第28話 三年越しの答え
リカルド・アークファイントが皇城を去ってから、
三年の歳月が流れた。
第二皇女クリスティ・フォン・マーヴェリア。
十八歳。
十五歳だった少女は、
今や皇帝ルーファスとレオンハルトと共に政務を担い、
帝国の未来を担う皇族の一人として、
多くの者から期待を寄せられるようになっていた。
それでも、三年前から変わらないことが一つだけある。
奈落騎士団から戦功報告が届くたび、
クリスティは必ず、ある名前を探した。
リカルド・アークファイント。
その日も、クリスティの指先は、
報告書の中にその名を見つけて止まった。
北方第三防壁へ押し寄せた大型魔獣の群れを、
僅かな損害で退けたという記録。
指揮官・奈落騎士団副団長、
アレクシス・フォン・マーヴェリア。
そして、
第一騎士隊長、リカルド・アークファイント。
「また、お名前がありましたね。」
傍らに控えていた侍女の言葉に、クリスティは小さく笑った。
「うん。」
奈落門最前線で幾度も魔物を退け、
多くの騎士や民を救った赤髪の騎士は、
いつしか『紅蓮の騎士』と呼ばれるようになっていた。
「すごいね、アークファイント。」
報告書へ視線を落としたまま、クリスティは呟く。
「やっぱり、私の隣だけにいる人じゃなかったんだ。」
もっとたくさんの人を守れる人だった。
だから、あの日自分が手放したことは間違いではなかった。
そうやって、この三年間、何度も自分へ言い聞かせてきた。
それでも、報告書を閉じるたび、
最後に考えることはいつも同じだった。
――アークファイントは、今も幸せだろうか。
その答えだけは、どれほど多くの戦功報告を読んでも、
どこにも記されていなかった。
◇
その日の午後。
皇帝執務室へ呼ばれたクリスティは、
レオンハルトから一つの知らせを聞いた。
奈落騎士団の現団長が退任し、
後任として、アレクシスが正式に推薦されたという。
入団から六年。
副団長として幾多の戦場へ立ち、
騎士たちから絶大な信頼を得た第二皇子。
推薦は騎士団の総意だった。
「アレクシス兄様が……団長に?」
「ああ。父上も承認した。」
クリスティの顔が明るくなる。
幼い頃から、奈落門を守るのだと言っていた兄。
その夢を、六年かけて自らの力で掴み取ったのだ。
「任命式は三日後だ。本人も皇城へ戻る。」
「本当に?」
「ああ。それと」
レオンハルトが、ほんの僅かに目を細めた。
「第一騎士隊長も随行するとのことだ。」
クリスティの呼吸が止まる。
「……帰ってくるの?」
「ああ。」
三年ぶりに会える。
胸の奥が大きく脈打った。
嬉しい。
そう思った直後。
怖い、とも思った。
三年前、自分は彼を手放した。
今のアークファイントが、自分をどう思っているのか分からない。
もう、自分の騎士だった日々など、
遠い過去になっているかもしれない。
「クリスティ。」
「何?」
「顔に出ているぞ。」
クリスティは慌てて頬へ手を当てた。
「何が?」
「全部だ。会いたいんだろう?」
「……。」
少し迷ってから、クリスティは小さく頷いた。
「うん。でも、私が会いたいなんて思っていいのかな……。」
レオンハルトは、妹をしばらく見つめた。
「帰ってくると決めたのは、あいつ自身だ。」
その言葉に、クリスティはゆっくりと顔を上げた。
◇
三日後。
皇城の正門へ、奈落騎士団の一行が到着した。
先頭を歩くのは、奈落騎士団団長へ任命される、
アレクシス・フォン・マーヴェリア。
二十五歳。
六年前。
皇城を旅立った青年は、今や一目見ただけで、
幾多の命を背負う指揮官だと分かる風格を纏っていた。
その半歩後ろを一人の騎士が歩いている。
リカルド・アークファイント。
