ようこそ!始まりの街 アン・ファング その1
「イャッホーーーーーー♪♪♪」
平原を猛スピードで駆けていく1台の乗り物
風を切り、大地を颯爽する鉄の馬
《ゴーレム:馬韋駆・スレイプニル モデル》
その姿は、さながら陸上の戦闘機だ!!!
_________【ゴーレム:馬韋駆】_________
馬型に製造された、特殊な魔動人形で
主に運搬や移動手段として用いられている。
平地などは2輪形態、山岳地帯など走行の難しい場所は馬の形の歩行形態に姿を変えて、どんな道も進める。
移動に特化したゴーレムだ!
毎年の砂漠の超交易都市グレイト・ウォールでは、
大きな馬韋駆レースが開催され人気を博している
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風になびく長い髪、髪は日の光を受けて虹の様にキラキラと輝く、手綱を握るのは美しい女性
人造人間:実験体28号
「ふぅーー!!最高!!」
楽しそうな28号と、その後に腰を掛けるオグナ。
2人はオグナことエウロンの故郷のマリオンに向けて
馬韋駆を走らせている!
このゴーレムはDr.アリマの研究所から拝借した一品だ!
Dr.アリマとの戦闘後、研究所破壊のためアリマいた洞窟に向かった2人は、そこで休眠状態で放置されたこのゴーレムを発見した
神獣・スレイプニルの骨と心臓から製造されたゴーレムは
そのパワフル過ぎる馬力から、作ったのは良いものの
人間時代のアリマでは、乗りこなすことが出来なかったようだ。
さらにスピードを上げて、馬韋駆は進む!
程なくすると、街に近付いたのか、太い街道に出る事が出来た。
街道には、多くの人が行き交っており
すれ違う馬車や旅の人々は、物珍しい目で馬韋駆を見つめる
ー スゲェ!!
ー やっぱシビれるな
ー 俺もゴーレムにするかぁ!
ー ママ、あれ欲しい
28号は、聞こえて来る会話が嬉しいのか、誇らしげな表情だ。
そんな風に走っていると目の前に大きな街の外壁が見えて来た
「おいおい…嘘だろ!?」驚くオグナの顔!
オグナの目に飛び込んでくる街の看板
《ようこそ!四英神 結成の街【アン・ファング】へ !》
「でかくなったなぁ〜!!」驚嘆の声が漏れる
街の前には門に向かう長蛇の列が出来ている
オグナが驚くのも無理は無い
その昔、まだ前世エウロンの時代にこの町にいた頃とは比べ物にならない程【アン・ファング】は発展をしている!
(どんだけ、発展してんだよ…)
記憶との解離に、またとんでもないジェネレーションギャップを感じるオグナ
2人は並ぶ人々を横目に馬韋駆をゆっくりと走らせる
「なんだ、祭りでもやんのかなぁ?」と
28号が不思議そうに列を見ていると、
向こうの方から門番らしき男が走ってくる
「おい!おい!困るよ!並んでもらわなきゃ!それに町中はゴーレムでの走行は禁止だよ!とっとと変形させてくれ!」
オーバーな程しっしっと手を払いながら、指示を出す門番
「あ?!」
「やめなさい!!!!!!!」
なんだテメェと続けようとした28号の頭を棒でコツリ!とツッコミを入れるオグナ
いてぇ〜〜と騒ぐ28号を尻目に、
「すいません!並び直します…」と門番に挨拶すると
歩行モードに変形させてゴーレムの手綱を手に取り道を引き返す。
ゴーレムの背中から28号が声をかける
「えー戻るの!?行っちゃおうぜ!」
「だーめ!」
「えー!なんでー」不機嫌そうな28号の声
「良いんだよ!別に急いでる訳じゃねーんだから」
列の最後尾に向かう途中、大声で文句を言う28号と
馬形ゴーレムの珍しいさから、かなりの注目を集めた
列に並んでから1時間程経過しただろうか?
