放棄する
ギルドから情けなく逃げ出した後、リテンの町をぶらぶら歩いていた。
俺がいた場所とは違って、あっちでは登録料なんて払わなくてよかったのに。
金がないなんて言えなかった。女の子の前で恥をかきたくなかったんだ。
すっかり暗くなり、もう夜だというのに、泊まる場所はまだ見つからない。
どんどん気持ちが沈んでいく……地元の町に帰ろうかと考え始めている。
そもそも、冒険者になんてなりたくもなかった。あいつら、まともな生活をさせてやるとか言って、俺を脅してきたんだ。
それに、今さら家に帰ったところで……きっと家族に笑われるだけだ。
いや、まだだ。行けるところまで行ってやる!
顔を上げると、店の看板が目に入った。
怪しい魔道具店か……ちょっと入ってみようかな。
店の中は棚でいっぱいだ。
武器やポーション……へえ、あそこにはすごく大きな剣がある。
棚の向こうから、楽しそうな話し声が聞こえてくる。
指輪をいくつか眺めていると、隣に女の子が立ち止まった。
「何か探してるんですか?」
店員さんかな。ショートヘアで、胸もかなり大きい……。
優しそうで、おとなしい感じの女の子だ。
「あ、ちょっと見てるだけです……」
「何かあったら、声をかけてくださいね」
俺は弓をぎゅっと抱きしめる。
めちゃくちゃ腹が減ってる。
店員さんが立ち去ろうとした時、思い切って声をかけた。
「あの……! 実は……売りたいものがあるんです」
「はい、何を売りたいんですか? 状態が良ければ、何でも買い取りますよ」
「これだ」
「うーん……綺麗な弓ですね。ちょっと見てもいいですか?」
「ああ」
弓を渡した瞬間、心の中で何かが「やめろ!」って叫んでいた。
この弓にはもっと価値があるんだ。高いからじゃない。思い入れがあるからだ。
相棒を簡単に手放せるわけがない!
「あの……そろそろ手を放してもらえますか?」
「あ、すみません!」
なんだか、本当に自分の一部を失ったような気分だ。
そのまま彼女の後を追ってカウンターまで行くと、さっそく査定が始まる。
この弓には少なくとも10のエンチャントがかかっているはずだ。
数分間の査定の後、彼女は俺を見る。
「うーん……確かにいい弓ですね。いくらで売りたいですか?」
「いくらで買い取ってもらえますか?」
「そうですね……10,000リラで買い取れますよ」
この弓がいくらしたのか分からない。もっと高く売れるのかも分からないな……。
これを売ったら冒険者として働けなくなるし、金がなきゃギルドにも登録できないし、飯だって食べられない……。
「あの……売りたいのは山々なんですけど……もう少し高く買い取ってもらえませんか? 本当にお金が必要なんです」
必死にお願いしてみる。
悲しそうで、守ってあげたくなるような目で彼女を見つめると……店員さんは少し頬を赤らめ、わざと厳しい顔でうなずく。
「ふ、ふん……しょうがないですね。今回だけですよ? それに、この弓は本当に特別ですからね!」
「マジで!? ありがとう!」
勝った!……けど、同時に負けたな。
女の子は弓を持って奥へ行ってしまった。
今さら後悔なんてしてられない。
大切なものを失うのは痛いけど……金が必要なんだ。




