第1787話 真打登場
シャーリィとラーデが本気コースでの腕相撲対戦を鑑賞し始めてから、様々な対戦者が現れては敗れていった。
挑戦者の大半は賞金の100万G目当てで来ていて、如何にも力自慢の巨体や筋肉愛好家、中にはアマゾネスのようないかつい体格の女性も挑んできたりした。
そんな猛者達相手でも、レオニスは余裕綽々で対戦者をバッタバッタと倒し続けている。
それまでに百組以上の対戦をこなしてきているのに、疲労した様子など全くなく涼しい顔でいるのはさすが金剛級冒険者といったところか。
本気コースが始まってから、もうすぐ十分になろうかという頃。
挑戦者を迎える舞台の周辺から、ワァッ!という大きな歓声が上がった。
何事かと思いながらラーデとシャーリィが見遣ると、そこには山のような巨体の男が舞台に上るところだった。
「うわぁ……あれは人族の中でも別格な体格ね」
『うむ。小ぶりなオーガ族と言っても差し支えなさそうだな』
何気に失敬な感想を漏らすシャーリィとラーデ。
一方で花道を歩く巨体の男に、惨敗した冒険者達が気合いを入れて声援を送っている。
会場に現れた冒険者仲間達の期待の星、それはスパイキーだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「うおおおおッ!スパイキーのお出ましだぜ!」
「スパイキー!お前ならやってくれる!」
「俺達の敵を討ってくれーーー!」
冒険者仲間達の、怒号にも近い激励の言葉がスパイキーにかかられる。
そうして舞台の上に立ったスパイキー。
そこそこ身長が高いレオニスの1.5倍はあるスパイキーの巨躯に、冒険者仲間以外の一般人はただただ息を呑んでいた。
「お? スパイキーじゃねぇか。久しぶりだな!」
「久しぶり。レオさんこそ元気そうで何よりだ」
「つーか、ラグナロッツァに帰ってきてたのか?」
「ああ、バッカニアの兄貴達もいるぜ?」
久しぶりの再会を喜び、和やかに会話するレオニスとスパイキー。
レオニスの質問に、スパイキーが右手親指を立ててクイッ、と指した先には当然のようにバッカニアとヨーキャがいた。
「スパイキー!全力でいけよ!そして!何としても!レオニスの旦那に勝て!」
「スパイキーくーーーん!バッカ兄の代わりにたくさん頑張ってねぇーーー!キャハ☆」
ひと際大きな声でスパイキーを励ますバッカニアとヨーキャ。
バッカニアはいつもの黒薔薇眼帯に二角帽子を被り、偉そうにふんぞり返って腕組みしながらスパイキーを激励し、ヨーキャは胡散臭い黒ローブの容貌に反して無邪気に両手を高く上げてブンブンと振りながら応援している。
スパイキーだけでなく、バッカニアとヨーキャも相変わらず元気そうで何よりである。
「ほら、去年のアマロ先輩の結婚式、あの時にイーノが竜騎士団や鷲獅子騎士団の飛行ショーの話をしてただろ?」
「ああ……イーノってのは確か、お前らと同期の道場生で鷲獅子騎士団団員になったヤツだったか」
「そそそ、そいつ。あの時のイーノの話を聞いて、じゃあ俺達も今年は久しぶりに公国生誕祭の飛行ショーを観に行くか!って話になっててさ。それでこっちに来てたって訳さ」
「そうか。ま、たまにはいいんじゃねぇか? お前達も公国生誕祭をゆっくりと楽しんでいくといい」
「ありがとう。こっちに来てたおかげで、こうしてレオさんと腕相撲できるなんて夢みたいだ」
二人して軽く雑談をしながら、腕相撲の台に右腕の肘を置いた。
審判役の冒険者ギルド職員、ダレンが両者の手をがっしりと握らせて構える。
この時点でレオニスとスパイキーは無言になり、互いの目を正面から真っ直ぐに睨みつける。
無言で真剣にスタンバイする両者の間には、目に見えない火花がバチバチと飛び交っていた。
「レディー…………ゴー!」
ダレンの掛け声で、レオニス v.s スパイキーの勝負が始まった。
その瞬間、一層大きな歓声が沸き飛び交う。
しかし、スパイキーがその腕を垂直に保っていられたのは三秒だった。
「勝者、レオニス・フィア!」
審判のダレンの宣言に、わああああッ!という大歓声が沸き上がる。
一般の観客はスパイキーより小柄なレオニスがスパイキーを倒したことに素直に驚嘆し、二人をよく知る冒険者仲間達はがっくりと肩を落とした。
「くッそー、スパイキーでもダメならどうすりゃいいんだ……」
