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騎士になりたいんですが、闇属性の私には難しい  作者: アイム


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ウィルが連れてきた人は一言でいうと


長髪白髪一本結い黒半袖むきむきおじさまでした。手錠と足枷つきで。


「なぁ嬢ちゃん……葉巻くれや」

低く渋い声が響く。

男は馬車からでてきたその場によっこらせと座る


「――ウィル」

オルフェの声はとても低かった。

“なんだこれは”と顔に書いてある。

空気を察した騎士たちが、すぐさまイリスとレン、そしてアウラを屋敷の中へ誘導した。


「囚人ではないか!」

「いやいや、違ぇって。こいつは傭兵」

ウィルが頭を掻く。

「酒と賭け事と女が大好きすぎて、大体こうなってることが多いやつなんだ」

「最低だな」

「おう、俺もそう思う」

男はけらけら笑っている。

見た目は渋くて格好いいのに、中身はだいぶ残念そうだった。

「さっきの奥さんかい? 綺麗だなぁ」

「殺すぞ」

「おー怖ぇ」

びり、と空気が張り詰める。

オルフェの周りが少し熱い。

騎士たちまで息を呑んでいた。


でも男の人は全然気にしていない。

「ウィルには悪いが、レンは――」

「子供には興味ねぇよ。変態と一緒にすんな」

吐き捨てるように言って、男はそっぽを向いた。

ウィルは慌てて間に入る。

「まぁまぁ。こいつの実力は本物だぜ」

「……しかし危険すぎる」

「一緒に戦ったこともある。見た目と性格はアレだが、まぁ悪い奴じゃねぇ」

「おいおいフォローになってっか?」

男が鼻で笑った。


「旦那ぁ。俺ぁ今、機嫌がいいのよ」

「……何?」

「…初めて会ったんだ。同族に」


「おじさま!!」

!?!?

父上とウィルが同時に男の後ろを見る。


レンはにこりと笑った。

「おー嬢ちゃん、久しぶりだな」

男は見上げてレンを見る

「ふふ、はじめまして。レンと申します」

綺麗にカーテシーをする。

メイド長がいっぱい練習させたので完璧だった。

「お師匠様と呼ばせていただいてよろしいでしょうか?」

「おお、何言ってっかわかんねー

――今どっから来た?」

男が真顔で聞く。

「邸の中からです」

「……いつからできるようになった?」

「昨日です。お師匠様」

父上とウィルが固まった。

騎士たちも静かだ。

そんなに変だっただろうか。


男の人はじっとレンを見る。

さっきまで笑っていたのに、今は少し真面目な顔だった。

「……人を殺したことは?」

!!

何を言ってるんだとオルフェたちは男を睨む

レンは目をぱちぱちさせた。

「いいえ、ありません」

「騎士になりたいんだろ?」

「はい!」

「なら、いつか殺す側になる」


レンは少し考える。

そして答えた。

「悪い人は牢屋に入れたいです。」

「は?」

「それに私、魔物を倒したいんです」

真剣に言うと。

男の人は数秒黙って――。


「…くくくくく」

笑い出した。

次の瞬間。

バキンッ!!

手錠と足枷が粉々に砕け散る。

騎士たちが一斉に剣へ手をかけた。

でも男の人は気にせず、レンの前まで歩いてきた。

そして大きな手を差し出す。


「ガロと呼べ。…よろしくな、嬢ちゃん」

レンはぱっと笑顔になった。

「はい! よろしくお願いします、おししょ…ガロ!」

ぎゅっとその手を握る。


その後ろで。

父上は頭を抱えていた。

――なぜこうなる?

毎回、毎回。

娘の周囲だけ、嵐みたいに話が転がっていく。


「さぁて」

ガロが肩を鳴らした。

「嬢ちゃんの能力、見せてくれよ」

「……能力?」

レンは首を傾げる。

「ウィル、あそこの森借りていいか?」

ガロが遠くの森を指差した。

辺境伯領の外れにある深い森。

魔獣が出る危険区域だ。


「ダメだ」

即座にオルフェが遮る。

「魔物が出る森だぞ」

「旦那ぁ」

ガロは面倒そうに肩を竦めた。

「訓練場でも構わねぇけどよ、人目もあるだろ?」

いいのか?と目を細める。


――闇属性。

その力を他人に見せる危険性を、ガロは理解していた。

オルフェの表情が険しくなる。

「ぐ……」

確かに、騎士たち全員へ知られるのは避けたい。

レン自身のためにも。

しばし考え込み――。

「……ウィルと、あと二人護衛を付ける。それが条件だ」

「構わねぇよ」

ガロはにやりと笑った。


「じゃー馬ぁ借りるぜ」

「!!」

レンの目が輝く。

「お馬!?」

さっきまで難しい空気だったのに、一瞬で元気になる。

ガロはそんなレンを見下ろし、くつくつ笑った。

「なんだ嬢ちゃん、馬好きか?」

「好き!」

「落ちんなよ?」

「大丈夫!」

即答だった。

その勢いに、騎士たちが少しだけ笑う。

だが。

オルフェだけは、まだ頭痛がしていた。

(……本当に大丈夫なのか……?)


