怪我
ズシンッ!
太い大木が地面へと倒れ込んだ。
切り口は綺麗とは言えず、まるで寿命で倒れたかのようだった。
「倒れた……」
二人の少女が固まったまま言った。
小枝の割には、思ったよりも上手くいったな。
「今の、一体……?」
ぼうぜんとしたお嬢様が尋ねる。
「これがエンチャントの力さ」
「う、嘘でしょ……これをあなたが?」
「はい!」
「どうやって? あんなすごいエンチャント、今まで見たことなかったわ」
「簡単だよ。円の中に何を書くかを知っていればいいだけさ」
「いや、いや、そんなに簡単だとは思えないけど……」
お嬢様はまた、冷静さを失いかけた。
「お嬢様がよければ、教えてあげてもいいけど」
「……いいえ、自分で学ぶわ」
「ああ、悪かった。余計なことを言ったな」
その時、ユレがいつもの感情の読めない表情で戻ってきた。
「あの木、寿命で倒れたようにしか見えない」
「そんなことない! ……お嬢様、そろそろ屋敷に戻る時間だ」
「ん」
激しい嵐が近づいてくる。
何も言わず、俺たちは屋敷へと歩き出した。
その時、ユレの何かが気になった。
「ユレさん」
「何かご用ですか?」
「その手、どうした?」
ユレが足を止め、自分の手を見つめる。
そこには新しい切り傷が見える。おそらく、あの小枝で切ったのだろう。
「切った……いつの間に」
「さっきの枝だな。手を貸せ」
治癒魔法は得意じゃないが、この小さな傷くらいなら治せる……。
ユレの手は小さくて、とても柔らかい。
「よし」
「ん、ありがと……。手、離して」
「っと、悪い!」