二十七歳。
燃えるような赤い髪、深い黒の瞳。
三年前よりも日に焼け、
右の頬には以前にはなかった細い傷が残っている。
鍛え抜かれた身体と一分の隙もない歩み。
十四歳だった少年の面影は、もうほとんど残っていなかった。
「久しぶりだな。」
皇城を見上げながら、アレクシスが声を掛けた。
三年ぶりに見る城門。
だが、隣を歩くリカルドは、いつもと変わらない顔をしている。
「緊張してるか?」
「いいえ。」
即答だった。
アレクシスは横目でその横顔を見たあと、
ふと、リカルドの右手へ視線を落とす。
先ほどから何度も、
拳を握っては開く動作を繰り返していた。
「……嘘つけ。」
その一言で、リカルドの手が止まる。
「剣の感触を確認しておりました。」
「皇城の正門前で?」
「習慣ですので。」
相変わらず、顔色一つ変えない。
アレクシスはしばらくその横顔を眺め、
やがて堪えきれないように小さく笑った。
「便利な言葉だな、習慣。」
リカルドは何も答えなかった。
三年前、皇城を去った男は、奈落で幾度も剣を振るい、
仲間を得て、多くの命を守り、
今では第一騎士隊長を任されるまでになった。
以前より逞しくなった。
戦場を知る騎士の顔にもなった。
それでも、この城を前にして、
無意識に右手を握り直す男の胸の奥だけは。
三年前から、少しも変わっていないのだろう。
アレクシスは再び正門へ目を向けた。
「行くぞ。」
「はい。」
重い門が開く。
三年ぶりに、リカルド・アークファイントは皇城へ足を踏み入れた。
◇
皇城大広間。
玉座にはルーファス。
その傍らには、
レオンハルト、ヴィオレット。
そして、クリスティが立っていた。
重い扉が開く。
アレクシスとリカルドが、ゆっくりと大広間へ入ってくる。
その瞬間。
クリスティには、周囲の音がすべて遠くなったように感じられた。
赤い髪。
黒い瞳。
頬に残る傷。
三年前。
正門から去っていった人。
同じ人なのに、自分の知らない三年間を、
その姿に纏っている。
そして、リカルドもまた大広間へ入った瞬間、
クリスティを見つけていた。
十五歳だった少女は、十八歳になっていた。
白銀の髪。
紫水晶の瞳。
十五歳だった少女は、
三年の間に見違えるほど美しく成長していた。
整った顔立ちには、多くの責任を背負い、
誰かを守るために歩き続けてきた者の強さが宿っている。
胸が、強く脈打った。
十四歳のデビュタントで、
純白のドレス姿を目にした夜を思い出す。
あの時も、美しいと思った。
けれど今、目の前にいるクリスティから受ける衝撃は、
それ以上だった。
それでも、
微笑みの奥で僅かに揺れる紫水晶の瞳を見れば分かる。
――姫様。
三年前、自分を送り出した少女は、今もそこにいる。
そう呼びたかった。
だが、今の自分は彼女の騎士ではない。
リカルドはその呼び名を胸の奥へ押し込み、
静かに玉座の前へ進んだ。
◇
任命式は粛々と進んだ。
アレクシスは、
正式に奈落騎士団団長へ。
リカルドもまた、
三年間の戦功を認められ、帝国騎士勲章を授けられた。
そして、式の終わり。
リカルドは皇族たちへ改めて礼を取る。
「三年ぶりとなります。第二皇女殿下。」
その呼び名に、クリスティの胸が僅かに痛んだ。
第二皇女殿下。
間違ってはいない。
公の場なのだから、当然の呼称だった。
それでも、
「……お久しぶりです。アークファイント卿。」
その名を口にした瞬間。
二人の間にある三年間を、改めて思い知らされた。
リカルドは静かに頭を下げる。
「この度の戦功、心よりお祝い申し上げます。」
「恐れ入ります。」
それだけだった。
三年ぶりの再会は、あまりにも短く。
あまりにも遠かった。
◇
