プロジェクトH・大塚怜の視点
私の名前は大塚怜。高校生のときに命を落とした私の転生先は、出来たばかりで何も無い世界だった。あるのは1つの部屋と、1人の少年。私は彼と2人でこの世界を創っていかなくてはならなかった。なぜ、何も無い世界なのか。私をこの世界に転生させた女神・呂里馬場比女命様は、当時のことをこう語る。
「実を言うとのう、わらわは新しい世界を自分で創ろうと思うておったのじゃ。それがのう、どこぞの仏が成果を見せろとか言うてきおって、急遽誰かを転生させねばならなくなってのう。あんな何も無い世界に転生させてしもうてすまなかったのじゃが、怜たちはよく頑張って世界を発展させてくれたのじゃ」
一緒に世界を創っていくことになった少年の名前は麩酒杉輝。2人で世界を創るのは順調に思えたが、一つ問題があった。杉輝は、変態なのだ。最初に会った時、彼は私の服にペンキを付け、着替えるには装備画面から「外す」を選べばいいと教えた。「外す」を選ぶと裸になってしまう。こんなふうに、何かにつけて私の裸を見ようとしてくるし、そのためにイタズラを仕掛けたりもするのだ。
私の体は杉輝がデザインしたもので、彼の理想を反映して胸が大きい。少しして、新しい仲間として小山内心ちゃんが来た。そのときも彼が体をデザインして、胸がとんでもなく大きい姿にしようとしていた。私が止めたが、それでもかなり大きな胸になった。その事を心ちゃんはどう思っているのか聞いてみた。
「心のおっぱいが大きいこと? すごく大人っぽくていいんだけどねー、重いから時々嫌かなー」
杉輝のことはどう思っている?
「この世界に来てすぐのときに優しくしてくれたから好きだったよー。でも最近はお友達もいっぱいいるからねー、杉輝のことはそんなに好きでもないかなー」
私たちの使命は、転生者が冒険を楽しめるようにこの世界を発展させること。私たちはこの世界を広げていき、次第に住人も増えていった。
転生する人は女神様が選んでいたのだが、しばらくして1人の転生者に任されるようになった。寝貝加奈絵ちゃん。転生して天使の姿になり、カナエルと名乗った。カナエルは死者の願望を聞き出し、この世界にふさわしい者を選んでいったが、ここでも問題があった。彼女もまた、変態だったのである。この世界で初めて冒険者として転生した少年・堀田放くんが、転生してきたときのことを語ってくれた。
「あの天使にからかわれたんだよね。スカートの中を見たいのかとか、男の尻がどうのこうのとか」
別の冒険者・雄烈栄くんもこう語る。
「カナエルって、なんか出会っていきなり俺に迫ってきやがったな。そんな事よりな、俺は最強になって賞賛を浴びてえって、レベル99の勇者になりてえってカナエルに願ったんだよ。それで実際にレベル99の勇者になったんだけどよ、周りの人の様子がなんかおかしいんだ。俺に対して明らかに何かを隠してやがんだよ」
雄烈くんは、悔しさに目を潤ませた。
「周りの人を見てれば薄々気付くんだ。こいつら、俺よりずっと強いって。だから俺は、大塚怜を問い詰めたんだ」
私はその時、この世界のシステムに介入して口止めシステムを解除した。雄烈くんが低レベルであることを本人に言ってはならないと警告するシステムが作動していたのだ。そして私はそのことを雄烈くんに説明した。
「そりゃあショックだったぜ。この世界の住人のレベルは1000以上が普通だって言われて。強いと勘違いしてる俺を、周りみんなが笑ってたんだって思った。こんなふざけた転生を考えた麩酒杉輝と、実行したカナエルと女神は許せねえ」
その間に杉輝は、穴のあいたスカートを私にはかせるといったイタズラに飽き足らず、変態行為をエスカレートさせていた。とある乙女ゲームの世界を模した学園に転生する企画では、悪役令嬢役・数寄透さんが被害に遭っていた。「透明化」のスキルが与えられたが、体が透明になるというのは偽りで、実際は周りの人に口止めし、あたかも体が見えないようにふるまわせていたのだ。その時のことについて聞くと、透さんは声を震わせた。
