表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/38

毒と魔獣と緑のたぬき その1

ポコっポコっと、いたる所から気泡をたてる沼地

膨れ上がったそれから、毒の瘴気が溢れている

そこに緑はなく、骨のように枯れた木々が点在している。


空には鳥とも虫ともわからぬ生物が、輪を描いている

空を舞う生物をワイバーンの群れがを捕食しようと襲いかかる


ギャーギャーと警戒音をたてながらワイバーンに威嚇をする生物

すると沼地が大きな口を開けて、空を目掛けてバクリっと閉じる。


ワイバーンの群れごと、巨大な口で下から飲み込んだのはこの沼地に多く生息するカエル型のモンスターだ


丸々と膨らんだ風船の様な見た目をしたアメンボの型の昆虫達が、食事為に浮上してカエルに近づいて行く

人間の成人男性ほどのアメンボ達がスポイトのような鋭い嘴をニュルリとカエルに突き立てる、

巨大なカエルは舌を伸ばしてアメンボ達を攻撃する、しかし次々に集まるアメンボ達がカエルの体を覆い尽してしまった。


ここはゲルババ沼地、人間界のにおいて最も地獄に近い場所である


その外縁部から少し奥までやって来たオグナ達

この辺りまで来ると、いよいよ人間がいた痕跡が無くなってくる。

それは、過去 オリハルコンを求めてゲルババ沼地を攻略しようとしたであろう者達の痕跡だ。


ゲルババ沼地は奥に進めば進むほど、毒の濃度は濃くなりそれに比例するようにモンスターも強くなる


目指す廃都レジーナ・モービーまで、4分の1ほど来た所だ


外縁部では見かける事の出来たゴブリンなどの見慣れたモンスター達も随分と減ってきた、

そのかわりに、歩くキノコや大型昆虫この辺りの毒に順応出来た一風変わった見た目のクリーチャーが目に付く様になった。


早朝に出発したにも関わらず、日は傾き、だんだんと夕闇が迫って来ている

屈強なオグナ達も、泥に足を取られ思う様に前に進めていないのが現状だ。


腰までとは言わないものの、膝の上 太ももの中央ぐらいまで泥に浸かっている


今日は、このまま進むより、野営の準備をしようと

適当な場所を探す2人


すると、ちょうどいい所に地面から盛り上がった岩場を見つけた。

その岩場に四つん這いになって這い上がると、

大の字に寝転がるエイト 慣れない沼地に、かなり参った様子だ。


もう少し上の方に登ろうと促すオグナに、エイトはただをこねる


「無理!今日はもう動きたくない!」

「来なさい」

「やーだ!無理!ダーリン引っ張って」

「はいはい」


仰向けに寝転がるエイトの両腕を掴んで、オグナはズルズルとエイトを引きずって斜面を登っていく

泥で濡れた衣服で岩場に線が出来る


それから、一刻ほど

日もかなり落ちて気温も下がってきた。

沼地は夜は寒い


オグナ達はサラマンダーから採取した魔石で暖を取っている。


火を起こすのが難しい、湿気の多い場所などを探索する際に、冒険者が良く行う暖の取り方だ

この応用で雪国などでは、小さな魔石をブーツに仕込み凍傷などを防いでいる、また、濡れた衣服の乾燥にも役立つ

なお、この暖の取り方には違う利点も存在する


休憩しているオグナの目に、

「火?」

遠く灯りが見えた、その声にエイトが

「どうしたの?ダーリン?」

と顔を向ける


冒険者だろうか?

「クソ!行くぞエイト!」

火の方向を見つめながら、ムクッと立ち上がるオグナ

「え?ちょっと!待って」

とエイトも立ち上がり、2人は斜面を下っていく

すると遠く、火のあった方向からギャーーーー!と悲鳴が聞こえた

「間に合うか?」と、こぼしたオグナ!その場でグッと身体を屈め、一足飛びに声の方向に飛び出した。


野営を敷く際に、火を起こすのが一般的だ

暖を取ったり、調理をしたり、野生動物への威嚇として役立つ。しかし反面、火の灯りを遮る物がない、見通しの良い平地などでは、モンスターやクリーチャー、野党などに居場所を知らせる、格好の目印になってしまう。


その事を理解しているのか、冒険を重ねる者ほど

不要な焚き火は行わず、火の属性を持つ魔石を利用する




〜時は少し戻り、日が傾き始めた頃〜



青年は1人、いつもの様に火の準備を始めた。


屈伸や開脚をしながら全身のストレッチを丁寧に行う

「よし!」と声をあげると、足元に用意した木材に火の魔法を放つ


次第に大きく燃え上がる火は、目印ように煌々と夜の闇を照らす。


その光に誘われて、周囲に魔物の気配が近寄ってくる


最初に飛び出したのはアメンボ型の魔物

その攻撃をひらりとかわした青年は、すれ違いざま!

スッと右手を払う。青年を飛び越したアメンボの体は空中で賽の目状に細切れになる。


次に忍び寄ってきたのは

5匹ほどの白いサル型の魔物で、連携を取りながら集団で襲いかかってくる。


しかし青年は、それらの攻撃をするすると、かわしながら

涼しい顔で反撃を行う!猿達の体は既に、縦や横に切断されている。

群れのボスだろうか、背後に控えていた一回り大きな猿が

怒りもあらわに青年に飛びかかった


辺りに鮮血が飛び散る!


