エピローグ
「……というわけで、めでたしめでたし」
「おい、この話のどこにめでたい要素があったんだ?」
「何か不満でも?」
話し終えて満足げな妹に意義を唱える。
いつの間にか膝の上に乗って寛いでいた妹は、そんな俺に怪訝な視線を向けてきた。
いろいろと言いたいことはあるが、まずはこれだろう。
「なげーよっ!? もう朝だぞ!?」
話が、長い。
昨夜から続いた妹の長話はノンストップで朝までコース。
途中、何度も寝落ちしかけたものの、その度に耳やら頬をつねられ、起こされた。
貫徹した俺が不満を口にすると。
「あたしだって眠いわよ。もう限界だから、抱っこしてベッドに連れてって」
「自分の足で歩け! それから話はまだ終わってない!!」
舐めたことを抜かす妹に説教開始。
「お前の物語は倫理的にも道徳的にも問題あり過ぎだ!! あと、ちょくちょく俺を貶すような茶々を入れんな!!」
「善だの悪だのうるさいお兄ちゃんに対して問題提起する為に即興で作った物語なんだから当然でしょ?」
何馬鹿なこと言ってんの、みたいな目をされてたじろぐ。
しかも即興とか。
構成に文句言っても仕方ないらしい。
ともかく、このままでは分が悪いと判断して、原点に立ち返ることにする。
「そもそも、俺のプリンとこの話が、何の関係があるんだよ!?」
「だから、あたしが犯した小さくて可愛い悪を許容しなさいってこと」
「許容出来るかっ! いい加減にしろ!!」
怒り心頭で怒鳴る兄に、妹はやれやれと首を振って、仕方なく目を閉じた。
「じゃあ、チューさせてあげるから、これでチャラってことで」
「ふざけんな! 妹とのキスなんかで誰が誤魔化されるかよ!!」
完全に馬鹿にしてやがる。
火に油を並々注がれて兄は爆発。
そんな兄に舌打ちして、妹は物語の内容を引き合いに出して、脅してきた。
「許してくれないなら、世界が滅んじゃうよ?」
一瞬、妹の眼が赤く光った気がした。
驚いて瞬きをすると、そこに居るのはいつも通りの妹であり、甘えてきた。
「ほら、さっさとベッドに連れてって」
「たくっ……わかったよ」
渋々、命令に従うことに。
別に、世界が滅ぶことを危惧したわけじゃない。
さっさと妹を寝かしつけて、俺はすることがあった。
「ありがと、お兄ちゃん」
「ゆっくり寝てろ」
「お兄ちゃんも、一緒に寝よ?」
お姫様抱っこでベッドに寝かしつけると、甘ったれた妹が誘惑してくる。
その際にまた瞳が赤く染まったような気がしたが、もう惑わされない。
「用があるから、お前は1人で寝てろ」
食っちまったプリンは、もういい。
悪を許容することは、確かに大切だ。
だから特別に許してやる。
だが、このままふて寝して堪るか。
「用って、どこに行くの?」
「ちょっと買い物に、な」
目当ては町一番のお菓子屋さんの数量限定なちょっとお高い美味しいプリン。
それをどうしても食べたかった。
だから買いに行こうとすると。
「お兄ちゃん、愛してる」
部屋から出る間際、愛を囁く魔性の妹。
そう言われると悪い気はしないのだが。
しかし、 間に受けずに、嗜める。
「馬鹿。寝言は寝て言え」
「はーい。大人しく寝て、帰りを待ってるね」
こんな時だけは素直だ。
すぐに寝息を立て始める。
寝顔だけは可愛い妹である。
甘いと思われるかも知れないが、それでも、どうしても、妹を愛しており。
悪を許して良かったと、思えた。
開店前のお菓子屋さんの前に並んで、空を見上げる。
広がる青空と見慣れた街並みは、平和そのものであり、滅ぶ気配はない。
2時間程待って、ようやく営業開始した店で、プリンを買った。
いろいろ悩んだが、二つ買うことに。
「ただいま〜」
「おかえり! お兄ちゃん!」
欠伸を噛み殺しながら帰宅して、滅ぼさずに済んだ平和な世界で、俺は妹と2人、仲良くプリンを食べたのだった。
これにて完結となります。
ご読了、ありがとうございました!