「わたくしはうかつにも騙されて、衆人の前で全裸で歩いてしまいましたわ。嘘に気づいたときには、そりゃあもう泣きわめきましたわよ」
杉輝とカナエルは、偽りの転生の街も造っていた。女の子にモテると偽り、女として転生させた男だけの街だ。今は女の子として生きる茂手まくりさんに話を聞いてみた。
「転生してしばらくは、嬉しかったですよ。街中みんなが美しい女性だらけで、みんな私に好意を持ってくれるんですから。でも薄々気付いてしまうんですよね。みんな私と同じ立場なのかもしれないって。だって、私だけが特別って考えるより、みんな同じ条件って考えるほうが真実の可能性が高いじゃないですか」
嘘に気付いて傷つきはしたものの、今は開き直って前向きに生きているという。
「みんな男の心を持っていたとしても、今は女として生きているわけじゃないですか。それで仲良く暮らしていけるのなら、私も女として生きるのも悪くないかなって思ってます」
カナエルの変態行為も限度を超えていた。モンスターの姿になり、男性を脅して服を全部脱がせるという事件を起こしていた。被害者の1人、根越瑛太さんが語った。
「あの時は本当に命を賭けたやりとりだと思ってたから、恥ずかしいとか言ってる場合じゃなかった。後でイタズラ動画の撮影だって知ってブチ切れたぞ、まったく」
天国には善良な者しか来られないはずなのに、なぜこうも周囲を困らせる人がいるのか。この世界の創造を依頼された、慧羅僧菩薩様に話を伺った。
「『善良な者』というのを『善い性格の人』の事だと思われているかもしれませんが、それは誤解ですね。悪い事をしたいと思っていても、我慢して実行せず、善い事だけ行っていれば天国に来ることができるのです」
この世界が始まって3年ほど経ったある日のこと。私たちがドラマを撮影し、その脚本を杉輝が書くことになった。きっと女に対していやらしいイタズラを仕掛けるに違いない。そう確信した私は、イタズラを阻止することを決意した。
主人公パーティーは女だけ。台本には、百合園町の温泉で撮影する回が書かれている。ここで何か仕掛けてくるはずだ。この回はカナエルが監督をすると書かれているが、カナエルが杉輝に協力していることも考えられる。私は杉輝やカナエルには内緒で、撮影日を1日前にずらした。しかし台本ではカナエルが出演することになっている。私は数寄さんに代役を依頼した。
当日、私は数寄さんのキャラクターデザインをカナエルの姿に変え、台本通りに温泉での撮影を終えた。
翌日、カナエルが「撮影を始める」と私を呼びに来た。私はこう言った。
「え? 撮影は昨日やったよね、温泉で」
カナエルは不思議がりながら帰っていった。作戦は成功だ。
別の回の台本には、スライムの攻撃を受けて捕らえられると書かれている。スライムの攻撃というと酸で溶かすものだから、きっと服だけ溶かしてくるだろう。私はパーティー全員の服に酸への耐性を追加しておいた。そして撮影当日、私たちはスライムに捕らえられても全く平気だった。
そうやって私はいやらしいイタズラをすべて阻止してきた。もう撮影最終日が近づいてきている。
そんな中、私は杉輝が新しい魔法を作ったのに気付いた。「急成長」という魔法で、大人の姿になったうえで数メートルの巨体になるらしい。最終日はきっとこの魔法を女神様に使わせて、着物をはだけさせるつもりだろう。そうはさせるか。私は女神様の着物に「とてもよく伸びる」という特性を追加しておいた。
私は杉輝の野望を打ち砕く。そのために、ドラマ撮影の最後で杉輝が一番調子に乗っているときに、このドキュメンタリー映像を流してすべてを暴露する。