「もうダメだぁ……」
「誰か!誰か俺達の敵を討ってくれる勇者はいねぇのか!」
頭を抱えて蹲る者、天を仰ぎ絶望する者、両の拳を握りしめて悔しがる者、様々な悔しがり方をしている。
敵討ちを他人任せにするのは何とも情けないことだが、彼らが束になってかかってもレオニス一人に勝てないのだからある意味仕方がない。
一方で舞台上では、真剣勝負を終えたレオニスとスパイキーが互いの健闘を賞賛していた。
「くッそー、やーっぱレオさんは強ぇなぁ……」
「まだまだお前らに負ける訳にはいかんからな」
「そりゃあな、俺だってレオさん相手に勝てるとはこれっぽっちも思っていなかったが。こうも瞬殺されるとは、全く以って情けねぇ限りだ」
「いやいや、そんなこたぁない。スパイキーもなかなかのもんだったぞ? 少なくとも俺が今日対戦した中では、間違いなくお前が一番強かった」
「そ、そうか? レオさんにそう言ってもらえたら、俺も挑んだ甲斐があったってもんだ」
「おう、自信を持っていいぞ。お前は十分強いからな!」
瞬殺されたというのに、スパイキーは晴れやかな顔をしている。
レオニスがスパイキーにかけた言葉は、決してお世辞ではない。
本当にスパイキーのことを強いと思ったからこそ、それを素直に本人に伝えただけだ。
当代随一の冒険者、レオニスから『お前は十分強い』というお墨付きをいただけたことは、思いの外スパイキーの心に喜びをもたらしたようである。
レオニスとスパイキーが舞台上で固い握手を交わし、敗者であるスパイキーが舞台から退場する。
退場して向かった先には、彼が所属するパーティー『天翔けるビコルヌ』の仲間であるバッカニアとヨーキャがいた。
バッカニアは「おう、お疲れ!」とスパイキーの腰の辺りをポンポン、と軽く叩き、ヨーキャも「スパイキー君、お疲れちゃーん!」と彼なりに努めて明るく振る舞っている。
決して仲間の敗北を責めることなく、その健闘を讃え快く迎え入れる―――バッカニア達の『天翔けるビコルヌ』というパーティーの温かさがよく分かるというものだ。
そしてその後も多くの挑戦者がレオニスの前に現れては、瞬く間に秒殺されていった。
ラグナロッツァ外から来た賞金目当ての大男、何らかの魔術を用いてレオニスの弱体化を狙ってきたヒョロガリの胡散臭い男、ミーハーでレオニスと握手したかっただけのミーハーな若い女も多数いた。
そうして時間は過ぎていき、あと五分で本気コースが終わろうというところで新たな歓声が起こった。
それは冒険者達が固まって集まっていたエリアで、何故かスパイキー登場の時以上に熱気を帯びていた。
密集した冒険者達の人混みが、モーセの海割りの如く二つに割れていく。
その中央を堂々と歩いてきたのは、ラウルだった。
先に謝らせてください。今日も文字数少なめですみません_| ̄|●
昨夜はリアルでオールして夕方まで寝れなんだりと、何でか変わらずクッソ忙しい日が続いておりまして_ノフ●
背中が痛くなり始めたら仮眠取るなどして回復に努めてはいますが、何しろ不規則極まりない生活をしております〓■●
……って、不規則な生活してる作者のことなんざどーでもいいんですよ。
前話に続き、今話もレオニスの腕相撲無双回です。
レオニス無双の一強なのはまぁ当然なんですが、有象無象のダイジェストばっかじゃつまんないし。
既存のキャラの誰かと対戦させよっかなー☆と考えて、さて誰にしよう?とあれこれ考えた上で白羽の矢が立ったのは『天翔けるビコルヌ』の良心、スパイキーでした。
やっぱねー、腕相撲という文字通り腕力を競う場ですから? ここは強敵感溢れる見栄えの良いキャラが絶対にいいじゃないですか?(゜ω゜)
そう考えると、小ぶりのオーガ並みに体格の良いスパイキーが最適でしょう!゜.+(・∀・)+.゜
でも結局は負けちゃうんですけど(´^ω^`)
ただ、レオニスがスパイキーにかけた言葉も本当のことで、彼ら『天翔けるビコルヌ』もライト達の与り知らぬところで着実に力をつけています。
レオニスに『氷蟹狩りツアー(第712〜736話)』として強制連行された氷の洞窟でも、氷の女王の加護がバッカニア達にももらえてましたしね♪(^ω^)
てゆか、あの『氷蟹狩りツアー』も、もう1000話以上も前のことになるんか…( ̄ω ̄)…
月日が経つのは早(以下略云々




