滅菌ジェル
あの部屋にいた時、誰も傷つけずにばい菌を全滅させる方法を思いついた。
浄化魔法じゃばい菌は消せないけれど、もし改変したら――?
魔法は想像力だ。
何でも作り出せるけど、実際にやるのはものすごく難しい。
誰もばい菌を見たことがない。そんなものを、いったいどうやって消すつもりだ?
あの虫を見るために、目に魔力を使いすぎた。
あれを見た後は、さすがにトラウマになるくらいだったが……ともかく、あいつらの姿を捉えることができた。
いつも持ち歩いている手帳に、その姿を描き留めてある。
奴らの姿はもう分かっている。
浄化魔法を使い、「消えろ、消えろ。この虫どもを消し去って、病気を防ぐんだ――」と全力で念じた。
とても小さな虫たちに魔力を集中させた。
こんなに小さなものに魔力を届かせるのが、どれだけ難しかったか……。
だが、大成功だった!
虫を消し去ることができた。さて、ここからが一番難しいところだ。
水魔法と変化魔法を使い、どこにでもくっつくのに、気持ち悪くも見た目が悪くもならないように、水をゼリー状にした。
一番難しかったのは、二つの魔法を同時に混ぜ合わせることだった。水をゼリー状にする魔法と、虫を消す魔法だ。
二つの魔法を重ねて、一つにまとめようとした。
まるで、形の違うブロックで何かを組み立てるようだ。
崩れないように、慎重に積み上げていかなくちゃいけない。
だが、二つの魔法を一つにまとめるのは、思っていたよりずっと難しい!
それでうまくいったが、思っていた結果とは違った。
魔力が体の中からあふれ出し、シャツが破れてしまった。
実験の手順を書き留めた。どれだけ魔力を使ったか、何を想像したか、実行中に何と言ったか。
何度か試して……大成功だった!
魔力はほとんどなくなりかけたけど。
今、体がこのジェルに覆われているが、全然目立たない。透明なクリームを塗っているようなものだ……。それを「滅菌ジェル」と名付けた。
「とまあ、こういうわけさ」
腕を組み、得意げに胸を張る。
ユレとコトが、困惑した表情でこちらを見つめている。
「嘘ね」
ユレは相変わらず無表情のまま言い放つ。
「嘘じゃないって!」
「嘘よ。そんな短時間でそんなことができるわけないでしょ」
「早くなんかない、時間がかかりすぎたんだ」
「嘘つき」
言い返そうとした時、執事のダンがやってきた。
「素晴らしいお仕事でしたね、ソエン様」
「あ、ありがと……」
「一つ、お聞きしてもよろしいですか?」
「ああ、いいぜ! なんだ?」
「三日後、ここでパーティーが開かれます。警備を担当する冒険者を探しているのですが、引き受けていただけないでしょうか?もちろん、報酬はしっかりとお支払いします」
「俺にはできないと思う」
「今のランクはどのくらいなんですか?」
「たしか、ランクDだな」
俺は自分の弓を持ってない魔弓士さ。
魔力はそれなりにあるけど、あまり役に立たない。攻撃用の魔法も防御用の魔法も、一切使えないんだからな。
「できるのはエンチャントくらいか……」
顔を上げると、ダンが不思議な笑みを浮かべていた。
「では、もう一つ提案があります。ビリボートお嬢様のために、使用人として働いていただけないでしょうか?」
「使用人? どうしてだ?」
「お嬢様はもうすぐ戻ってきます。お嬢様には、専属の使用人が必要なのです」
「分からないな……」
誰かの世話をする仕事なんて、一度もしたことがない。
少しわくわくするけれど、自分にちゃんとできるかどうかは分からない。
「まずは、試しに働いてみるのはどうでしょう?」
「試しに?」
「二十日間、使用人として働いていただくのです。もちろん、お金もお支払いします。そのあとで、続けるかどうか決めていただければ大丈夫です」
お金か……まあ、今の俺にはお金がない。
お金のためなら、何でもするってくらいだ。
「もう少し教えてくれないか? 給料や生活はどうなるんだ?」
「もちろんです。住む部屋と食事、それに毎月のお給料をお支払いします」
「休みはあるのか!?」
「それを決めるのは、まだ早いですよ、ソエン様」
「それなら……よし、引き受けよう」