ようやくオグナ達も街に入る番が回って来る
「立派な馬韋駆だなぁ」
門番の1人が関心の声をあげる
「じゃあ旅券を見せてくれ」と門番が続ける
「旅券?」頭をひねる28号
「あぁコレを」とオグナは懐から1枚の羊皮紙を取り出す
イスリールを出発する際に、イスリール王が用意してくれた旅券だ
「コレは?!どこで手に入れた?!」と
旅券を見るや否や、顔色を変え驚いた様子の門番
オグナ達の頭に大きなクエスチョンマークが浮かぶ
「身元を改めてさせてもらう」
数人の門番がぞろぞろと集まり道を塞ぐ
「あ?なんだ?」28号の顔に怒りが見て取れる
「やめとけ!」とオグナ
「わかった、調べを受ける…でどうすればいい?」
「こちらへまいれ!」
後から来た門番がオグナからゴーレムの手綱を受け取ろうとすると!
ヒヒーーン!!!とゴーレムは棹立ちになり嘶いてしまう
「ヒィ!!!」っと恐怖の声をあげる門番
一斉に皆、槍や剣をオグナ達に向ける!
どう!どう!とゴーレムを鎮めるオグナ
「すまない、暴れるつもりはない」
門番達は警戒の姿勢をとったままだ
「お前らキライだってさ」と不貞腐れ顔の28号
「俺が連れていくよ…あんた達の力じゃ制御出来ないからな」
「はっ!始めからそう言っとけ!!!」
尻餅をついた門番の声は裏返っていてなんとも間抜けな声だ
門の横を通り、狭い一室に案内されるオグナ達
普段は門番達の詰所なのだろうか
審査室としては幾分か手狭だ。
30分程オグナ達が部屋の中で待機をしていると
フルプレートの甲冑を身に付けた三名の騎士が入ってきた。
その中の1人、ひときわ細かな装飾の施された甲冑を着た女性が口を開く
「イスリールから来たと言うのはお前達か?」
短く切られた髪と太い首、冷淡な声は
彼女が騎士として強く生きて来た事を物語っている
「は!この者達がそうであります!!」
オグナ達が答える前に、脇に控えた門番が背筋を伸ばして返答する
「お前には、聞いていない!」
「はっ!失礼しました!!」
さらに背筋をピシッと伸ばす門番
「お前達、この旅券をどこで手に入れた?」
女性の声には、凄味が効いている
「縁あってイスリール王に頂いたもですが…」
答えたオグナの顔はどこか険しい
訝しむ様に女騎士が続ける
「お前達の様な身なりの者が?イスリール王から直々に?」
「だったら何だってんだ!!あん?」
「やめとけ!話が長くなる!!」
今にも怒りが爆発しそうな睨みを効かせ
絡む28号をオグナが諌める
「連れが失礼しました。……確かにイスリール王から頂いた旅券でございます。その羊皮紙には王家の家紋と魔法印が押されおりますので、複製などの不正行為は出来ない事がお解りかと思われますが」
「確かにお前の言う通りだが、何処かで奪えば話は別だ」
女騎士は更に眼光を鋭くする
「私のダーリンに文句でもあんのかい?」
「いいから、静かにしとけって、あと…その…ダーリンって言うのやめてくれ…特に人前では」
「だって!ダーリンはダーリンだも!」
「うん、そうだね…わかったから、今は静かにしてなさい」
オグナは困り顔だ
「すいません……旅券は正真正銘のイスリール王から頂いた旅券です、疑う所があればイスリール王家や神官のユッケ殿にお尋ね頂ければと」
粛々とオグナは答える
「そうだな、そうしよう!ユッケ殿をここへ!!」
扉が開き、連れて来られる1人の男
『ここへ 』と言う言葉に驚くオグナの目に
見覚えのある顔が写る。
しかし!
