その2
ー カチャリ
と扉が開く、扉の外には毒の瘴気で満ち満ちている。
目には大きな城が映る
どうらや、瘴気は城から外に向かって溢れているようだ
空は雲が厚くかかり、陰った日の中で
城が異様な不気味を放っている。
物音1つしない空間に、エイトがゆっくりと足を踏み出す。いつもは勝気なエイトが慎重に行動してる。
一歩、二歩と足を進める
気配を殺し、音を立てぬ様辺りを見回す
エイトが、ドネルケバがいない事を確認すると
オグナ達を呼び込もうと扉の方を振り返る
ゾッと、背筋が凍りついた。
扉のある教会の屋根の上に、すでに巨大な獣の姿
最後尾のシシカバが今まさに扉を出た瞬間
「ふせろー!!!」
巨大な黒い彗星がエイトの腕から獣に向かって放たれる
と、同瞬!獣の尻尾がエイトの胴体を貫通している
そのまま体を後ろに運ばれるエイト!
少しニヤリと笑い、腹筋に力を込める
「離すなよ!」
たくましい腹部の筋力でホールドされた獣の尻尾が
ギュッン!と一気に細くしおれる!
エイトが渾身の力を込めて尻尾から生命力を搾り取る!
ぶつり!っと聞こえる鈍い音
見れば体を丸めた獣が自らの尻尾を噛みちぎっている。
「根性なしが!」
ピカッと走る閃光!
いつのまにか打ち出された魔力の奔流がエイトの鼻先に迫っている
間一髪で上体を逸らして、よけるエイト!
エイトの後方、着弾地点が跡形も無く消し飛ぶ
そのまま、くるりと背中を丸め、腕の力で空に飛び上がるエイト!
空中で無防備なエイトに標準を合わせて、
魔力の溜まった獣が口を再び開く
魔力の玉が打ち出されるその瞬間!
バクン!と獣の口腔で魔力が炸裂する。
下から顎をカチ上げたのは!オグナの拳!!
口から、焦げた煙りをあげながら
獣が身を縮めると!
周囲、全方向に獣の体毛が剣山の様に飛び出した
受け止めたのは良い物の!たまらず吹き飛ばされたシシカバとオグナ!
まだ空中のエイトが右の拳に魔力を集中する!
「とっておきだ!!!!」
ドン!と拳を突き出すと
漆黒の光線がドネルケバを目掛けて解き放たれる!
突如出現した黒い柱がドネルケバの左半身を飲み込んだ!
スタッと降り立つエイトは、そのままの勢いで
失われたドネルケバの左の死角から追撃を行う
すぐさまこれに続くシシカバとオグナ
エイトの拳がドネルケバを捉えようした直前!
エイトがピタリと拳を止めた!
「こいつ!マジかよ!」
ギョロリと見開かれ大小様々な瞳がエイトを睨み付ける!
すでに欠損した左の顔は復元し!再生された傷口に複数の瞳が形成されている
伸びた体毛にぐるりと拘束されるエイトの体!
ギュッン!とエイトの体が縮む!
ザン!
ドカン!
と、衝撃音!
オグナの渾身の体当たりが獣の腹部を直撃し
同時、伸びた体毛をシシカバの刃状の腕が切断している
拘束の解かれたエイトの体が力なく地面に落ちる
その体をオグナが優しくキャッチする
老婆の様にしわしわのエイト
「野郎………私の…能力を…」
「わかってる」
オグナの体当たりで体勢の崩れドネルケバは
それを物ともせず、さらに鋭利な体毛を3人に目掛けて伸ばす!
キンキン!と金属にも似た音を立てながら
迫る無数の毛針をシシカバの4本の妖腕がこれを防いでいる
さらに体毛を伸ばすドネルケバ
シシカバの視界が毛の束で覆い尽くされる
ダメだ!と思った、その束の間
シシカバの体がグイッと後ろに引かれる
シシカバの目の前でピン!と止まるドネルケバの体毛
それを掴んでいるのは、極太の腕!
シシカバの瞳に映るオグナの肉体!
それがドン!と膨れ上がる
隆起した筋肉、盛り上がる力こぶ!!!
丘を思わせる発達した胸板!!
大砲の砲身よりも太い首筋!!
ロッククラムが出来るほどにそびえ立つ、広い背中!!
深い渓谷を思わせる腹筋の割れ目!!
太ももは大地を締め上げる世界樹の根の様だ!
この世の筋肉!
それを一点に集約した様な猛き姿!
沸騰した血液に!筋肉が喜び勇む!
これぞ!シドウの者の証【益荒雄】の姿!!
「…オグナさん?」あっけに取られたシシカバの声
手にした体毛を引き寄せて
豪快な右の拳のフルスイング!!
クリーンヒット!!ドネルケバが苦悶の声を漏らす
フッ飛ばされるドネルケバ!
掴んだままの体毛をもう一度引き寄せる
ドドドドドン!!と強烈な連打
次々と両の拳から放たれる、打撃の豪雨!
その1発1発が致命の一撃!!
たまらず吐血するドネルケバ
衝撃で後退する敵に向かって!とどめとばかりに飛び蹴り見舞うオグナ!
今まさに、蹴りが浴びせられようとする獣の顔が
ニヤリと笑った様にオグナは感じた。
左手に持つ獣の体毛が金属の様に変化して
無数の毛先が鋭くオグナの腕に突き刺さる!!!
突如訪れる、倦怠感!
急激に奪われるオグナの生命力
「しまっ…!!」
ドン!と膨れる獣の体
隆起した筋肉、盛り上がる力こぶ!!!
裂けんばかりに開かれた獣の口から
ドーーーーーン!
と、放たれた魔力の破壊光線!!
焼け焦げたオグナの姿は、すでに通常時に戻っている
ぷすぷすと煙りをあげて横たわるオグナ
その体をパクりと咥えた獣がビュンと空中に飛び上がる
空中で姿勢を変えると、猛スピードで降下を開始するドネルケバ!
「オグナさーーーーーーーーーん!!!!」
轟くシシカバの咆哮!
ー グサリ!と響く鈍い音
オグナの体から飛び出した
竜を模した屋根飾り
それは、オグナの心臓をやすやすと突き破り
高く教会の屋根に深々と突き刺ささった
『ギャギャギャぁぁぁぁぁアぁぁぁぁぁ!!』
勝鬨の如く!吼える獣!!
【究極生物:ドネルケバ】
〜同じ頃、聖都ヌアダにて〜
「面白い事が起こっている様だね」
金の巻き髪の男がほくそ笑む
「アルト…ゲルババに聖歌隊を向かわせておくれ…」
「御意…」
鳳凰を模した仮面の男が深く頭を下げた。




