↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/36

ニコルと新入り

~67話

「では雪鱗さん、どんな依頼を受けたのですか?」

 ニコルの質問に。

「これ!」

 雪鱗が提示した依頼は。

・ブレードドックの討伐・・・シーフォート近くにあるケイブ森林に生息しているブレードドックの討伐をしてもらいたい、とにかく数を減らしたほうがいいので規定数を超えて討伐をすればその分上乗せして報酬を払います、規定討伐数5匹、討伐証明部位は額の角きちんと根元があるもののみ数えるので注意してください・・・報酬1500ナル+超過討伐数で加算


「なるほど、それでは試験官とはどこで合流でしょうか?」

「入口で待ってるってさ~」

「町の入口ですか?」

「そだよ~」

「分かりました、では行きましょうか?皆さん」

 そういってニコルたちは合流場所に移動する。


 合流場所につくとそこにいたのは。

「おはようございます皆さん、本日試験管を務めますコリンです」

 自己紹介を済ませてコリンは軽く会釈をする。

「コリンさんが試験官でしたか」

「あまり驚かれないのですね?私は現在あなた方のDランクの昇格依頼の試験官も務めてますのに」

「僕達も今現在自分たちの昇格依頼じゃない依頼を受けてます、それができてる今、コリンさんのように暇があるなら試験が重複してもいいかと思いますし・・・僕らが今日中に依頼を完遂できない場合はケイベルについて来てもらうことも視野に入れねばなりません。