見覚えがあるからこそ、オグナの驚きは更に倍増する事となる
入室して来たユッケの体には、あるはずの手足が無くなり
その代わりに木製の義手と義足が付けられている。
オグナの姿を見るや否や
「オグナ殿!!!!!」
声を張り上げ、腰掛けた車椅子から立ち上がるユッケ、
まだ慣れない義足は途端にバランスを崩して
前のめりにバタリと倒れ込んでしまう!!
「ユッケさん!!!!」
たまらず駈寄るオグナは、ユッケの細くなった体を支え起こした。
「オグナ殿よくぞ、ご無事で…」
消え入りそうに震えるユッケの声
「ユッケさん!一体何が…何があったのですか?」
困惑するオグナの声に割って入る様に女騎士が口を開く
「それは私が答えよう、とにかく座らせてやれ」
それぞが席に着くと
「端的に言うと、お前達が提示した この旅券は使えない」
女騎士の話を食い入る様に聞くオグナ
「使え無いと言うよりも、旅券自体が効力を持たないのだ。」
それは?と聞こうとしたオグナに手のひらを向けて
オグナの発言を制し、言葉を続ける女騎士
「この旅券を発行した、イスリール王国はもう存在しない…」
えっ!と驚くオグナ、
女騎士の発言に悔しさの涙を流しユッケが
うわーっと泣き崩れる
「私に、もっと、もっと力があれば…姫様だけでも…」
憚りも無く涙するユッケに女騎士が懐からはハンカチを取り出し手渡す
突然の事に言葉が出ないオグナ
「王族はおろか…国民全てが殺されていた……」
表情暗く女騎士は続ける
「一か月程前か…聖都ヌアダより報せが届いてな…『ボルドー国がイスリールへ侵攻を行った』と。そこで聖都よりもイスリールに近い、我々アン・ファングの騎士隊から斥候部隊を派遣するよう通達があった…斥候に参加した私達は…」
その時の事を思い出したのか、冷淡な顔に恐怖や怒りの色が浮かぶ
「私達は…目を疑った…平和でしられるイスリールは壊滅状態だった…有名な塔があるはずの場所には巨大な岩がクレーターを作り…その一帯は激しい戦闘が行われたのか、えぐられた地面や大きな亀裂が至る所に走っていた。
聖都からの事前情報では、恐ろしい事にボルドーが【屍の龍】を召喚したそうだ。
そのせいだろうな、地形もすっかり変わってしまっていた、事件当時の状況を考えただけでも恐ろしい。
街に入ると…我々の驚きは恐怖に変わった。無残に殺された住民達がそこら中に転がっていた、中にはアンデッド化した者までおり、捜索は極めて難航した…ようやくイスリール城へとたどり着いたが…城の中は…より凄惨な状態だった。
抵抗したであろう兵隊達の遺体は、原型さえわからぬ程、壊され、引き出され内臓が床や壁に飛び散っていた。」
ユッケは嗚咽混じりに泣き続けている
「玉座の間には大きな横穴が空いていて、それが国の外壁まで続いていた。もう生き残りはいないと思ったが…部下の1人が瀕死のユッケ殿を瓦礫の下から発見したのだ…ボルドーはその後駆けつけた聖都の部隊によって解体…一か月の間に2つの国が消えた訳だ」
「そうだったのですか…」
話を聞いたオグナの頭には2つの考えが浮かんでいた
1つは、イスリールでオグナが行った2回の戦闘の跡も今回の件として認識されている事
もう1つは……
「アレはボルドーではありません!もっと別の!」
ユッケが声を荒げる
「もっと別の!どこかの勢力が、ボルドーの仕業に見せかけて我々を攻撃したのです!!!!ゴホっ!」
傷が開いたのか吐血するユッケ
「ユッケ殿を医務室へ!!」
女騎士の指示で運ばれていくユッケ
残されたオグナ達に女騎士が続ける
「ユッケ殿が生き残っていて良かったな。お前達の身元確認は取れた。旅券も本物として処理しよう…しかしな、このままではどこへも行けまい、アン・ファングで新たな旅券を発行してやる。出立の前にまたココへ来い。」
