魔王との戦い・麩酒杉輝の視点
主人公パーティーが魔王城に入っていった。魔王城の中で魔王役の雄烈が待っている。いよいよ最後のシーンだ。
これまでのシーンでロリババアの実況のすごさをたくさん見せつけてきた。これであいつはいい気になっているはずだ。いよいよ、恥ずかしい目にあわせる時が来た。
台本には、にゃんこそば同盟が魔王と戦って敗れると書いてある。そして最後の希望を実況者ロリバーに託す、と。この流れは誰が見ても、主人公が圧倒的な力を見せつけて魔王を倒す、という展開を予想するはずだ。自分が冒険者として戦うことを嫌がっていたロリババアも、この状況には逆らえまい。自分が怜たちの師匠役にとどまらず、圧倒的な力を持つ主人公だということを意識する。最高に調子に乗ったこのタイミングが、最高の仕掛け時だ。
ロリババアを脱がす。といっても、見た目がロリだからあまり脱がし甲斐が無い。どうせなら大人の裸が見たい。だから俺は、大きくなる魔法を作っておいた。この魔法を使うと大人の姿になる。それにとどまらず、もっと大きくなる。巨人化だ。すると帯がちぎれて、着物は前がはだける。この魔法をあいつが自分で唱えるように仕向けてやる。
今リアルタイムで撮影中の動画には、にゃんこそば同盟が魔王と戦っている様子が映っている。弱すぎる雄烈に対してわざと苦戦しているように見せかけようと、なんか不自然な戦い方になって、怜と心がやられたふりをしてる。あとでテロップでツッコミをすれば面白くなりそうだ。
まくりが魔道具を使って煙幕を出した。煙のせいで何をやっているのかよく見えないが、剣の鞘が飛んできて雄烈を倒してしまった。まずいな、ここで魔王がやられるという展開は考えていなかったんだが……。
「まずいのじゃ、カナエルが魔王に操られておる!」
ロリババアが実況でそう言うと、カナエルは雄烈に駆け寄って治癒魔法をかけた。無理やりすぎる展開だが、よく話の流れを元に戻してくれた。これでようやくにゃんこそば同盟がピンチになったので、そろそろ俺の出番だ。俺は声を遠くに届ける魔法でロリババアに語り掛けた。
「力が、欲しいか?」
ロリババアはきょろきょろしている。
「実況者ロリバーよ。汝は魔王を打ち破れる力を秘めている。我が汝の眠れる力を解放してやろう」
「このドラマはあやつら4人の成長物語じゃぞ。わらわがあやつらの代わりに魔王を倒してどうするのじゃ」
俺はお前が調子に乗った姿を見たいんだよ。
「それは違う。このドラマは汝が主役だったはずだ。思い出せ。汝がかっこよく戦って物語をすっきり終わらせる必要があるのだ」
「そんなの……恥ずかしいではないか」
なんかロリババアの意外な一面が見えてきたぞ。いつも高圧的なのに、今日はやけにかわいいじゃないか。そのかわいさを視聴者にもっと見せてやれ。
「視聴者は汝が恥ずかしさをこらえてチャレンジする姿を望んでいる」
「わかったのじゃ。何をすればよいかのう?」
俺はロリババアにスキルを追加した。さあ、「悪を滅する力をこの身に」と唱えるんだ。いや待てよ、せっかくかわいさを見せたんだ、呪文もかわいく変えてやろう。
「汝のスキルに『急成長』が追加されている。大人の姿に変身して真の力を解放するのだ。この魔法は、『ゆめゆめきらきら、おっきくなあれ』と大声で唱えれば発動する」
「恥ずかしすぎるのじゃ――!! 子ども扱いするでないわボケ――!!」
たった今俺がその呪文を唱えたんだが!? 急に恥ずかしくなってきたじゃないか!
「男の我が恥ずかしさをこらえて唱えてみせたのだ! ベテラン幼女を自称する汝が出来んとは言わせんぞ!」
俺たちのやりとりを聞いて、怜たちが台本のセリフを言いだした。
「ロリバーさん。私の願い、あなたに託します。どうか魔王を討ち取ってください」
「ココロのぶんも、頑張って」
「ロリバーさん……あなたが最後の希望です……」
いい持ち上げっぷりだ。ロリババアの顔が緩んでいる。さあ、調子に乗ってかわいい呪文を唱えるんだ!
「ゆめゆめきらきら、おっきくなあれ!!」
ついに唱えた! ロリババアの手足がぐんぐん伸びて、体つきも顔つきも大人っぽくなっていってる。どんどん背が伸びていって、3メートルを超えた。帯が引き延ばされて、今にもちぎれそうに……なってない!? 帯がゴムみたいに伸びている? 着物もなんか伸びてて、身長が4メートルになってもはだけないぞ?
「皆の想い、わらわが受け取ったのじゃ! 魔王のレベルが99なら、わらわはそれを超えるレベルで打ち勝って見せるのじゃ――!!」
調子に乗ったロリババアが制御不能だ! 雄烈に向かって勢いよくキック! いやキックというより踏みつぶしてるだろこれ! マジで殺すんじゃない!
「カット、カ――ット!!」
俺は叫びながら魔王城の中に走って行った。するとロリババアは我に返ったのか、踏みつけるのをやめてこっちを見た。他のみんなも俺を注目している。
突然、玉座の間に音楽が鳴り響いた! 荘厳な重低音。なんだこれ、こんな演出は台本に書いてないぞ!?
玉座の上の壁が光り輝いた。光の中に映像が見える。プロジェクターで投影してるのか。映像の中に文字が現れた。
プロジェクトH ~変質者たち~
それから流れた映像は、ドキュメンタリーだった。




