出発、対決、盗賊団・その1
大陸西部から海沿いの街道を南へ進むオグナ
彼は今トラブルの真っ最中です
街と街、村と村を結ぶ街道に
もちろんトイレなど無く、道を外れて用を足す
男は気楽な行為だが、旅慣れない女性には少し酷である
((((((((ぎょぇええええええええ!!!!))))))))
とオグナと、もう1人
シスター・コーラ
彼女は、一週間ぶりに来た便意を逃すまいと、街道から離れ
今まさに、野外プレイを決め込んでいたのです。
固まる思考「・・・」
5分にも10分にも思える、永遠の数秒
「…そ……の……あ……の……失礼しました」
と、疾風の如くオグナは森に消えた
オグナが去って、1秒、2秒、3秒、4秒
「イヤーーーーーーーー!!!!!!!!」
遅れてやって来た恥じらいと驚き、
諸々の感情の入り混じった悲鳴。
彼女の甲高い叫び声が森にこだました。
森を走るオグナの額に、どっと溢れるあぶら汗
「…よし、忘れよう」悲鳴を背中に聞きながら
気を取直して、晩飯の鹿の跡を追った。
村や街の他に、長い街道や道の途中に郷と呼ばれる
小さなコミュニティがある
元は、小さな人里や山小屋などがあった所に旅人などが立寄り、そのうち宿屋や馬屋、武器屋等の商いが起こり、旅の休憩所として郷と呼ばれるようになった場所だ
郷の中には、村や町よりも大きな賑わいを見せる所もあり
その最たるは、今では国として認められた
砂漠の超交易都市【グレイト・ウォール】が有名である
そんな小さな郷の宿屋「風船の蛙亭」にて
「親父さん、どこでも良いから部屋、空いてる?」
「ええ!空いてますよ!素泊まりだと一晩20銅貨です。」
※1銅貨=100円 ほど
「ありがとう、泊まるよ」
「こちらに記帳願います。」
「あと、良かったら…この肉でスープか、なんか作ってくれる?」
「こりゃ立派な鹿だ!えぇ母ちゃんに作らせてますよ。おーい!!!母ちゃん!これ持ってくの手伝っておくれ!少々お待ち下さいね。いかがでしょう?お代を貰いますが、残った肉は切り分けしましょうか?」
「悪いね、分ける肉は少しで良いよ。後は女将さんと食べて」
「これは有り難い、遠慮なく頂戴いたします。おーい!母ちゃん!!…出発なさる頃には、包んでおきますね。」
ころころと変わる店主の表情
「助かるよ、いくらになる?」
「肉もいただけますので、あと6銅貨で結構です」
「ありがとう。」
「お部屋は2階の1番手前でございます。お食事が出来たら呼びに参ります。おい!母ちゃん、早くしな!」
「聞こえてるよさっきから!それぐらいやりなよ…あら!お客さん、ゆっくり泊まって行って下さいまし…ほれ!そっち持ちな!」
女将さんの表情も身内とお客に合わせて、ころころと変わる、どう見ても店のオヤジより、女将さんの方が腕っぷしが強そうだ
それから2時ほど経つと一階の食堂から腹の虫を刺激する
食事の良〜い匂いが宿屋の中に漂ってくる
【鹿の肉団子と野菜たっぷりピリ辛スープ】
「ップハァー!うまい!」
疲れが吹っ飛ぶように美味い食事だ
煮込んだ野菜の甘みの後に、ピリリと喉にやってくる
辛味の丁度いい刺激、鹿肉は団子状に処理されており
ほくほくと舌の上で楽しんでいると、赤身の美味さが伝わってくる。
女将さんの料理の腕はピカイチとみえる
「どうですダンナ!?美味でしょ?」と柔かな店主
「ええ!最高です!」
「で…ダンナは、これからどちらまで?」
「このまま南に向かって1度、産まれ故郷に行ってみようかと。長く帰ってませんでしたから(1500年ぐらい…)」
「あぁ里帰りですか?わたしは長らく帰ってないねぇ…たまにはジジババの墓参りでも行かねぇとなぁ。そうだダンナ、南に行くなら、あちらの馬車に乗せてってもらったらどうです?」
店主が目をやる先に4人組の男女
「なんでも、聖都帰りのシスターさんとお付きの方なんですがね。用心棒で雇ってた冒険者がこっから先の代金はまだ貰ってねぇってゴネて帰ったらしくてね。
あの立派な鹿を仕留めたダンナなら腕も立つと思いますしどうですかねぁ一緒に?それにこの先は野盗もウロウロしてますから、1人はお勧めしませんよ。」
オグナも顔をそっちに向ける
4人うちの1人のシスターに!