「…わかりました」
答えるオグナの声は暗い
「あと、お前達の旅の目的は?まさか観光ではあるまい?」
「いえ…」
誰かが近づいたのか
ヒヒーーン!と外からゴーレムの声が聞こえる
兵舎の窓から外を見つめる女騎士
「あの馬韋駆はお前達の物か?」
「ええ、」
「立派なゴーレムだ、お前達もグレイト・ウォールのレースに参加するのか?」
「レース!?」嬉しそうに反応する28号
「いえ、我々はマリオンに向かっております」
「ほう巡礼の旅だったか、見た目によらず信心深いのだな…この時期にゴーレムでやって来る者は大半がレース参加だからな……わかった、明日までに旅券を用意しておく。そうだ…気が向いたらグレイト・ウォールまで足を伸ばしてみるといい、あのレースは中々見ものだぞ!さぁもう行っていいぞ!ようこそアン・ファングへ!自慢の街だゆっくりして行ってくれ」
…
…
…
門番達の兵舎をあとに、宿を探して歩くオグナ達
オグナは上の空で歩いている。
先程のユッケの姿と発言が頭の中をぐるぐる、ぐるぐると渦巻いていた。
(なぜ、イスリールとボルドーが…誰の差し金だ?…情報が少ないな…考えても仕方ない、落ち着いたら一度ユッケ殿にあってみるか…)
すると後ろから大きな声で
「ちょっと待ったー!!」と声がかかる
振り返った2人、視線の先には誰もいない
「こっちだ!こっちだ!!」
声の方向に視線を下げると、けむくじゃらで背の低い男が立っていた。その風体からドワーフと一目でわかる
「おいおいおい!!!こいつは間違いねぇ !ちょっとそのゴーレム見ても良いか??」
ドワーフは目を爛々と輝せている!
まるで、憧れのオモチャを眺める少年のようだ
ゴーレムを褒められたのが嬉しいのか28号は
「おっ?なんだオッサン?この子が気になんのかい?」
と、上機嫌で返す
「おおよ!おおよ!気になるねぇ!気になっちまって仕方がねぇや!」
ゴーレムの周りをぐるっと一周すると
「おいおいおいおいコイツぁー!クーーーーー!…とんでもねぇ!とんでもねぇ大バカ野郎がいたもんだ、間違いねぇ!本物のスレイプニルで造ってやがる!!す、すまねぇが変形させてくれねぇか?」
中々の大声で興奮気味に話すドワーフ
「街の中って…」オグナが困惑の声あげると
「良いから!良いから!走らせなきゃ、問題事ねぇ」
楽しそうなドワーフと、こちらも楽しそうな28号
「いいぜオッサン!」
28号が手綱に魔力を送ると
「くぁーーーーーー!!いかすねぇー!おい!!!!」
二輪形態に変形したゴーレムにさらに大声になるドワーフ
一度、ごくりっと唾を飲み
「スゲェ…魔力炉音だな!頼む、姉ぇちゃん、ちょっと魔力炉ふかしてくれ!」
ふーん!と荒い鼻息を出すドワーフ
「よっしゃ!良く聞いとけよ!!!」
さらに手綱に魔力を送る28号
ギャーーーン!と、けたたましい音が街に響く!
先程からドワーフが大声で話すものだから、遠巻きに見ていた街の人達もその魔力炉の音にビクっと驚いたリアクションをとる
「フーーーーー!!最ッッッ高じゃねぇか!!」
音を聞いたドワーフはあまりの興奮で今にも踊り出しそうだ
「おっしゃ!気に入った!姉ぇちゃん達ちょっとウチに来な!」
「は?」っと驚いた顔のオグナ!
「悪りぃ様にはしねぇから俺の店に来な!詳しくはそっからだ!」
「わかった!」と快く返事を返す28号
「行くよダーリン!!」とドワーフに着いて行ってしまう
おいおい!と呼び止めようしたオグナであったが…
「ったく!……せめて馬韋駆は押してけよー!!」
とハイテンションの2人に振り回されるオグナであった