任命式を終えた後。
皇族だけの控え室へ戻ると、
アレクシスは菓子を一つ摘まみながら、
何でもないことのように口を開いた。
「クリスティ。今夜、庭園へ行け。」
あまりにも唐突で、クリスティは目を瞬かせる。
「……え?」
「俺は何も言ってない。」
そう言いながら、アレクシスは素知らぬ顔で菓子を口へ運んだ。
「今、言ったでしょう?」
「聞き間違いだ。」
どう考えても聞き間違いではない。
クリスティが訝しげに兄を見つめていると、
少し離れたところにいたレオンハルトが呆れたように息を吐いた。
「分かりやすすぎるぞ。」
「兄上は黙っててください。」
ますます怪しい。
「……何があるの?」
けれど、アレクシスはもう答える気がないらしい。
菓子へ手を伸ばしたまま、知らぬ顔を貫いている。
クリスティはしばらく兄を見つめていたが、
結局、それ以上の答えを得ることはできなかった。
◇
夜。
月明かりの庭園を、クリスティは一人で歩いていた。
三年前、リカルドへ別れを告げた場所。
そして、十三年前。
五歳だった自分が、彼へ騎士になってほしいと願った場所。
大きな木の前。
そこに、一人の騎士が立っていた。
月明かりの下。
風に、赤い髪を揺らしている。
「……アークファイント。」
僅かに震えた声にリカルドが振り返った。
黒い瞳と、紫水晶の瞳が重なる。
そして、
「姫様。」
たった一言。
それだけで、クリスティの瞳へ涙が滲んだ。
「その呼び方……。もう、聞けないと思ってた。」
笑おうとして声が震える。
「公の場では、立場がございますので。」
「うん。そうだよね。」
それでも、二人きりになれば、
昔と同じように姫様と呼んでくれる。
三年間、胸の中に空いていた場所へ、
ほんの少しだけ温かいものが戻ってきた。
「お顔を、よく拝見してもよろしいでしょうか。」
「……うん。」
クリスティが顔を上げる。
リカルドは、十八歳となった姫君を静かに見つめた。
美しくなった。
強くなった。
それでも、自分へ向けられるその表情は、
昔と変わらない。
手を伸ばせば届く距離。
けれど、リカルドの腕は動かなかった。
三年ぶりに会えた今も、
その距離を勝手に越えるつもりはなかった。
「姫様は、随分とお変わりになられましたね。」
クリスティが少しだけ首を傾げる。
「そうかな?」
「はい。皇女としてのご活躍は、奈落の前線にまで届いております。」
そう告げると、
クリスティは少し照れたように笑った。
「……アークファイントに言われると、恥ずかしいね。」
その笑い方は、昔と変わらない。
それだけで、三年間離れていた距離が、
ほんの少し縮まったように感じた。
クリスティもまた、改めて目の前の騎士を見つめる。
三年前より逞しくなった身体。
日に焼けた肌。
以前より少しだけ険しくなった表情。
「アークファイントも、変わったね。」
「そうでしょうか。」
「うん。少し、険しい顔になった。」
リカルドは僅かに苦笑した。
「以前から、怖い顔だとは言われておりました。」
クリスティは意外そうに目を瞬かせる。
そんなふうに思ったことは、一度もない。
「私は、怖いって思ったことないよ。」
「……今も?」
ほんの一瞬だけ、
リカルドの声が柔らかくなった。
クリスティは迷わず頷く。
「今も。」
その答えに、
リカルドの目元がほんの僅かに和らいだ。
その表情は、昔と変わらない。
だからこそ、その頬に残る自分の知らない傷が目に入った。
「その傷……。痛かった?」
「すでに治っております。」
「そうじゃなくて、傷を負った時。」
少し迷って。
「……少しは。」
「そっか。」
クリスティは寂しそうに笑った。
「知らなかった。」