両の手を肩口まで縦に切り裂かれたボス猿が

痛みと恐怖で「ギャーーーーーーー!!」と

人間様に大きな悲鳴をあげると、猿の首は ぬかるんだ地面にぽとりと落ちた。


魔物達の血の匂いに誘われて、

毒沼の中から大きな背びれが現れた

姿こそ見えないが、泳ぐ魔物は、その背びれのサイズからして全長10メートルはあろうか


それがザバンッと沼の中から踊り出た


見立て通りの巨大な体、その開いた口元には

コノギリの様に凶悪な牙がずらりと並んでいる


青年がグッと腰を低く構えた!次の瞬間


ひどく大きな音をたてながら

バコンッ!!!!!!と

サメ型魔物の胴体は、曲がってはいけない方向に

くの字に折れ曲がり、明後日の方向に吹っ飛んで行く!


「えっ?人?」と弾き飛ばし存在を確認した青年は驚くばかりだ


ぽかんと口を開ける青年!

助けに駆けつけたのはオグナだ!


不思議そうな顔でこちらを見ている青年、

その表現にオグナの頭には、大きなクエスチョンマークが浮かぶ。


よく見れば青年の足元には魔物の遺体が散乱している。

先ほど聞こえた悲鳴の正体を、なんとな〜くオグナは理解する。


なんとも言えない空気が2人の間に流れ


「………」

「あ、あれ?ピンチじゃなかった………?」

「…え?あっ……はい……」

小さめの声で、控え目に青年が頷く


そこへ先程よりもさらに巨大なサメの魔物が襲いかかろうと飛び出して来た!!!


すると、バチャッと鈍い音と共に

サメのお腹が内蔵をぶち撒けながら破裂する!

ボトボトボトボトッと臓物の雨

全身を濡らすオグナと青年


「おりゃーーーー!!」

全身に迸る魔力を纏いながら、

魔物の体を突き抜けて来たのはエイトだ


「ダーリンお待たせ!」と可愛らしい笑顔をみせる


「おぅ…うん…ありがとう…すごい…助かった。」

べったりと顔にへばり付いた肉片を片手でぬぐいながら

オグナはため息混じりのお礼を言う


「…あ…あのー?」

と言う青年の声を遮り


「伏せな兄ぃちゃん!」とエイトが吠える

両手を固く握り締めながら、体の正面でバチンッと

拳を合わせる!青年が頭を下げたのも束の間

青年の後方、背後の空間が、まるで本でも閉じた様に

左右から、沼も魔物も飲み込んで消失する。


広範囲の沼がすっかり無くなっている

真空状態になった中央に向かって、強烈な風が吹く。

沼だけではなく、底の地面までが深く無くっており

出来たくぼみに、周りからゆっくりと泥が流れ込んで行く。


先程、飛び散ったサメの血しぶきで火はすっかり消えている、エイト放った魔法のせいか、辺りから魔物の気配が消えている


「よ!兄ちゃん、怪我ぁねぇか?」

片方の眉を上げながら

どこか得意げにエイトが青年に話しかける


「あの?あなた達は?」

と、改めてオグナとエイトに話しかける青年


「すげー悲鳴だったから、ダーリンと私で助けに来たぜ」

「そのー…エイト悪い、俺の早とちりだったわ、悲鳴はこの人のじゃなかったみたい」

オグナは足元の残骸達をみやる


サメの魔物の臓物でわかりにくいが、それ以外の

魔物の死体も転がっている


「ふーん」とエイトも周りを見渡す


「えっとー、俺はオグナ、それに連れのエイトです」

と少し気まずそうに青年に自己紹介をするオグナ


「修行のお邪魔をしてしまった様で、申し訳ない」

魔物の死体と、夜営の道具もその様子もない所を見て

オグナはこの青年が、魔物をおびき寄せる為に火を起こしたと理解した。

オグナもシドウでの修行中、似た様な事を行なった記憶がある


「いえ、邪魔などではありません、むしろ駆けつけていただきありがとうございました。」


爽やかに返事を返してくれた青年が続ける


「オレはシシカバ、このゲルババに住む者です」

ライムグリーンの髪に切れ長の瞳、

武器や防具などは付けておらず、

袖のない両肩の出た上着に、足元をしぼった太めのパンツ姿。恐ろしい軽装な青年は、衣装のせいか髪の色がより明るく見える


(…ん?シシカバ?どっかで聞いた様な……)

と、オグナは内心、小首を傾げる


「この辺りに人が住んでいたのですね」

「まさか、ゲルババに人間は1人もいませんよ」

ニコッと笑うシシカバは、まるで『またまたご冗談を』とでも言うような表情だ


すると、猿の死体の方で、もぞっと何かが動いた。


ードス!!


音の方向オグナが目をやると


上半身だけの猿がこちらに腕を伸ばして絶命している。

猿は、開いた口から鋭利な刃物で貫かれている

その刃物は長く伸びおり、絶命を確認したのか

シュルシュルっと縮んで行く

その刃物が戻る先、そこにいるのは、青年シシカバ


刃物は、みるみる人の腕の形に変わっていく

それは、シシカバの左肩から生えた、もう一本の腕

刃物の形状から完全に人の腕の形に戻ると、

二本に分かれた腕は、再び一本にまとまる。


「ここじゃ、人間は生きて行けませんから」

青年は爽やかな笑顔だ



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