「…あ!」と何かを思い出すオグナ
おもむろに束ねていた髪をぼどいて
バサバサっと頭を描く
「どうたんです?もしや、お知り合いで?」
「おしり!?」動揺した声を上げるオグナ
「………いえ、見た事もありません、赤の他人です!!」
一瞬声が大きくなったオグナの方を見る4人。
オグナは、そそくさとスープを口にかき込んでいる
4人は自分達のテーブルに視線を戻し
「やっぱり冒険者を雇った方がいいですよ」
真面目そうな青年が話を続ける
「確かに、野盗にでも襲われれば、いくら拙僧の斧槍でも必ず守り切れるとは申し上げ難い。」
ヒゲを伸ばした恰幅の良い僧兵風の中年男性
「俺とジルガのオッサンと…ん〜あと2人、最低1人は欲しいわなぁ〜」
軽口を叩く男は狩人風の軽装だ
「しかし路銀は最低限しかありません」
困り顔のシスター。
「今日のように!草むらから飛び出したのが鹿ならば良いですが」
真面目そうな青年の発言に顔を真っ赤にするシスター
「鹿です!絶対、鹿です!!!」
「…えぇ、鹿ならいいのですが、モンスターや野盗ならばコーラ様のお命をお守り出来ません。」
「生理現象とは言え、あまり奥まで行かれますな」
「…はい」
「なぁ!あの、兄ちゃんならどうよ?」
軽装の男がクイッと顎を指す
「何を急に!どんな方かもわかりません。それに腕が立つか!」
「いや、ありゃ強いヤツの肉のつき方だぜ!」
「うむ確かによく見れば体にかなりの古傷がありますな」
「誘ってみようや!」
「しかし、悪い輩やもしれません!」
「アフルレッドさん!!」ぴしゃりとコーラ
「人をそのように疑いを持って見ては、なりません」
「これは、申し訳ごさません。コーラ様」
「コーラ殿、アルフレッド殿も必死で貴殿を守りたいのです。」
「それは、理解しております。しかし他人を悪く言ってはなりません」
はい、とアルフレッドは頭を下げる
「一度、話しだけでもしては、いかがかな?」
「まっ!やべぇ奴なら俺達で何とかすれば良いさ」
「では、私が話を聞いてみます」
オグナのテーブルにアルフレッドがやってくる。
「あの…急なお声掛けにて、失礼をいたします!
私の名はアルフレッド・ドット、旅をしてる者です。
今お話してもよろしいでしょうか?」
「ああー!お客さん丁度いい、コッチもアンタらの話をしてたんだよ」
「私たちの?」
「いやね、このダンナがね。里帰りの途中らしくって、南に向かうって言うからさ、こっから先の街道は最近物騒だからアンタ達の馬車に乗せてってもらえば良いって、言ってたんだ!」
「ホントですか!?」
「…ええ」
「それなら話しが早い、実は私たちも旅の同行者を探しておりまして、宜しければけ…いかがでしょう?それに中々の手練れとお見受けします」
「いえ、私は…」
「国に着けば、お代は必ずお渡しします。」
そこにスッとやって来るシスター
「私はコーラ・コーラと申します、私たちは祈りの旅の帰りの者、どうかそのお力をお貸しいただけませんでしょうか?」
オグナがシスターを見つめる、その微笑んだ顔は、かなりの美人と言っていい、綺麗より可愛いらしい印象だ
(この人…)
「決して無理にとは申しません」
(うん…やっぱ気付いてないっぽいな…じゃあ)
「私も方向は一緒なので、よろしくお願いします。」
「ありがとうございます!」頭を下げる青年
「あぁ四英神に感謝いたします」
「それではこちらに!仲間を紹介します!」
「いえ、ニックさん・ジルガさんここに」
「へ〜い」と気抜けた返事を返すのはニックと呼ばれた男
「こちらは私の旅の従者で、僧兵のジルガとニック」
それぞれに一礼をする
ジルガはぐんぐんとオグナの手を取り、力強い握手をする
「それから、アルフレッドです。えっと…失礼しました、まだお名前も聞いていないのにこちらばかり」
「いえいえ、私はオグナ。シドウのオグナと申します」
「シドウ…聞かない土地ですな」
「どの辺だい?」
「小さな集落だったのでご存知無いかもしれません」
「これは、こちらが不勉強で申し訳ない」
「で、兄さん!腕は立つのかい?」
「やめんかニック!」ジルガはポコっと頭をこつく
「すいません!オグナさん!」謝るアルフレッド
「いえ、散々故郷で鍛えましたから、自分の身ぐらいは守れます。」
「それは頼もしい限りです!」嬉しそうなシスター
「まぁ、1人で旅を出来るんだ、当たり前だったよな!
悪い事聞いたな」
「いえ、気にしませんよ。同行者になるんです、強さを知りたいのは当然です」
「うむ、こられから、よろしくお頼み申す!」
「明日の朝、出発です!このテーブルでお待ちしております」
こうしてオグナはシスター・コーラの一行に加わった。