報告書には、傷の痛さまでは書いていなかった。
三年間、互いに知らない日々がある。
その事実が二人の間へ、
静かに横たわっていた。
「アークファイント。」
「はい。」
「三年間、自分で選んだ道を歩いて――」
クリスティは一度、言葉を止めた。
怖かった。
答えを聞くことが。
それでも言葉を続ける。
「……幸せだった?」
三年前にも同じことを聞いた。
『いま、幸せ?』
あの時、リカルドは。
『姫様にお仕えできて、私は幸せです。』
そう答えた。
今は、何と答えるのだろう。
リカルドは、少しだけ月を見上げた。
奈落で過ごした三年間。
仲間。
戦場。
守れた命。
救えなかった命。
痛みも。
誇りも。
すべて。
自分自身が選んだ人生だった。
やがて、静かに答える。
「多くのものを得ました。かけがえのない仲間を得ました。
自分の剣で、どれほど多くの命を守れるのかも知りました。」
クリスティは黙って聞いている。
「アレクシス殿下の下で戦った三年間は、
私にとって決して無駄なものではございません。」
「……うん。」
クリスティは、ほっとしたように笑った。
「よかった。やっぱり、私の選択は間違ってなかったんだね。」
その笑顔が、僅かに寂しくなる。
「アークファイントは、私の隣にいた時よりずっとたくさんの人を守れた。
だから、私が手放してよかったんだよね。」
「違います。」
迷いのない声だった。
クリスティの瞳が揺れる。
「……違う?」
「はい。」
リカルドは、真っ直ぐにクリスティを見る。
「確かに、私は多くのものを得ました。ですが――」
一度、静かに息を吸う。
「どこへ行っても、誰と剣を交えても、どれほど武勲を重ねても。」
黒い瞳が、紫水晶の瞳を見つめる。
「私が真っ先に考えるのは、いつも姫様のことでした。」
クリスティが息を呑んだ。
「今日はお元気だろうか。」
「きちんとお食事を召し上がっているだろうか。」
「ご無理をなさってはいないだろうか。」
「笑っておられるだろうか。」
「一人で、泣いてはいないだろうか。」
「そのようなことばかり、考えておりました。」
一粒。
クリスティの頬を、涙が伝った。
「……馬鹿。」
震える声が零れる。
「本当に、馬鹿。」
リカルドは何も答えなかった。
ただ、その言葉を受け止めるように、僅かに目を伏せた。
クリスティは涙を拭いながら、小さく笑う。
「私もね、アークファイントが活躍してるって聞くたび、嬉しかった。」
「手放してよかったんだって。」
「あなたの未来を奪わずに済んだんだって。そう思ってた。」
「でも、報告書に名前を見るたびに会いたいって思った。」
「今、何をしてるのかな。」
「怪我してないかな。」
「ちゃんと食べてるかなって。」
少しだけ笑う。
「アークファイントと、同じことばかり考えてた。」
リカルドの胸が、大きく揺れた。
それでも、手は伸ばさなかった。
手を伸ばせば届く。
けれど、その一歩を越える理由を今の自分はまだ持っていない。
「姫様。」
リカルドは、ゆっくりとクリスティの前へ片膝をついた。
十三年前。
五歳の少女から願いを受けた時と、
三年前。
その少女から別れを告げられた時と同じように。
「三年前。姫様は、私へ自らの道を選ぶよう命じられました。」
奈落へ行き、多くの者と出会い、多くの命を守った。
「そして、自分が本当は何を望んでいるのかを知りました。」
クリスティは、涙を浮かべたまま彼を見る。
「姫様、どこへ行っても帰りたいと思う場所は一つだけでした。」
胸へ、右拳を当てる。
「私がお守りしたいと願う方も、一人だけです。」
五歳の時は。
クリスティが、彼を選んだ。
十五歳の時は。
クリスティが、彼を手放した。
そして今。
