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異世界転生、裏から見れば  作者: 黒魔
7章 勇者パーティーを追い出された役立たず実況者がとんでもなく有能なんだが
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実況者の戦い・呂里馬場の視点

 さて、次の収録場所であるダンジョンに着いたのじゃ。わらわは皆の戦闘を見ながら普段通りに実況するかのう。


「何か近づいてくる。これは、羽音!」


 よかろう、実況開始じゃ。


「レイがモンスターの気配に気づきおった。気を付けるのじゃぞ」


 姿を現したのは大きな(はち)のモンスター2匹じゃ。


「出おったあ、ジャイアントビーじゃあ。毒針には注意が必要な相手じゃが、一番やっかいなのは攻撃をかわすすばしっこさじゃ」


 そう言うておるうちに心が突進していきおった。


「いきなりココロが突撃! パンチを繰り出すも、当たらぬ当たらぬ! ココロも素早いのじゃが、敵の素早さはココロを大幅に上回っておる。どうするにゃんこそば同盟、敵を引き付けて攻撃の隙を突くことができるじゃろうか?」


 怜が氷魔法を放ちおった。


「レイの『凍てつく(あらし)』が炸裂(さくれつ)じゃ! じゃが敵までの距離が遠くて当たらぬ! カウンターでジャイアントビーの毒針がレイに突き刺さったー!」


 まくりが何やら魔道具を取り出しておる。


「ここでマリーが出した箱は何じゃ? 素早すぎる敵の動きを封じるものが入っておるのか? マリーが箱を振りかざし……レイを刺したままのジャイアントビーに殴りつけたー! 魔道具の使い方、それでよいのかー!」


 もう1匹のジャイアントビーは心を刺しまくっておる。


「その間にココロがやられておる! おお、刺されながらも敵を捕まえおったぞ。両手でつかんだまま、膝蹴(ひざげ)り! 決まったあああ!」


「皆さんお疲れ様ですぅ」


 カナエルが怜と心に回復魔法をかけておる。まくりがわらわに近づいてきた。


「私たちの戦い、どうでした?」


「ぐだぐだじゃのう。各々(おのおの)が何も考えずに勝手に暴れまわっておるだけじゃ。せっかくのポテンシャルを全然活かせておらぬわい」


「そうですよね。経験が足りないから、連携なんてどうすればいいかわからなくて……」


 わらわも教え方がわからぬ。困ったのう。


「実況をよく聞いてみたらどうですかぁ?」


 カナエルが口をはさんできおった。おそらく台本に書いてあるのじゃろう。


「さっきの実況、私たちがどう行動したらいいかをちゃんと言ってましたよぉ。よく聞いてぇ、今度はその通りに行動してみましょう」


 なんと、わらわの実況が戦闘の役に立つというのか?




 次のモンスターが近づいてきておる。わらわはさっきと同じように実況するのじゃ。


「今度はアルマジロ型のモンスター、ロックボールが現れおった。回転しながらの突進は攻撃力も防御力も高いのがやっかいじゃ。大盾で突進を止めれば攻撃の隙ができるのじゃが、そんな事のできるタンクはおらぬこのパーティー。果たして魔法か魔道具で突進を止められるのじゃろうか?」


 すぐにまくりがカバンから魔道具を取り出しおった。心は突撃せずに様子をうかがっておる。うむ、皆わらわの実況に(したご)うておるのう。


「さあ、ロックボールが丸まって突進してきおったぞ。おっ、マリーが網を投げ……かかったあ! 敵を網の中に捕らえることに成功じゃあ! ロックボールの側面に攻撃の隙ができておる。さあココロがダッシュして……頭にキック! これは強烈じゃ! たまらず腹を見せるロックボール、隙だらけじゃ! この隙に攻撃魔法が決まるじゃろうか? レイが魔法を唱えておる。これは……『裁きの(いかづち)』が決まったあああ! やりおった、見事な連携攻撃が成功じゃ!」


 連携がきれいに決まって敵をあっさりと倒しおった。皆うれしそうじゃ。


「やったー! うまく倒せたよー!」


「この戦い方なら私たちも強い敵と戦える!」


「これからは実況を聞きながら戦いますぅ」


 わらわの実況でこんなに戦い方が良くなるとは、嬉しいのう。そして皆がわらわの言葉に従うて動いておるのが気持ちいいわい。


 おや、またモンスターが現れおった。またわらわが実況で皆を導いてやるかのう。


「おっ、またモンスターじゃ。ゆっくり現れおったのは、鬼じゃ! 攻撃力が高いが素早さが低い相手ゆえ、金棒の一撃をくらわぬように気を付けながらヒット&アウェイ、すなわち一撃入れてすぐに距離を取るのが有効じゃ」


 心は敵から距離を取ってゆっくり歩いておる。そして敵の真後ろに来たところでダッシュ!


「ココロが突撃! 背中にキック! いい一撃が決まってすぐに後退、これでは敵は反撃できぬ。うまく手玉に取っておるのじゃ」


 うむ、言うた通りじゃ。そうじゃ、何を言うても従うてくれるか試してみるのも面白そうじゃ。


「敵は鬼。鬼に効くアイテムといえば豆じゃ」


 まくりがアイテムを探しておる。いくら魔道具士といっても豆は用意しておらぬじゃろう。


「おや、カナエルが何かをマリーに手渡しておる。あれは豆じゃろうか? おやつとして用意しておったのじゃろうか? マリーが振りかぶって、投げたのじゃ」


 豆を投げたのは良いが、無言なのは良くないのう。


「豆を投げるときには掛け声があるじゃろうに」


「鬼は外――!」


 ちゃんと従うてくれておる。真面目(まじめ)じゃのう。


「威勢よく投げておる。もっとかわいさがあると良いのじゃが」


 まくりは作り笑顔で豆を優しく投げおった。


「鬼は~外! 福は~内!」


「おお、かわいいのう。皆でやれば(はな)がありそうじゃ」


 4人そろって笑顔で豆まきじゃ。


「「「鬼は~外! 福は~内!」」」


「4人で豆まき、かわいいのじゃ! たくさんの豆を浴びて鬼は弱る……わけなかろう! 豆が効くなど(うそ)じゃ! 鬼の金棒攻撃! レイはギリギリかわして、金棒を奪い取って投げた――はぐわあっ!!」


 痛いわい! わらわの顔に金棒が命中じゃ!


「私たちにおかしな事させないで!」


「うう、レイの激しいツッコミでわらわが大ダメージなのじゃ。えーと、その間にココロとマリーが鬼をボコっておる。なんか倒したようじゃ」


 怜がわらわの前まで来てきつい視線を向けてきておる。


「この怪力魔法使いめが、わらわの頭蓋骨(ずがいこつ)が砕けそうだったのじゃ」


「こっちは命を()けて戦っているんですから、ふざけないでください」


「悪かったと思うておる。つい調子に乗ってふざけてしもうたわい。次からはちゃんとやるのじゃ」


「カット!」


 急に後ろから声がしたので振り返ると、杉輝がおるのじゃ。


「なんじゃ、おったのか」


「俺は監督だからな」


「そなたが監督じゃったのか。監督はカナエルかと思うたわい」


「あいつは俺が出演してるときに監督を代わってもらってただけだ」


 こやつがカットしたということは、わらわがふざけたせいで撮り直すのじゃろうな。


「いい動画が撮れた。今日の収録はこれで終わりだ、おつかれー」


「これで良いのかい!」


 どういう台本になっておるんじゃ、まったく。



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