 そうなるとコリンさんは丁度いい試験官だったのでむしろコリンさんが試験官になってくれたらいいなって思ってました」

 とコリンに向かって優しく微笑むニコル、コリンは顔を赤くして小声で「そうですか」と呟く、ニコル・・・恐ろしい子である。

「話は済んだ?んじゃあすぐ出発しよう!んで早く終わらせて師匠に報告しなきゃ!」

「師匠?とっそれより雪鱗さんコリンさんに挨拶だけでもしてください」

「ははっいいですよ、一応試験を受ける側のプロフィールは一通り入ってますから」

 と慌てて雪鱗に注意するニコルにコリンは笑って大丈夫だと告げる、内心もやっとしてはいるようだが。


「ツー太郎ブレードドックの群れが近くにいるかわかるかな?」

「バウ!」×2

 ツー太郎の案内でブレードドックを探す、因みにサン太郎はサンダーエッジと一緒に隠れている、コリンに見つかると面倒だからだ。

「こうやっているとこれじゃあ雪鱗の試験には見えないわね」

 と余計なことを言ってしまうサラ。

「そうだね~でも私たちの場合はもっと楽だったし~これはこれでいいんじゃ無いかな~」

 ライカがフォローするが。

「そうだよね、これぐらい一人で出来なきゃ師匠に顔向けできないよね!」

 と何やら不穏な空気が流れ。

「ウチ一人でちょっと行ってくる!」

 と雪鱗はいうが早いか走り出す。

「ちょっ雪鱗さん!ちっ!サン太郎!聞こえてたら雪鱗さんを追いかけて!」

「わおぉぉぉぉん!」

 遠く離れた木陰から赤い影が駆け出す。


「サラが余計にゃこというからー」

 ニナが半目でサラを見る、ツー太郎はパーティのペースに合わせて警戒しながら進まねばいけなかったため完全に雪鱗に撒かれてしまったのだ。

「そうね迂闊だったわ、あの子がここまで考え無しなことをするなんて」

「ま~サン太郎が向かったからかえってあっちは安全だろうけどね~」

「まぁそうにゃんだよね~」

「いえ、あまりいい状況ではないですよ?試験官置き去りですし」

 とニコルが無言でいるコリンを横目にそうしゃべる。

 こんな森の中で単独行動をとれば何が起こるかわからないというのに深く考えずに突撃していった雪鱗に憤慨しているようだ・・・笑顔の上に青筋が張る着いている気がする。

「まぁ当面はこの周りを囲んでいる連中から片付けましょうか?」

 とニコルが提案すると小陰に隠れていた者たちが姿を表せる。

「女性が多いパーティだと遭遇率が高くなるって聞いてましたが、よく遭遇しますね」

 緑色の肌の20匹ほどの集団、そうゴブリン達である。

 この場にレッドがいれば「ゴブリン・リターンズ」とか呟いていただろう。

「手早く刈り取りましょう」

「ゴブ---!」×20


 そのころ雪鱗は。

「中々すばしっこいね、でも!」

 槍による鋭い一突きで跳びかかってきたブレードドックの頭を貫く雪鱗。

「ガァァァァ!」

 雪鱗が槍を引く隙を狙おうと跳びかかるブレードドック、だがその横から赤い影がぶつかる。

「ガウ!」

 離れざまに相手の喉を噛みきる早業を見せる赤い影、サン太郎の援護もあり雪鱗は既に3匹、サン太郎は2匹仕留めている。

「これで依頼は一応達成だけどまだ5、6匹いるしもうちょっと頑張ろうね、サンちゃん」

「ワン!」

 一人と一匹は慌てることもなく確実に相対しているブレードドックの数を減らしていった。

 戦闘に夢中で近寄ってきている大きな影に気づかないいままで・・・。


「ゴッゴ、ブ・・・」

 襲ってきていたゴブリンの群れの最後の一匹にとどめを刺すと、

「それじゃあ行きましょう、耳は・・・一応切り取っておきましょう」

 とニコルの指示に。

「雪鱗さんの許に急いだほうがいいのでは?昨日の皆さんの報告でオーガがこのあたりを狩り場にしているそうじゃないですか」

 コリンが急いだほうがいいと提案してくるが。

「まぁサン太郎がついてくれてるだろうから大丈夫だと思うわ」

「それにあたしたちがいにゃいほうが戦いやすい奴もいるしねー」

 というニナのセリフにキッと睨んでニコルが黙らせる。

「急いで剥ぎ取るよ!ライカちゃん!」

「そうだね~でもゴブリンの血の匂いで~ブレードドックが近づいてくるだろうから待っててもいい気がするけどね~」

 ビビるニナとマイペースなライカ、実際は動き回るよりどっちかが留まっていたほうが迷子の捜索にはいいのでライカの案の方がいいのだが。

「それでも心配なものは心配よ?いつでも動けるように手早く進めましょう」

 サラが昨日のことを思い出しながらやれることはさっさと済ましとこうと提案する、作業中にイレギュラーがあるのは避けるべきなのは確かだからだ。



「これでラストー!」

 跳びかかってくるブレードドックを躱し横から槍を振り下ろす、ブレードドックの断末魔が響くと静寂が森に戻る。

「サンちゃんお疲れさん!」

「ワウ!」

 10数匹のブレードドックの群れを倒しきるとさすがに疲れたのか近くの根に腰掛ける。

「ふぃーちかれたー」

「くぅん」

 溜息と共に横にお座り状態で待機しているサン太郎の頭を撫でる、

「こんだけ頑張れば師匠も一目置いてくれるよね?」

 何の気なしにサン太郎に訊いてみる、サン太郎自身いまだ本気で相手と「闘い」をしたことのない主がどれだけの戦果で褒めてくれるか全くわからないために首を傾げて小さく「くぅぅん」と鳴くくらいしかできなかった。

 そんな一人と一匹の背後から迫る巨大な影が両人の横ににゅっと顔を出す、

『やれやれお前はそんなことが目的でこんな無謀な突撃を行ったのか?』

 サンダーエッジが雪鱗の横まで伸ばした顔から話しかける。

『主の実力ははっきり言えば未知数だ、そんな主が褒めるとしたら無茶をして怪我と共に得た戦果よりも怪我なく確実に得た戦果を笑顔で報告したほうが良いと思うぞ?』

「未知数ってかなり追い込ん出たじゃん!」

 昨日あれだけレッドにダメージを与えていたサンダーエッジに、実力がはかれなかったと言われて、こいつは何言ってんの?ってテンションで言い返す雪鱗。

『あれは大分手加減されていた、眷属となった今なら主の実力の底知れなさがわかるのだ・・・主が最初から我を殺そうとしていたのなら、我は主と数秒の相対で終わっていたであろう』

「うっそだー!」

『証拠に主は我に対してあの御剣での攻撃は最後までしてこなかった。

 あの御剣の斬撃であれば我のこの鱗ですら紙くず同然であっただろう』

 と竜はその時に起こり得た可能性に身震いしながら喋る。

「そんなに切れ味がいいの?」

『うむ』

「ウチもそんな武器が欲しいなー」

 そこまででなくともそれに迫れるような武器が欲しいと雪鱗は思う、実際敵対者の攻撃に耐えられないなら躱せばいい場合が多いが攻撃が通らない場合は前衛職としてはお手上げ状態にならざるを得ない場合が多いからだ。

