神聖ハーモニア王国にケンカを売ったってだけの話なのだが。

 本来海を挟んでの戦争なんて無茶もいいところだと思うんだけど、なかなかの電撃作戦だったらしく神聖ハーモニア王国の4分の1の国土が占領されてるらしい。

 正直神国(神聖ハーモニア王国)はもう終わりなんじゃないかなって思ったりするんだけどいまだに粘ってるらしい。

 そんな風に世の中が動いてる中でも俺ら”ファルシオン”はランクアップのために日々依頼をこなして今日やっとBランクに昇格したのだ。

 因みに昇格依頼はオーガの討伐だったんだけど・・・ほとんどニコルが無双状態で軽く終わってしまったのは言うまでもない、試験管の驚きの表情が印象的だった。

 よく”ハモニアの剣”とも組んだりしていたので彼らもBランクへの挑戦権を得ていたのだが自分たちにはまだ早いと保留にするようだ。

 またワン太郎が進化してブレードウルフからスラッシュウルフというのになった。

 どんな感じかというと体毛の色はそのままで体のサイズがまた大きくなった、今の大きさはお座り状態でライカの頭とワン太郎の頭が同じ高さにある。

 ニコルが密かにショックを受けてたのは内緒だ。

 また、額の角はそのままに体の至る所から鋭利な刃を伸ばすことができるようになったようだ。

 そろそろツー太郎も進化するのだがね。

 また、身長の事で悩んでいたニコルも大分背が伸びて150から今では156になった・・・。

 というわけで今のところ特筆して変わったのはこの二人くらいである・・・違った一人と一匹だ。



「それでは今日はそれぞれ休んで、明日セイムの町に向けて出発しましょう」

 というニコルの提案の後に今日は解散した。

 3カ月の間にテレ-ズの越境許可証はダメもとでタークで申請してみたら意外にも簡単に発行された・・・高かったけど。



 翌日早朝。

「おいおいおい!もう行くのか?」

 と訊いてきたのはガデム。

「はい、急ぐ旅ではなかったんですが、戦争が始まった以上目的の場所が戦火に巻き込まれる前にたどり着きたいので少し急ぐことにしました」

 とニコルがガデムたちに説明する。

「そうか、だが君たちがいっていたセイムの町は既に”魔王軍”の勢力下にあるそうだ、戦闘に巻き込まれる可能性も十分あるから気を付けるんだぞ」

 ケインが心配して注意を促す。

「ご心配ありがとうございます、なるべくそういったことに巻き込まれないように注意しておきますね」

 ニコルが素直に注意を聞き入れる。

「では皆さん、だいぶお世話になっておきながらここでお別れになるのは心苦しいところはありますが、そろそろ出発しますね。

 また会いましょう、お世話になりました!」

「おう!またな!」

 こうしてニコルたちはタークを後にする。

 さて、ニコルは戦争に巻き込まれないようにするつもりら~し~い~が~。

 ニコルを英雄にするならこんなにうってつけのイベントは無いんじゃなかろうか?

 等と不穏な計画を勝手に立て始めていることはニコルにも内緒だ・・・。


 タークを出て二日目の昼、国境を遮っている関所に到着した。

 俺はてっきり柵的な簡単な物で道を封鎖してるだけだと思ってたんだけど、俺たちの前にはでかい砦が立っている、関所ってこれなのかな?

「この砦で何か手続きでもするのかにゃ?」

 ニナがサラに質問すると。

「いえ、特に手続きなんかいらなかったはずよ?

 ただ、この砦がハモニア共和国での最後の宿場になるから一応ここによりましょう」

 というわけでこの砦によることにした、ん?砦の名前はって?


