その2
〜ゲルババ沼地:シシカバの寝床〜
岩場に出来た横穴の奥から声が聞こえる
「そのオリハルコン探し、良かったら僕にも協力させてもらえませんか?」
ソファーに腰をおろして喋る3人の人影
オグナとエイト、そして知り合ったばかりの青年!
シシカバだ!
寝床だと案内された横穴には、ふかふかのソファーがあり
このソファーが何とも横穴に似つかわしくない。
しかし、それよりもオグナが驚いたのは、この横穴の入り口だった。先程までオグナ達が戦闘をしてた場所の
すぐ隣に入り口は存在していた。
その入り口は、岩に似せた布ような物で隠されいて
シシカバが、入り口の布をぺろっとめくらなければ
絶対に気付く事が出来なかった!
シシカバが布をめくった瞬間には、岩がグニャりと曲がる幻覚でも見せられているのか?と感じた程だ。
近づいて表面を見たが、見た目は岩そのもの
手触りさえも岩肌の感触と同じ物だった
幻覚や幻視の類の魔法の痕跡もなく
ただ岩の性質を持った布が張ってあるだけだった。
初めて見る素材の布にオグナは、
((これも今じゃ、当たり前にある素材なんだろうか?))
と、ジェネレーションギャップを感じていた。
「なぜ?俺たちに協力を?」
オグナの問いにシシカバが少し考える
「君にとって利益があると思えないが」
「……この毒を止めるためです。」
「毒を止める?」
「…このゲルババの毒は全て、あるモンスターが生み出しています。」
シシカバはオグナを見つめながら話を続ける
「ゲルババの中央に位置する、廃都レジーナ・モービー
その廃都に向かって、沼の毒はどんどん濃く強くなります。我々がいる、横穴は、毒の濃度で言うとレベル2と言った所です。さらに奥に進むとレベル3、4と濃くなり、最終地点のレジーナ・モービー城の周囲はレベル5となり、レベル3からは、毒の耐性が無いとまず生きられません」
エイトは話に飽きて来たのかあくびをしている
「この城に、毒を生み出す究極生物『ドネルケバ』が住んでいます。ドネルケバを倒さなければゲルババだけでなく、いずれこの大地そのものが毒に没します。そしてこの世の生物、全てが奴の餌になるでしょう。俺は何としても」
シシカバは膝においた拳を強く握る
「何としても…ドネルケバを、この手で…」
そんなシシカバにオグナが質問をぶつける
「その生物を避けて、城からオリハルコンを持ち帰る事は出来ないのか?」
間髪入れずにシシカバが「出来ません」と否定する
「レベル5ではドネルケバ以外の生物は、生息はおろか、足を踏み入る事も出来ません。レベル5の目安となる、城の城壁を超えたが最後、命の保証ありません。奴は城壁を超えてくる物に必ず反応します。」
「今までに、踏み越えて帰って来た者は?」
「いません…」
少しの沈黙
「もう一度聞くが、何故、俺たちに協力を?」
「あなた達となら、もしや…と」
「勝算は?」
「わかりません」
「わからないのに、城に向かうんですか?」
「それは….」
「これが罠で、君がその究極生物の仲間で、人間を誑かす悪い魔物だっら」
「そうだったとしても、今は信じてもらうしかしありません。あなた達の強さが今の僕には必要なんです。
だから、僕に協力させて…いや…協力して下さい!お願いします。」
シシカバは大きく頭を下げる
「最後に、何故そうまでして、ドネルケバを倒したいのですか?」
「………………」
シシカバは下を向いたまま
「それは……僕の……使命だからです」
と、答えた。
2人の旅人に本心はまだ伝えられない…けれどもこれが
今のシシカバの精一杯だった。
「わかりました、行きましょう!一緒に」
そのオグナの答えに
「ありがとうございます!」とシシカバは更に深く頭を下げた。
「んじゃ…明日から、よろしくな〜」
とエイトは気の抜けた挨拶を言うと、オグナの膝の上で眠りについた。
〜次の朝〜
まだ朝靄の煙る沼地を3人の影が駆けて行く
「ひとまずレベル3を目指しましょう」
オグナ達を先導し、先を走るシシカバは恐ろしく強い
飛び掛かる魔物達を立ち所に刃状の腕で斬り伏せて行く
的確に魔物を屠る姿に
連日の連夜、彼が魔物達と昨晩の様に闘っているのが
容易に想像できる。
レベル3に近づくに連れて。ピリピリと皮膚に刺激を感じる様になった。
湿気で髪が、まとまらないのかエイトはどこか不機嫌そうだ。そんなエイトが
「シシカバって、実はスライムなのかな?」
とオグナに質問を投げかける
「どうだろうな、ミートストライムにしては、あの人型は完璧すぎるしな、どちらかと言うと魔族に近いんじゃないか?」
3人は速度を上げて毒沼を走る
すると目の前に20メートルほど盛り上がった大地が見えて来た。
第1の目的地であるレベル3へとやってきた
〜レベル3のどこか〜
暗い闇の中で何者かが囁く
「おや……珍しく客が来た者だ…」




