勇者パーティー・麩酒杉輝の視点
台本を書き直して、宿屋で撮影再開。俺は別室から動画を見ながら状況を見る。まずは台本通りに状況説明を済ませた。ここからアドリブでパーティーに勧誘するんだが……カナエルのやつが同じセリフを何度も繰り返して勧誘している。ロリババアが承諾するまで繰り返すつもりかよ、強引なやつだ。結局ロリババアが折れて加入してくれてよかった。
さて、次はダンジョンのシーンなんだが……なんか雑談で盛り上がってるな。まあ誰かが適当なタイミングで次に進めてくれるだろ。俺は先にダンジョンに行ってモンスターを配置した。これでいつでも撮影できるんだが……みんななかなか来ないな。
1時間くらいしてやっと来た。お前ら、アドリブの雑談シーンを1時間も撮影したのかよ。まあそれは編集で面白いところだけ抜き出すとして、次は戦闘シーンだ。
最初の戦闘ではパーティー内で連携せずに下手に戦うように台本に書いている。俺は2匹のジャイアントビーを放った。怜と心が攻撃を外して、ジャイアントビーに刺されている。いいぞ、戦い方が下手な様子をうまく表現できている。また刺されて、また刺されて……いくらなんでも刺されすぎで痛いだろ。もうやっつけていいって。なんで攻撃を当てないんだよ。あ、敵が刺している間に攻撃して倒した。あいつら本当に下手なんじゃないか? 素早い敵には攻撃が当たらないんじゃないか?
まあいい、次の戦闘では実況を聞きながら上手に連携して戦うように書いてある。俺はロックボールを放った。今度は面白いように連携が決まってさっと倒してくれた。
これで今日予定していたシーンは全部撮影できた。予備として用意していた鬼は使う必要無かったな。ダンジョンに配置したまま静止させていた鬼を消そうとしたら、間違えて静止を解除してしまった。やばい、このままだとあいつらと戦闘に……いや、問題ないか。そのまま戦わせてみることにした。そしたらロリババアが実況中に「豆が効く」とか言い出して、なぜか豆まきが始まった。これはこれで面白いな。怜がロリババアにツッコミの一撃をくらわせて、その間に心とまくりで鬼を倒した。予想をはるかに超えて面白い、動画に加えなきゃ。
「カット!」
俺はみんなに撮影終了を告げ、解散した。今日は撮影初日だから、みんなに撮影を楽しんでもらうためにイタズラは無しだ。
そのあとは毎週2回ほど撮影をした。みんな撮影に慣れてきて、戦いぶりも動画映えするものになってきた。
もうすぐ百合園町の温泉で撮影する温泉回が来る。監督はカナエルで、お湯には濃い色の入浴剤を入れて肌が見えないようにする、と台本に書いておいた。これなら怜たちも受け入れるだろうが、そろそろエロいイベントを起こす時だろう。俺はカナエルを訪ね、この温泉回について話した。
「動画の人気を上げるために、ここでエロいイタズラを仕掛けていきたいんだよ。温泉で撮影中にモンスターを乱入させたいんだ。そしたらみんな裸で戦うことになるだろ」
カナエルは口元に気味悪い笑いを浮かべている。
「面白いですねぇ。でもほんとに裸の動画を流したらぁ、神様も怜ちゃんも本気で怒りますよぉ」
「そこは編集してうまく隠すことにしよう。それでな、当日は俺がお前に変身して監督をしたいんだが、いいだろうか」
「怜ちゃんたちの裸を楽しみながらぁ、裸で戦う役も自分でやるんですかぁ。くふふ、いいですよぉ、私の姿で好きにやっちゃってくださぁい。でも心ちゃんもいることですしぃ、正体がばれたら虫にされそうですからお気を付けをぉ」
悪だくみをしてそうな顔でくふくふ笑っている。お前はこういうの本当に好きだなあ。
温泉回当日、俺はキャラクター設定をカナエルの外見に変えて、温泉の入り口で怜たちを待った。なかなか来ない。集合時刻はとっくに過ぎている。どうしたんだろう? 俺はカナエルの姿のまま転移魔法で怜の所に行った。怜は買い物中だった。
「どうしたんですかぁ? 撮影始めますよぉ」
「え? 撮影は昨日やったよね、温泉で」
カナエルのやつ、俺に内緒で撮影日をずらして自分で撮影したのかよ! 裏切ったなカナエル!
それからも俺の仕掛けたエロイベントは、カナエルや怜の妨害を受けて失敗し続けた。
そして迎えた撮影最終日。魔王城での戦いの撮影。俺たち勇者パーティーが主人公パーティーに戦いを挑むシーンの撮影を始めた。台本は俺のセリフから始まっている。
「ちょっと待ったあ! お前らが俺たちより先に魔王を倒しに行くなんて、どんだけ俺たちをバカにすれば気が済むんだ!」
そして怜との会話につながる。
「私たちはバカになんてしてません」
「ふざけんな! お前らごときが動画サイトで俺たちより人気取ってるのは、俺たちをバカにするためだろ! それに魔王を倒すのは選ばれし勇者の役割なのに、俺たちに無断で魔王を倒そうとするなんて何考えてるんだ!」
次の怜のセリフの前に、堀田がアドリブを入れた。
「要するに、自分より格下だと思っていた人たちに人気で超えられちゃって実力でも超えられそうだから、妬んでるんだよ」
まあ適切な説明ではあるんだが、なんか堀田が俺をバカにしてないか?
「やめろ、ホール。わかりやすく説明するとギーテルの馬鹿さが際立ってしまうだろ。交渉は俺に任せろ」
根越は完全に俺をバカにしてるよな!
「俺たちとお前らのどっちが実力が上か、戦って決着つけないとあの馬鹿が納得しないんだよ。俺たちと勝負しろ」
勝負する理由が台本と全然違うだろ!
「そんな、私たちには戦う理由がありません」
「もし勝負を断ったらな……ギーテルがお前らのパーティーに加入するぞ!」
どんだけ俺をバカにするんだ根越!!
「みんな! 戦うよ!」
「「「お――!!」」」
怜たちも即答で俺を嫌うなよ!
「結局みんな俺をバカにしてるじゃねーか!! ココロ、お前は俺と一緒のパーティーがいいよな?」
「え? そんな事ないよ?」
心、お前だけは俺をバカにしないと信じてたのに!
「くそ――っ!!」
戦闘が始まった。戦い方はアドリブだが、台本通り主人公パーティーが勇者パーティーに優勢な戦いぶりを見せている。俺はこの隙にエロイベントに取り掛かった。今度こそ成功させてやる。
「茂れ、トレントの蔓!」
無数の蔓が女に絡みついて恥ずかしいポーズをとらせる魔法だ。やった、怜たちのパーティーもロリババアも一網打尽だ! 味方の数寄も巻き添えになってるが、これはこれでいい。
俺はロリババアのほうに行って様子を見てみた。両手足に何重にも巻き付いていて、自力での脱出はできないな。だがお前は最後のエロイベントのターゲットだ。今は手を出さないでおいてやる。
怜の所にも行ってみた。怜にもしっかりと巻き付いて押さえこんでいる。胴体に巻き付いた蔓が大きな胸を強調させている。さて、もっとエロくしていこうか。
強烈な衝撃!! 気づくと俺は倒れていた。壁に打ち付けられたようだ。頬に大きなダメージを負っている。何が起きた? 遠くで怜が蔓から脱出しているのが見えた。あいつ、蔓を引きちぎって俺にパンチしたのか。また失敗だ……。