初めてリカルド自身が、その先を選ぶ。
「姫様、もう一度」
僅かに声が震えた。
それでも迷いはない。
「私を、あなたの騎士にしてください。」
クリスティは、両手で口元を押さえた。
涙が、次々と零れていく。
三年前。
自分は、彼の選択を信じられなかった。
けれど今、リカルドは、
三年間、自ら選んだ道を歩いた上で、
もう一度自分の隣を選んでくれた。
「……うん。」
何度も頷く。
「今度は、あなたが選んでくれたことを信じる。
もう私が勝手に、あなたの幸せを決めたりしない。」
涙を拭いクリスティは、柔らかく笑った。
「だから、もう一度、私の騎士になって。」
リカルドは深く頭を下げた。
「謹んで、お受けいたします。」
「……お帰りなさい。アークファイント。」
その言葉に、リカルドは初めて、
心から安堵したように目を細めた。
「ただいま戻りました。姫様。」
◇
翌朝。
皇帝執務室。
クリスティとリカルドから話を聞いたルーファスは、
しばらく二人を見つめていた。
「つまり、リカルド・アークファイントを、再び専属騎士へ任命したいと。」
「はい。」
クリスティは真っ直ぐに頷いた。
「今回は、私の願いだけではありません。
アークファイント自身が望んでくれました。」
ルーファスの視線が、リカルドへ向く。
「相違ないか。」
「ございません。」
リカルドは深く頭を下げた。
「私自身の意思により、もう一度姫様の騎士となることを望みます。」
「そうか。認めよう。」
クリスティの表情が明るくなる。
「ありがとうございます、お父様!」
「ただし。」
「はい。」
ルーファスは二人を見据えた。
「二度と、互いの意思を確かめもせず、相手の人生を勝手に決めるな。」
二人揃って、言葉を失った。
その横でアレクシスが大きく頷く。
「まったく、その通り。」
「アレクシス兄様……。」
「何だ。俺は三年前から言ってるぞ。」
アレクシスは腕を組む。
「第一騎士隊長を失うのは痛いが、
本人が自分で選んだんだ。今度は邪魔する気はない。」
「兄様……。」
「副隊長を昇格させる。足りないところは俺が鍛える。」
「ご迷惑をお掛けします。」
リカルドが頭を下げるとアレクシスは盛大に息を吐いた。
「本当にな。」
けれど、その顔は笑っていた。
「アレクシス殿下。三年間、大変お世話になりました。」
突然の真面目な言葉に、アレクシスの表情が止まる。
「三年前、自分の道を選べと、
次に選ぶ時も自分の口で言えと、そう仰ってくださいました。」
リカルドは深く頭を下げた。
「ありがとうございました。」
「……やめろ。」
アレクシスは困ったように頭を掻いた。
「そういう真面目な礼は調子が狂う。」
「申し訳ございません。」
「だから謝るな。」
そして、改めてリカルドを見る。
「今度こそ、自分で選んだんだな。」
「はい。」
迷いのない返答だった。
「私自身の意思で、姫様の隣へ戻ります。」
「そうか。」
アレクシスは、ほんの僅かに笑った。
「なら、もう勝手に離れるな。」
◇
皇帝執務室を出た後。
クリスティは、廊下の途中で足を止めた。
振り返るとそこには、白銀のマントを肩に纏い、
三年前までと同じように、
リカルドが立っていた。
近付きすぎず。
離れすぎず。
何かあれば、
すぐに剣を抜ける距離。
「アークファイント。」
「はい、姫様。」
返事がある。
それだけで、クリスティは嬉しそうに笑った。
三年間、返事のなかった名前。
今は、呼べばまたあの声が返ってくる。
リカルドもまた、その笑顔を静かに見つめていた。
十三年前。
小さな少女の願いから始まった道を。
三年の時を経て。
今度は迷うことなく、
自分自身の意思で、もう一度選んだ。