「ようこそ我がゴタク砦へ!」

 門番に身分証代わりのギルドカードを見せるとかしこまって挨拶をしてきた。

 場所によって変わることもあるらしいがBランク以降町に出入りする際の料金は発生しなくなるらしい、Bランクまでなると腕とギルドからの信用なんかがあるためとかなんとか言っていたが要するにタダになった。

 まぁ、ただ寄っただけなので内部深くにはいっちゃだめらしいけど・・・当然のことだな。

 砦の中で特に何かあったわけでもないのだが、野宿するよりはましだという理由でこの砦による人は割と多いらしい。

 ちなみに許可証は国境を越えた後の町なんかで身分証明が必要になった時に使うらしい、パスポートみたいなもんだな・・・パスポートとか使ったことないけど。

 というわけで翌朝すぐに砦を発つ。


 砦を出て二日目に検問みたいなことをやってる奴らがいたので馬車ゴーレムを停める。

「失礼ですがこの先に御用でしょうか?」

 と検問をやっていた男が訊いてくる。

「はい、この先にあるセイムの町近くに住む知り合いに会いに行く途中です。

 これはいったい何をしているのですか?」

 とニコルが訪ねる。

「はい、ここから先は我々”魔王軍”の占領下になるので入国の手続きをしてもらっているのです」

 と答えてくれる、手続きがあるのかめんどいな・・・よかった~俺剣で。

「そういえば”魔王軍”という名前が有名すぎるので僕たちのいた町では”魔王軍”の国の名前を聞く機会がなかったんですけど、どの国の軍なんですか?」

 ニコルがそんな質問したが応対してくれている青年は苦笑しつつ。

「サームスギ大陸のヴァンガルド帝国になります、いずれこの大陸唯一の国の名前なので覚えておいたほうがいいですよ」

 とさわやかスマイルで答えてくれた、ふむ侵略国家なら余計うってつけだな。

「ではこの手続きはいつ終わるのでしょうか?」

「そうですね、夕方には終わると思います」

「分かりました、ありがとうございます」

「いえいえ、ではこれで失礼します」

 と青年は離れていった。

 青年の言ったとおりに手続きは夕方に終わったのでこのあたりで野宿となった。

 翌朝すぐに出発し、ようやくセイムの町に着く。

「では冒険者ギルドに行きましょう」

 ニコルの提案に全員が賛同する。

 そして事件が起きる。

「おーやー?僕ちゃん、こんなに綺麗な子たちを連れてどうしたの~?

 ここはおしめをかえる場所じゃないよ~」

 チンピラが沸いてきた。


 がニコルは文字通り目にもとまらぬ速さで絡んでくる奴らの意識をどんどん刈り取っていく・・・だんだんチンピラに容赦が無くなってきてるな。

「・・・ようこそ、本日はどのような御用でしょうか?」

 笑顔が引きつっている受付さんに宿の場所を聞き宿に向かう。

 一晩宿を取り明日、目的地である研究所に向かうことにしたので今日はこの町で一晩明かすことにした。

 どうにも死にたがっている奴らもいるようなので一晩の滞在は必須となる。

 さて、ストーカー共は何が狙いなのやら・・・。


 女性陣と別れ宿の個室に入るニコル。

「さて、どうしましょうか?」

 と質問のような独り言をつぶやく。

「いえ、兄さんに聞いてるんですよ?」

 どうやら俺に質問してたようだ、確かに大きな声で俺と話すのは色んな意味でリスキーだ、主にかわいそうな人的に。

「兄さん・・・いいかげんに返事ぐらいしてもいいんじゃ無いですか?」

 おっと、弟君が怒りだしそうだ。

『いや、無視してたんじゃないぞ?

 俺なりに少し考え事をしてたんだ』

「考え事ですか?」

 ニコルが首を傾ける、頭にハテナマークが・・・見える訳もないか・・・。

『ギルドからストーキングしていた奴をどう片付けるかをな』

「片付けるのは決定事項なんですね、別にかまいませんけど大したことじゃないでしょうし」

 そう、片付けるだけならニコルが瞬殺できると思うので考えるまでもないのだが正直それじゃあつまんない、というより複数人が散らばって監視している今の状態だとニコルでも何人か逃げられる可能性がないこともないのだ。

