【第71話】モノづくり職人展覧会(6) 最終日
ブックマーク100件
ありがとうございます(^_^)/
お昼の時間になり、お腹もすいてきたので、メリーさんの雑貨屋を後にして、教会でご飯を食べる事にする。
今日はメリーさんも教会で食べるとの事でついてきた。
メリーさんのアポなしごはんも最近板について来た気がする。
◇◆◇◆◇◆
「やっぱりおいしい~」
メリーさんが大げさに料理を褒めている。
みんな仲がいいけど、タダでご飯を食べるのに、ちょっとだけ後ろめたいのだろうか。
そういうことを言うと俺もなんだけど・・・
急にメリーさんとの仲間意識が芽生える。
俺も前には自作のポーションを配ったりしたけど、よく考えたらみんな、ケガするような環境に居ないので全く意味なかった。
なのでお代になっていない。
テーブルを見る。
前にこのテーブルやイスに耐久性アップの付与をしたりもしたけど、
そもそも、そう壊れるものではないし、最終的には日曜大工好きな神官さんの仕事を奪っただけな気もしている。
と、そういう訳で、完全にタダ飯食らいになっているので
せめて食費に関して何か出来ることがないか日々模索中だ。
◇◆◇◆◇◆
「では行ってきます」
お昼を食べた後、さっそくモノづくり職人展覧会の会場へ向かった。
入り口で3000円を支払い、MAPを貰い中に入る。
オモチは子猫ケットシーなので無料だ。
今日は最終日なので初日ほどでは無いが人が多い。
人の波にうまく乗りながら付与ブースへ向かう。
付与ブースに近づくと、安定の静けさだった。
いや、馬鹿笑いをしている青年たちがいるな。
職人の服装というよりは、作業には不向きな高級感がある服を着ている。
あれがきっと兄弟子なんだろうが、何となく苦手な人種の予感・・・。
「ケイタさん、こんにちは!」
「こんにちは」
兄弟子たちの輪から娘さんが抜けて小走りにやって来た。
入り口に近づくと兵士さんが、おお、こいつか、みたいな顔で中にはいる様、促してくれた。
そう、一応俺も正式な弟子なのだ。
そのおかげで警戒の対象からはしっかり外れたようだ。
中で待っていた娘さんに手を引かれる。
ドルク親方もとい、師匠に挨拶をする。
「師匠、お疲れ様です」
「おお来たか。じゃあ今日来ている奴は丁度全員いるから顔合わせをしよう」
師匠がそう言うと、娘さんがみんなを集めた。
「こいつがこの前、弟子になったケイタだ。よろしくしてやってくれ」
「どうも、ケイタです。よろしくお願いします」
そういうとみんな、よろしくと言ってくれたが・・・
顔が明らかに面白くなさそうだった。
俺が挨拶しようとしたら別の方向を見たりする人もいた。
これには思わず考えていたあいさつを超短縮してしまった。
「さて、じゃあ以上だ」
師匠の言葉で兄弟子たちはさーっと居なくなった。
何か意味なかったな、このイベント・・・。
気を取り直し、師匠に向き直る。
「師匠、明日からお城に帰ってしまうんですね」
「お、お前、あれから一回も来なかったくせに、そういうセリフを吐くんじゃねえよ」
師匠は俺のおでこを人差し指で突いてきた。
「痛った。でもそれを言われると申し訳ないです」
「おじいちゃん、ここに入るのに3000円かかるのよ?
目的を達成した後にそうそう来ないわよ。」
「む? そうか・・・」と師匠。
「でもお前もちょっと寂しそうだったけどな」と師匠の息子さん。
「な!? お父さん、・・・」
娘さんは何かを言おうとしたが、俺を見て口をつぐんでしまった。
俺もそこまで鈍感ではないが、流石に年が離れすぎている。
娘さんは少女だ。15歳くらいだ。
しかもただの少女ではない、美が付く少女だ。
いや、そういう事じゃなくて。
たぶんギガントトレントに襲われた時、死を覚悟したんだと思う。
そこを颯爽と助けてくれた。
なのでヒーロー的な憧れを抱いている感じだろう。
「そういえば、帰る城って、この城ですか?」
ここは城の敷地内だ。ブースのすぐ先には大きな門があり、その先には大きなお城が建っている。
「ああ、あれだ。お前も入れるぞ? 俺の弟子だからな」
「おお」
「まあただ、入れるのは地下のエリアだけなんですけどね」と師匠の息子さん。
「なるほど、地下にそういった工房があるんですね」
「そうだぞ」と師匠。
「地下って言っても、すごい広さなんだけどね」と師匠の息子さん。
「へぇ」
杖屋の地下を思い出して納得する。
あれはバスケットコート1つ分はあった。
オモチが言うには、実は地下3階まであるらしい。
地下2階、3階には沢山の杖などが保管されているとか。
あれでもかなりの広さだったが、それがお城バージョンとなると凄いんだろう。
「いつか、一度は行ってみたいですね」
「そうだな、時々仕事を手伝ってくれると助かるな」
「それは問題ないですよ、ずっと中に居ないといけないのでなければ」
「うむ、まあ仕事うんぬんは冗談だ。気軽に遊びに来い」
師匠はニカリと笑ってそう言った。
「分かりました、何かおいしいお菓子でも持って遊びに行きますよ」
俺もニカリと笑ってそう答えた。
それからは師匠に俺の作成したキャンプ用品を見せていく。
遠くから兄弟子たちがこちらを見ていたが、近づいて来る事はなかった。
「こりゃあすごいな。これがあればかなり安全に立ち回れるだろうな」
流石にここで地面に穴をあけることは出来ない為、身振り手振りで柵の立て方とか、お香の台の使い方を説明していく。
