第七話 同室者と新たなピンチ
亀進行ですみません…………
観閲ありがとうございます。
合格者発表を確認し、私は早速、寮に向かった。
何故ならば、クロノ・シレイル・グレステラの使用人である、あのオレンジのような赤毛の少女から貰った宿代は昨日の分だけだったからだ。
なんとしてでも今日の寝床を確保しなければならない。
その為には早く寮に入ってしまうのが良いだろう。
寮で寮母の女性から説明を受ける。
全校生徒が暮らす寮には一棟ごとに大浴場、食堂、遊戯室などが有り、どれもクラスのランクによってランク付けされて提供され、それで満足出来無い生徒は別途料金を払ってランクを上げているらしい。
私の部屋は男子寮のSからAクラス棟の最上階の右端の二人部屋。
どんなクラスの生徒でも二人部屋であることは変わらないらしい。
部屋の中に入ると廊下に荷物が積まれていた。
同日の生徒も居るようだ。だが、ここまで片付いていないとなると私と同じ編入生だろう。
たしか、レアン・ディディアンだっただろうか?
「お、ラヴィウス・ユトア・シロワネアだな。俺はレアン・ディディアン、今日からお前の同室だ。
宜しくな」
廊下に積まれた荷物の間から、燃えさかるように紅い髪と、金貨のような黄金色の瞳を持ち、気が強そうな顔立ちをした長身の少年が顔を出した。
彼は魔法科の試験には出ていなかったので、武術に長けているのだろう。
セカンドネームがないと言うことは彼は平民であるはずなのだが、彼の顔立ちは下手な貴族の子息より整っていた。
「初めまして、ラヴィウス・ユトア・シロワネアと申します。これから長いつき合いなのですから、どうぞラヴと呼んでください。
あの、早速で申し訳ないのですが、あの、貴方は平民ですよね」
とても不躾な質問であるという事はわかっていたのだが、つい聞いてしまった。
だというのに、レアンは気分を害した様子も無く両手で自分の頬をさすった。
「あぁ、俺もレアンで良い。
ラヴが平民かどうか迷ったのは、この顔面の事だろう。俺は一応平民でパン屋の息子だよ。
だけど、母ちゃんは貴族の令嬢で父ちゃんは母ちゃんの執事だったからな、ばあちゃんも母ちゃんも美人だし、それに似たって事だろ。
俺が平民であることに変わりはないけどな」
令嬢と執事の子供、明らかに不幸な過去を持っていそうな肩書きであるものの、彼からは不幸な人間特有の陰のような雰囲気は感じられなかった。
幸せなのはわかるが、近年そのような執事との結婚を許した家など有っただろうか?
記憶を辿りながら、もう一度彼の顔をじっと観察し、目に留まる黄金色の瞳。
「あっ、貴方はガードナー伯爵家の『鬼神』ガイレン・シェル・ガードナー様の孫ですか? 」
印象に残る彼の瞳、その色彩に覚えがあったのだ。
ガイレン・シェル・ガードナーは『鬼神』と恐れられ、今も武家の名門ガードナー家の当主を務めている。
私は本人に会ったことはないが、彼はとても印象に残る黄金色の瞳をしていると聞いたことがあった。
そう考えると、ガードナー家は貴族の中でも珍しく恋愛結婚を推奨している家で、彼の子供は全員、恋愛結婚をしていると聞く。
ならば、執事と結婚していてもおかしくは無いだろう。
「わかった? 何だか、じいちゃんの知り合いに会うと必ずバレるんだよなー。
そんなに似てる気はしないんだけどな」
彼は複雑そうな顔で自分の髪を掻き回した。
「それは、そうですよ。
金の瞳は珍しくないですが、貴方とガイレン様のような見事な黄金色は珍しいと思いますよ。
ガイレン様と面識のない私でさえ気づいたのですから、ガイレン様と知り合いの方なら気づかない訳がないですよ」
黄金の瞳と言ったら『鬼神』の代名詞なのだから。
知り合いに気付かれない筈がない。その紅い前髪をのばし、戦う事を辞めたのならば別かもしれないが。
「んで、俺は勝手に右の部屋を使わせて貰ってるが、ラヴは左の部屋で言いか? 」
廊下の荷物を抜けると、なかなか広いリビングに風呂場があり、その奥には個人スペースであろう部屋の扉が見えた。
「問題ないです。どちらの部屋もそこまで変わらないでしょうから」
部屋の中に入り、あまりない荷物を広げる。
暫くすると、リビングからレアンの呼ぶ声がした。
「ラヴ、なんか教科書が届いたぞ。明日から早速授業を受けるらしい。
しかも、明日の朝会で挨拶をするんだと。説明の紙があるから出てこいよ」
扉を開けると、箱の中に授業用の教科書や筆記用具の入った棚が二つに、編入生挨拶と書かれた紙が入っていた。
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編入生挨拶について
まず、編入おめでとう。
早速だが、編入生挨拶についてだ。
例年もそうだが、今年は特に高位貴族や王太子殿下などに憧れて学園に入ってくる生徒が多い。
この場合、その憧れの人物と同じクラスに編入する生徒が誰からも認められる力を持っていないと、虐めや嫌がらせを行い、学園から追い出そうとする生徒が出てくる。
よって、この編入生挨拶だ。
君たち二人にはこの編入生挨拶でぜひとも力を全校生徒に見せつけて欲しい。
宜しく頼んだぞ。
王立学園学園長 ヒロイス・ロティ・パレスエルテ
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これはこれは、編入試験を乗り越え無事に編入出来たと思った途端、新たなピンチが襲ってきたようです。
観閲ありがとうございました。