 そうなるとブレド・ファルシオンダミーの二の舞になる可能性もあるかもしれない、何よりここは魔王軍に占領されているし何が法に触れるか分かったもんじゃない。

『というわけで俺がいく』

「いきなり”というわけ”じゃわかんないですよ!?」

 ニコルが珍しく俺に抗議する・・・反抗期って奴だな。

 等と特に益もない考えをもちつつ”というわけ”の部分を説明する。

「分かりましたけど、兄さんだけで何ができるんですか?」

『何を言う、何でもできるぞ?』

「はい?」

『信じて無い・・・これが反抗期って奴か。

 まぁいいやそんな事、ニコル』

「はい」

『アイポから俺が言うものを出してくれ』





 闇夜にまぎれてギルドからニコルたちを尾行していた男たちは二人一組で5つに分かれてニコルたちが寝静まるのを今か今かと待ち構えていた。

 とナレーションを流しているのはご存知俺ことファルシオンです。

 現在男たち仮称ストーカーたちの1つの組の上で待機しております。

 どうやって?

 ネズミってのはどこにでもいるのさ。

 さて、二人一組で五つ・・・まずは宿から一番遠いとこにいた二人組を狙い片方に”マインドハック”、もう片方に”ソウルハック”を使う。

 ここで”ライブラリ”から新事実こいつら昼間のチンピラだった、しかも6人は昼間ニコルが瞬封した輩で残り4人はそいつらの兄貴分だとさ、用心して損したな。

 それなりに腕がよさそうだから期待してたのに所詮チンピラとその兄弟分、俺の敵じゃない・・・といっても今から戦うのはチンピラの体なんだけどね。

 闇夜にまぎれて一組ずつ襲う、お互いが確認できるような位置取りなので”マインドハック”した方を残して他の全員の虚をつく形で襲い掛かる・・・使うには”マインドハック”だから死角から棘伸ばして差すだけなんだけどね。

 最後の一組にマインドハックを施すと一か所にこいつらを集めて命令する。

 命令は”明日の昼にこいつらが(チンピラが)普段気にくわないと思っているギルド職員をギルド内で襲撃する”って命令だ。

 ついでに”命令したのは魔王軍の奴らだ”って言わせようかな?って迷ったけど・・・言わせるか。

 言わせた後にさらに尋問されたらそれとなく”自分たちに命令したのはゴタク砦の将軍だ!”とでも言わせたらより面白いことになりそうだ。

 もちろんそこまで喋ったらこと切れるように調整しないとな、”カスタマイズ”で出来ないかな?・・・無理っぽいな。

 んじゃあ芝居うたせるか、尋問がエスカレートしたら7人に舌を噛んでもらって・・・魔法なら助けられるかもな、んじゃあ歯に致死魔法でも仕込んどくか。

 いやいやいや致死魔法を仕込んでおけるなら下手な芝居で”最後の1人が”的な状況作らなくてもいいのか。

 最初の予定通りに明日の昼頃に9人でギルドを襲撃して捕まったら魔王軍にやれと言われたと吐いて、さらに尋問されたらゴタク砦の将軍にギルドと魔王軍の間に溝を開けろと言われた!的なことを言ったら全員に仕込んだ致死魔法で死んでもらおう。

 そうすりゃ真相は闇の中。

 こいつらごときに態々よその国の将軍が依頼するわけがないと考えるだろう。

 なら、誰が依頼するか誰が黒幕か・・・的外れな調査で混乱が起き他国からの侵略軍の占領下にありながら治安のいいこの町に疑心が生まれ、後は人の業が事態をろくでもない方に進める。

 なんて事になったら面白いな~ってノリでとりあえず指示を出しておく。

 いずれにしてもこいつらは死ぬ運命なのは変わらない。

『・・・ならせいぜい俺を楽しませてみろよ。』

 ネズミに乗れるサイズまで小さくなった俺はネズミに咥えられた後に”ソウルハック”したチンピラを”オールイーター”で吸収しその場は解散するよう命令する。

 ニコルの部屋に戻りながら計画した通りに事が進んだらどうなるかと表情を作れない剣でありながら声を殺し笑う。

 悪ふざけに翻弄される者たちを想像して俺は嘲笑うのだった・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