『ふむ、ならば小娘これをやろう』

 とサンダーエッジはおもむろに自分の前足の人で言う人差し指の爪を血が出ない程度に噛み千切り、ついでに自分の鱗も数枚剥がしていく、その様をあっけに取られてみていた雪鱗の膝の上に置く、鱗が数枚滑り落ちる。

『これだけあればいい武器ができるのではないか?余った鱗数枚を金に換えれば加工費にもなるだろうしな』

「こんな!貰っちゃってもいいの!?」

『もうこの身からとれたものだ、戻したくても戻せまいて』

 と鱗をはがした際ちょっと涙目になった眼を軽くこさぎながら雪鱗に譲る。

「なんか親切すぎて怪しすぎる・・・」

 疑いの眼差しを向けると。

『気にするな、貴様の血に親近感がわいてな、昨日は真っ先に喰ってやろうと思ったくらいなのだぞ?』

「何その過剰な親愛の表現!」

 そういや昨日「雪鱗が~真っ先に~食べられそうになってたんだよ~」と先輩であるライカにいわれてたな~と思いだした。

「ん~それじゃあこれは昨日のお詫びってことで貰うね!」

『それで構わん、今更返すと言われる方が困る・・・む?』

 話している最中にサンダーエッジは何かに気づく。

『ふむ、この気配はオーガか・・・我が蹴散らしておくから貴様たちは依頼の部位を回収してくるといい』

 と竜は雪鱗達に指示を出すと。

「グゥルオオオオオオオ!」

 咆哮をあげ気配のしている方に走り出す。



「グゥルオオオオオオオ!」

 静かだった森に突如鳴り響いた竜の咆哮にニコルたち一行は何事かと周りを見渡す、ニコルとコリン以外は昨日この声を聴いてるため冷静であったがニコルとコリンは初めて聞いた咆哮だ。

 ニコルは比較的に落ち着いている3人と一匹を見て昨日訊いた話を思い出し冷静さを取り戻したが、コリンは・・・。

「今のは竜の咆哮!もしや先日見かけたサンダーエッジ!?」

 と混乱を起こしてこう繋げる。

「いけません!このまま森にいてもし見つかったら、私たちにも被害が・・・最悪全滅してしまいますよ!」

 と判断し。

「仕方ありません!ここは撤退してください!町に戻りましょう」

 という提案をニコルたちに告げる。

 それに対してニコルは。

「そうですね。雪鱗さんには悪いですが、サラさんニナさんライカさんはコリンさんを連れて町に至急戻ってください」

「ニコルさん!今はあなたも一緒に戻るべきです!」

 とニコルの判断に真っ向から反論するコリン。

「いえ、今日は僕が兄さんの代わりにこのパーティのリーダーです。僕は仲間を見捨てるような兄さんは見たくありません、なら代わりを務めている僕も仲間を見捨てる姿を兄さんに見せる訳にはいかないのです」

 という言葉でコリンを黙らせてツー太郎とともに走り出すニコル。

「今回はお嬢様みたいに殺したりしません、安心してください兄さん」

 走りながら腰にさしているいつもより綺麗になっているショートソードに小声でそう告げるのだった・・・。


『三匹か!今宵の晩飯はオーガとなったな!』

 サンダーエッジが大声(?)でそう叫ぶと遠くから様子を窺っていたオーガ3匹が慌てて身構える。

 しかし。

『遅いわ!』

 身構える前に竜の鋭い爪が1匹のオーガを襲う。

 片方の足は腕でガード出来たようだが残念ながら竜の前足は左右1本づつ、つまりもう一本ある。

 片方ガードしきれなかったためあっさりと首が飛んだオーガがその場で崩れる、残りは二匹だが今の惨状を見て気を引き締めて間合いをはかっている、例え格上の存在であろうと引くつもりはないようだ。

