相方
ソエンが部屋を消毒してる間、廊下には二人の少女が立ってた。 ドアの向こうから、ソエンが気持ち悪い笑い声を上げながら「くたばれ、クソ虫めが!」と叫ぶ声が聞こえてきた。
「ちょっと変ね」
無表情な相方に、コトが言った。
「変すぎでしょ……どこから来たんだろ」
「執事様がギルドについて何か言ってたよね」
「じゃあ冒険者なの?」
「そう! 剣を見なかった?」
「見たけど、飾りだと思った」
コトは気になって仕方がない様子で、相方を見た。
「ねえ、ユレ」
「なに?」
「どっちが強いと思う? あんたと彼なら、どっち?」
ユレは、比べられたことが気に入らなかったのか、コトを睨んだ。ユレはAランクの剣士で、主に屋敷を不審者から守ってる。
「私に決まってる。あんなガキ、たぶん剣もまともに使えないでしょ」
「えー……でも、自分より強い奴と戦ったことある?」
「ない」
この屋敷の召使いたちは、みんな普通じゃない。
二人がそこに立っていると、かざりものを抱えた人たちが廊下を通り過ぎた。
「ユレ、あれは何?」
「数日後、別の国から使節団がやってくるんだ」
「どこからだ?」
「アルカディア」
コトがひどく驚いた様子を見せた。
「それって魔王が治めてる国じゃない!」
「耳元で叫ばないで」
「でも、なんでここに!?」
「うちの領地がアルカディアと接してるからよ」
この世界には「魔王」と呼ばれるやつらがいるけど、魔物ってわけじゃない。
魔王っていうのは、めちゃくちゃ危険な人物に与えられる称号だ。
誰であってもおかしくない。
だが、そう簡単にはもらえない。
世界全体で、その称号を持つ者はたったの十四人。
その瞬間、部屋の中からの叫び声がやんだ。
「もう終わったのかな?」
女の子たちは三十分もの間、立ったまま動かなかったが、やがてユレは、何が起きているのか見に行くことにした。
その瞬間、ドアが開いた。興奮したソエンが部屋から飛び出してきた……って、なんでシャツを着てないんだ!? それでも、ソエンの白くて細い体を見て、二人の女の子は思わず手で目をおおった。
「な、なんで服を着てないのよ、ソエン?」
「ん?」
目を覆う二人を、ソエンはじっと観察する。
体の外側に菌もバクテリアもいないソエンと違って、ユレとコトは唇や手、髪、全身の皮膚がそれらでいっぱいだ。
ソエンは両手を掲げ、さっき編み出したばかりの新しい魔法を放った。
「消毒!」
「は?」
ソエンの体からゼリーみたいな液体が飛び出し、狭い範囲を包み込んだ。
少女たちはこの液体に包まれた。
コトは自分のベタつく皮膚を見つめた。
ユレは……相変わらず無表情のままだったが、それでも尋ねることにした。
「何をしたの?」
「病気の主な原因をなくしたんだ!」
興奮したソエンはユレに歩み寄り、限界まで顔を近づけてじっと見つめた。
ユレの警告を聞く耳なんて持たない。
耳の裏や、少女の髪の隙間までくまなく観察した。
確かに、誰も死んではいない。そして、彼女の体にはもはや一切の菌もバクテリアも残っていなかった。