まあお香の台は付与とは関係なかったが、ついでに説明した。
「はあ・・・よく思いつくな」
師匠が持っているお香の台を見て、そう言えば馬車にお香を搭載したら安全に行き来ができるのでは、と思いつく。
「あるにはあるぞ。 でも馬車は走るものだからな。煙を置いていっちまうから、あっても無くても変わらないらしいし、避けたモンスターが他の馬車を襲ったとかでトラブルが起きていたな」
師匠に聞いてみると指摘を受けた。
一応そういう馬車はあるらしい。
「なるほど、風向きで煙が前に行ってくれたら儲けものだけど、前以外だと意味がないし、出してる速度とか色々条件が限られてしまうのか。
あと避けたモンスターの事も考えないといけないのは難しいですね」
「そうだな」
「モンスター除けになる草なんかはないんですよね」
「う~ん、そのままだと無いはずだな・・・」
師匠は腕を組んで考え始めた。
「おっと、付与の師匠に関係ない事を聞いていますね」
「んん? いや、問題はないぞ。最近は付与の話題しか振られないからそういうのはむしろ嬉しい」
「ケイタさんなら、何を話してもいいんですよ」と隣で聞いていた娘さん。
「そうですか?」
「はい。あと、そのままモンスター除けになる草はないですね。
あれはすりつぶして、中の匂いが出て初めて効果を発揮するものなんですよ」と師匠の息子さん。
「なるほど」
「ついでに言うと、魔よけのお香は、その草の葉と、いくつかの植物、木などを乾燥させ粉末状にして、圧力をかけると糊状になる海藻の粉末とを混ぜて固めて作るんですよ」
娘さんが説明してくれた。
「へぇ、なるほど・・詳しいんですね」
「我が家の教育方針なんですよ」と娘さんが笑う。
「1つの知識にだけ精通していると思いつくアイディアとか、出来る事の幅がどうしても狭くなってしまうからな」と師匠。
「それは素晴らしい考えですね。正しいと思います」
「ケイタさんも結構、色々やられているんですよね」と息子さん。
「出来る事だけですけど、冒険者以外だと、ポーション作ったり、後は付与ですね」
「へぇ~。ポーションも行けるんですね」
「はい、ええと・・・これです」
俺は職人ギルドカードを見せた。
「んん?」と師匠の息子さん。
息子さんがカードを裏返して裏面を見ている。
上部の技能という項目に「初級ポーションAランク」と刻印されているのを見たのだろう。
「この才能が羨ましい」と師匠の息子さん
裏面を師匠に見せて、師匠もほう、という顔をした。
「すごいですね!」と娘さんもほめてくれる。
「初級限定ですけど、高く売れるから重宝してますよ」
初級ポーションAランクの俺が作ったポーションは、1本2000円で買い取られる。
「いやいや、中級以上なんて、この辺りで真面目に取り扱っている場所なんて無いですよ。あってもアピールとか、ほんとの緊急用で、常用ではないですから」
「あ、そうなんですね」
「一般的にポーションって言ったら初級ポーションの事を指しますからね。
しかし私もいろんな技能を習得していますけど、Aはないですね。Aは」と師匠の息子さん
師匠の息子さんは色々出来るけど、最高でCらしい。
AどころかBもないではないか。
でも、これはこれですごい。
Cって確か一人前、独り立ちしていいレベルだ。
「いいですね、そのオールマイティ? オールラウンダー?
とにかく何でも自分で完結できるというのは、何かあった時の強みですよね」
「そう! そうなんだよね、ケイタさんもやってみたらいいじゃない」と師匠の息子さん
「まあそういう考え方もあるんですが、省略できるところは省略して、
早く達成したいという気持ちもあるんですよね」
「あ~。まあ何となくわかりますよ」
ポーションに関しては自分で薬草を取って来てポーションにしてはいるけど、
薬草を切るハサミとか、刻むためのナイフとか、ポーション瓶、コルク、封シールなんかは自分では作れないし、作らなくても店で安く大量に売っている。
そこは力を入れるポイントではないので素直に買っている。
「ふうん?」
娘さんがよくわからいような顔をしたので説明する。
女の子なので料理の話で行ってみよう。
「料理屋さんでも、お米を栽培するところからはやらないでしょ、お米は厳選した米農家から・・買って来て・・・」
まてよ、この国ではお米はなじみがなかったな。
「今のはキャンセル。ええと、パンだ」
娘さんは少しだけ混乱したような顔で何度もうなずく。
「例えばパンを作ろうと思ったとき、、広大な畑を整備して、肥料やらををまいて、小麦を種から植えて、収穫して、分けて、粉にして、それから調理を始めるっていうのはやらないでしょ? まず粉買ってくるでしょ?」
「え? そ、そうね」
「つまり、出来る限りはそういった、しなくてもいい手間は省きたいかなって思うんだ」
「なるほどね~。その考えには賛同だね」と師匠の息子さん
師匠も後ろでうなずいている。
「しかし小麦粉自体の作り方が気になったことなんてなかったな~。
ケイタさんは農家さんでもないのに作り方知っているのはびっくりだね」
「まあたまたまです。それに概要だけですよ、実際に作るとなると出来ないと思います」
「なるほど~」と娘さん。
俺のすぐ隣で相槌打っているのを、
師匠の息子さんがニヤニヤしながら見ている。
「お父さん・・もう・・・!」
な、なんだこの好感触。
この前との間に何があった??
ともかく顔合わせと、師匠たちとの別れの挨拶が済んだので引き上げることにした。




