表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊媒師募集  作者: たまこ
831/1194

第二十章 霊媒師 瀬山 彰司ー95

最後は____


とても呆気の無いものだった。



あれから結局、おさは最期まで意識を取り戻す事はなかった。

固く目を閉じたまま、時折顔を歪ませ、時折小さく何かを言って、それを幾度も繰り返す。

邪悪な表情かおで笑う事も、怒りにまかせ怒声を上げる事も、誰かの魂を喰らおうとする事もなく、頭の蛇も抜け落ちたおさは、皺だらけに枯れ果てた、どこにでもいるただのお爺さんになっていた。


貫く薙刀がおさと地を縫い付けて、僕達はそのまわりを狭く囲んだ。

それぞれの武器を捨てたのは、


『……もう、大きな霊力ちからは必要ないようだ、』


おさの様子に中村さんがそう言ったからだ。

武器を使わず霊力ちからで滅する、みんなはそれに頷いた。


個々によって霊力ちからの色は違うから、おさに向けたたくさんの指先が、赤や青、緑に紫、黄に橙と、まるで小さな百色華ひゃくしょくかを思わせて、キレイだなぁなんて……こんな時だというのに、みんなしてため息をついたんだ。


『お前達、準備はいいか?』


こう聞くのも2回目の中村さんは、みんなの顔を順に視た。


『ああ、いいよ』

『今度こそだな』

『いつでもいいぜ』


聞かれたみんなはバラバラとそれに答え、指先に一層の霊力ちからを込め、カウントダウンを待っていた。


そして……これも2回目、5から下がって0で滅する。

そのカウントが始まった。



『____5、』


本当にこれが最後だ。


『____4、』


瀬山さんと先代は、僕らのすぐ後ろにいる。

2人は手を出さない。

最後まで視守ってくれるんだ、……ああでも、瀬山さんは大丈夫かな、視てて辛くないのかな、それがとても心配だ。


『____3、』


《うぁぁ……》


あ……まただ、またおさが呻き出した。

意識はないはずなんだけど……もしかしたら夢うつつなのかな、

おぼろげに、何かを思い出してるのかな、

それは一体なんだろう?

少し……気になるけど、

だけどもう、それを確かめる術はない、


『____2、』


あ…………まただ、

おさの目、

固く閉じた皺の目から薄っすら水が滲んでる……

あれは涙か……?

それとも……目の錯覚か?

涙とは言い切れないごくごく少量、

僕にはなんとも判断がつかない、


『____1、』


《…………れた……》


……ん? 

おさ……何か言ってる……?

聞こえるか聞こえないかの微かな声だ、

まさかまた油断させて小蛇で噛む気か……?

いや……それはもうないだろう、

あのお爺さんにそんな霊力ちからは残ってない、

放っておいても消えそうだもの……

じゃあ夢を視てるのか……?

寝言……みたいなものなのか……?


《…………れた……まれ……わた……の》


”まれ” ? 

”わた……の” ?

何を言ってるんだ……?

そもそも……意味のある言葉かどうかも分からない、

ただ単に”音”を発してるだけかもしれない、


僕は気にするのをやめようとした、

集中しなくちゃ、カウント0で霊力ちからを発する、

それでおさを滅するんだ……そう思っていたのに、

聞こえてしまった、あれは単なる”音”じゃなかったんだ、


《…………うま……れた……しょうじ……わた……わたしの……むすこ……》


え……?


《……わた……の……だいじ……な……むす……こ》


あ、と思った。

おさは夢の中で80年前に戻ってるんだと、

瀬山さんが生まれた日に戻ってるんだと、

そう思った、


同時、


『____0、』


中村さんのカウント0で、一斉に霊力ちからが放たれた。


男達の真ん中で、霊力ちからのすべてを受けたおさは、ザラザラと砂が零れて流れるように形を崩すと、この世とあの世のその両方から、姿を、存在を消した。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