「なー嬢ちゃん。おめぇ、馬に一人で乗れねぇの?」

レンはガロの前に座りながら首を傾げた。

「……? お馬に乗る時はいつもこうですけど?」

「……そーかい」

ガロはなんとも言えない顔になる。

後ろでは、ウィルと護衛騎士二人が馬を走らせていた。


「しかし、転移とは大したもんだなぁ」

「? 転移?」

「だろ? 邸の中にいたはずが、俺の後ろにいた」

「あ」

レンは少し恥ずかしそうに俯く。

「本当はガロの前に出るつもりだったの、でも、ずれちゃって……」

「そこ恥ずかしがるとこか?」

むしろ成功していることの方がおかしい。

レン本人だけが分かっていなかった。


馬を走らせること一時間ほど。

人の気配もない森の奥で、ガロは馬から降りた。

「…さて、と」

ぐるりとレンを見る。

「あれが出来る時点で、嬢ちゃんはかなり飛ばしてる」

「?」

「本来なら順番に覚えるもんだ。だが、おめぇは感覚でやっちまってる」

ガロは頭を掻いた。


「まずは自分の魔力を見てみろ」

「……?」

レンは困った顔をする。

後ろからウィルが助け舟を出した。

「人差し指に出してた黒い火、あれだ」

「はい!」

レンは納得したように頷き、人差し指を立てた。

ぼっ。

小さな黒い火が現れる。

ガロはそれを見て口角を上げた。

「それを体から出すイメージでやってみ」

「体から?」

「指の上じゃなく、お前自身を包む感じだ」

レンは目を閉じる。

すぅ……と。

静かに黒い靄が体から溢れ出した。

「――っ」

護衛騎士たちが反射的に後ずさる。

本能的な恐怖だった。


「よく見てみな」

ガロが静かに言う。

「嬢ちゃんの魔力、綺麗だろ」

「……え?」

レンは自分の周りを見た。

黒い靄の中。

よく見ると、小さな光が混じっている。

紫。

青。

白。

淡い桃色。

きらきらと星屑みたいに瞬いていた。

「ほんとだ……」

レンの目が丸くなる。

「星空みてぇだなぁ」

ガロが笑う。

「ふふ……ほんとだ」

魔力を褒められた。

怖いものではなく、綺麗だと言ってくれた。

それが嬉しくて、レンは自然と笑顔になる。

後ろでは、ウィルたちも思わず見惚れていた。


禍々しいはずの闇属性。

なのに、不思議と目を離せない。

「それを少し抑えてみろ」

ガロの声が低くなる。

「もっと薄く……もっとだ」

レンの周囲の靄が少しずつ薄くなる。

「そうだ。そのまま維持しろ」

ガロがレンの肩を軽く叩いた。

「服みてぇに纏わせるイメージで」


一刻後。

レンの額にはじわじわ汗が浮かんでいた。

「っ……は……」

集中が切れた瞬間。

靄がふっと消える。

レンはその場へぺたりと座り込んだ。

「はー……っ、はー……」

息が上がっている。

ガロは腕を組みながら頷いた。

「今日はここまでだな」

「……むぅ」

「不満そうな顔すんな」

ガロが笑う。

「一時間維持できる時点で十分よ」

護衛騎士たちが無言で頷いていた。

「それはお前を守る盾になる」

ガロが静かに言う。

「慣れりゃ、寝てる間も自然に纏えるようになる」

「盾……」

レンは自分の手を見る。


するとガロは、背中の双対剣を抜いた。

短い刀身。

だが次の瞬間。

すぅ――っと。

黒い刃がその先へ伸びる。

闇そのものが刀になったみたいだった。

そして。

ぴっ。

軽く横へ振る。

離れた場所にあった木々が、数秒遅れて倒れた。

バキバキバキッ――!!

「……これで斬れねぇもんはねぇのよ」


「カッコいい!!!!」

レンの目が限界まで輝いた。

「すごい!ガロ! すごい!!」

ぴょんぴょん跳ねながら大興奮している。

双対剣!

黒い刃!

闇の魔法!

全部かっこいい!

ガロはそんなレンを見て、くくっと笑った。


「……ほんと変わった嬢ちゃんだな」



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