『その意気やよし!まずは貴様だ!』

 左右から挟む形で囲もうとしているオーガに、時間は与えるつもりがないサンダーエッジは右側を担当しようとしたオーガに跳びかかる。

 しかしオーガもタダでやられるわけにはいかないと今度のオーガはうまく両前足を掴み何とか直撃を免れる。

 その隙に背後にいるオーガが使い慣れた棍棒を手に跳びかかる。

 しかしそれはオーガの頭では想像もできない威力の一撃を竜の尻尾からの放たれてオーガは真後ろに吹き飛ばされる結果となった。

 背後の憂いも無くなったので目の前もオーガに集中する竜、このまま力比べしてても・・・まぁすぐ終わりそうなのだが、背後のオーガがいまだ角を集めている雪鱗の方に向かって行くのも面白くない。

 早めに片付けたいサンダーエッジは尻尾と左側の後ろ脚で踏ん張り右側の後ろ脚をオーガの膝に叩き込む、鋭い爪がオーガの左足を引きちぎる。

 バランスが崩れたオーガに、そのままのしかかり勢いを殺すことなく喉に食らいつき、オーガの顎ごと噛み千切る・・・口が大きすぎたのか喉だけに噛みつくより纏めて噛みついた方が手っ取り早かったようだ。

 そして最後に背後で伸びているオーガに左前脚の鋭い爪が振り下ろされる。


「早!もうオーガ一掃したんだ」

 驚きに作業が止まる雪鱗、サンダーエッジがオーガを補足して片付けるまで5分とかかっていない、角もまだ半分くらいしか回収できてないのだ。

「サンちゃん急ごう!」

「わん!」

 雪鱗とサン太郎が急いで角の回収に戻るその背後から突然何かが襲撃してきた。

「きゃいん!」

「へ?サンちゃん・・・」

 その何かにギリギリ気づいたサン太郎が雪鱗を突き飛ばし、雪鱗めがけて放たれた攻撃を代わりに受ける。

「うそ!こんなに近づかれるまで気配に気づけなかったなんて」

 目の前にいるオーガを見て雪鱗が呟く、確かに昨日目撃したオーガの数は5匹、一匹は昨日、三匹はつい今しがたサンダーエッジが片付けた、つまりこいつが最後の一匹である。

 自分の代わりにオーガと闘っていた竜の気配が強すぎたからかオーガをこんなに近づかせていたのに雪鱗もサン太郎も気づかなかった。

「ぐぅおおおお!」

 獲物を仕留めた!竜の裏をかいてやった!その咆哮にそんな意味でも含まれてるかのようにオーガの顔は醜悪な顔をさらにゆがませ笑う。

 サン太郎にかばわれた雪鱗だったが突き飛ばされた拍子に尻餅をついてしまい手に持っていた槍も転がしてしまっていた。

 そしてオーガは手に持っている棍棒を振り上げて雪鱗に渾身の一撃を放つ姿勢を取る、その攻撃を止められるであろう竜は他のオーガを倒すためにちょっと離れた距離にいる、とても間に合わない・・・まさに絶体絶命といえる。

「ぐぅおおおお!」

「ししょぉぉぉぉ!」

 今際の際によんだ者は親兄弟じゃなく、昨日初めて会い強烈な印象を雪鱗に与えて、今の自分の目標として胸のうちの大半を占めている男の・・・自分がつけたあだ名。

 そして町でゆっくりしている為、絶対にここに現れることのない人間を呼ぶ、刹那。

 オーガの振り下ろした腕が空ぶる・・・。

 何故かオーガの腕が二の腕の付け根から無くなっていたのだ。

 その二の腕は雪鱗の横に「ドン!」という音と共に落ちてきた。

「やれやれ、サンダーエッジやサン太郎がいるから心配自体はしないで済むと思っていましたのが・・・この状況はちょっとひどいですよ」

 という声と共に現れた少年は言葉を重ねる。

「後で兄さんに報告しときますからね、サン太郎、サンダーエッジ、そして雪鱗さん」

 という言葉と共に腕を失い唖然としてボーっと立っていたオーガに急接近し抜き身の剣を下段から切り上げ跳躍しオーガを股下から両断する。

 事が急すぎて頭が追い付かない雪鱗と慌てて戻ろうとして空振りに終わったサンダーエッジが唖然としている中。

「さて、片付きましたし・・・サン太郎に回復魔法をかけながら帰りましょう。

 みんな心配して待ってますよ」

 と剣を鞘に納めつつサン太郎の許に歩いていく、そんなニコルの足音が静寂を取り戻した森によく響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。