第九話 編入生挨拶(2)
観閲ありがとうございます。
「あんなに小さな物を真っ二つにだって、どんな腕前だよ……」
「何が意外と簡単に切れるよ。そんな芸当、貴方にしか出来るわけ無いじゃない」
「嘘だろ、魔法って切れるのか? 」
レアンの挨拶を終え、会場は騒然としていた。
誰もが、目の前でレアンが行った神業と言える剣技に驚きを隠せないようだった。
「レアン、魔法って切れるんですね」
私もその一人だった。
レアンは少し照れくさそうに笑った。
「そんなに大したことじゃねぇよ、俺は動きを見切ってからじゃないと切れないし、ラヴの魔法の方がよっぽど凄い」
大したことじゃないって、君は魔法を無力化出来る可能性が有るんだよ。
君はその凄さにいまいち気付いていないようだけれど。
面白いね、君は。
「ねぇ、レアン。私は今、君と居ると面白い事が起きそうだと思いました」
レアンは一瞬、目を丸くすると、笑いながら言った。
「奇遇だな。俺もお前と会ったときにそうおもったよ」
ーーーーーーー十分後ーーー
レアンの挨拶によってざわついたホールが落ち着き、私の挨拶の番になった。
正直、あのレアンの後というのは気が乗らない。
同じ編入生で有るという事だけで、レアンと同じレベルの挨拶を求められるのだから。
「ラヴィウス・ユトア・シロワネアと申します。編入試験では魔法科を選択していました。
よろしくお願いします。
では、始めます」
なるべく無難な言葉を選び、魔力を高める。後ろで一つに括った髪を解き、目を瞑った。
髪と瞳が魔力に染まり、壇上からの情景がスローに見える。
魔力を練り上げ、思い浮かべるのは氷の槍と蛇。
水が蛇と槍の形を取り凍っていく。完全に魔法が発動した。
ここからだ。私は感覚を研ぎ澄ませ、少しずつ魔力を二つの魔法に注ぎ込む。
魔力を注ぎ込むことで、魔方陣を大きくし、手を加えられるようにするのだ。
魔力を注いでいくうちに、二つの魔法は発動した時の逆再生のように溶けていく。
水の形になった、魔法を近づけの魔方陣を重ねた。
最後の仕上げに魔方陣に書き込まれている情報の順番を並べ替え、一つの魔方陣になるように調整した。
全てが終わり、魔法への干渉を辞めると、水になった二つの魔法は一つに凍りつき、竜を形作った。
これは複数の魔法を組み合わせて、他の魔法にする方法だ。
普通に魔法を発動する以上の集中力を求められ、少しでも失敗すれば狂った魔方陣により魔法が暴走する。
まだ不完全であるものの、レアンと同じレベルの技だったと思う。
私はこれを習得するのに四年かかったのだから。
「は………………? 」
「二つの魔法が一つになった? しかも、より威力の大きい魔法に」
「まさか……魔方陣を書き換えたのかよ。魔法の起動中に」
「そんなの、一歩間違えば暴走、間違いなしよ」
振り向くと、レアンが口を開けていた。
「おい、魔方陣を書き換えたのか? しかも、こんな短時間に」
本当はこの技を披露するつもりはなかった。
でも……もう一度生徒の方向を見る。Sクラスの場所で目を見張っている令嬢を見て自然に口角が上がった。…………私を罠にかけてくれた彼を少し見返してやりたかったのだ。
子供っぽい理由だが、壇上から彼を見たときに不意に思いついてしまったその考えを止めることは出来なかった。
ふふ、ざまぁみろというわけだ。
編入生挨拶、私は期待以上の成果を得られたようです。
観閲ありがとうございました。




