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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十章 霊媒師 瀬山 彰司ー93


薙刀が貫通する顔だけのおさは、眉間に深い皺を寄せ目は閉じたまま、地面にしっかり固定されていた。

意識はなく、顔を歪ませ時折呻き声を上げる、これを何度も繰り返していた。


聞けば、僕が小蛇に噛まれてから、おさもすぐに意識を失ったらしい。

僕が倒れ、みんなはおさを滅するどころではなくなって、強いパニックに陥ったのだという。

僕の肌が紫色に変化しない事から、今回、毒ではなく幻影に捕らわれたのだとすぐに察し、中村さんは大橋さんと近藤さんに治癒の指示を出した……が、毒であれば大橋さんが吸い出す事が出来るけど、そうじゃない。

身体に直接的な害がない状態では、これといった有効策がなく、様子を事細かに視続けて、何かあれば回復させるくらいしか出来なかったそうだ。


今までの前例で言うのなら、小蛇の幻影は掛けられたものだけに作用した。

意識を失うなり、錯乱するなり、幻覚を視たり……等々だ。

これまで、術者のおさが意識を失うなんて1度もなかったというのに。

今回、それだけ霊力ちからの残量が乏しかったのだろう。

霊力ジリ貧のおさがどう出るか、それは考えるまでもなかった。

僕の魂と身体を欲してやまないおさの事。

誰にも邪魔をされない自身のフィールドに引っ張り込むはずだ。

そこで僕の魂を喰らえば一発逆転出来る。

おさは最後の霊力ちからを振り絞り、なりふり構わず喰らいに行った、みんなはそう確信したそうだ。

となれば意識のないおさに説明がつく。

山と異空間、この2拠地で意識を維持するなどは不可能で、ならばいっそとフィールド1拠地に全振りしたのだ。



みんなの前で意識を失ったおさ

滅するのにこれ以上のチャンスがあるだろうか。

にも関わらず、一切の手が出せなかったのは、僕を守る為だった。

術者のおさを滅すれば、フィールドも、中にいる僕も、すべてが一緒に消えてしまう。

山にある肉体いれものは残るかもしれないが、魂を含む霊体なかみが消えたのでは意味がない。


それを聞いて、僕は申し訳ない気持ちになった。

目の前に滅したくてたまらないおさがいるのに、無防備に意識を失っているというのに、僕のせいで手が出せないなんて、どんなに悔しい思いをしただろう……そう思い謝ると、みんなは揃って首を横に振った。


『岡村を……誰かの犠牲の上にある勝利ならいらない。全員で滅そうと約束したじゃないか』



とにかく、どうにかして僕を取り戻そうと必死になったそうだ。

だが手立てがない。

おさのフィールドはおさ以外、いかなる手練れも干渉出来ない。

助けに行く事も出来ず、ブロックされて霊視も出来ず、中で何が起きているのか情報も得られず、焦りと苛立ちだけが増えていく。

時間が経つほど下がる僕の生存率、今頃喰われてるのではないかと絶望感が広がる中、あの2人が現れたのだという。



____岡村君を迎えに行ってくる、

____大丈夫、私達なら入れるから、

____だから心配しないで、

____此処で待っていて、



瀬山さんは優しく微笑み、みんなが視た事のない印を結び始めた。

細い手指が複雑に絡み出すと間もなくし、これまた視た事のない綺麗な花が次々地面に咲き出した。

花は一瞬で広がり、数多の色は時間でそれぞれ変化する。

その花を踏まないように、2人は真っすぐ歩き出し、いつしか背中は遠い先で消失した。



『俺達さ、ずっと待ってたんだ。彰司さんと持丸さん、絶対誰も入れないと思ってたおさのフィールドに入って行ったし、あの2人はスゴイ人達だから大丈夫。必ず岡村を助けてくれるって信じてさ。でも……そうは思っても怖かった。岡村が死んじゃったらどうしようって、俺、不安で不安で仕方なかったよ』


鼻をズルズルすすりながら、僕にピッタリくっつくかける君がそう言った。

僕を待ってる間、余程不安だったのだろうと思うと、胸が苦しくなってしまう。

そしてくっつき虫はかける君だけじゃなかった。

僕のスーパースィートハニー、大福もおんなじで、かける君とは反対側でピタッとくっつき、虎の子サイズの大きな舌で僕のほっぺをザリザリと舐めている(肌がヒリヒリするくらい)。

そうかと思うとこの猫は、僕の肩とか腕とか足とか頭とか……要はありとあらゆる所をひっきりなしに甘噛みするんだ。

元々甘えん坊な子ではあるけど、この激しい甘えっぷりは相当心配をかけてしまったのだなと、僕はめちゃくちゃ反省し、両手で1人と1匹をギュウッと抱き寄せた……って、ひょー、冷たー、ブルブル……両サイドから霊達に挟まれると、めちゃくちゃ冷えるな。

けどココは辛抱、心配かけた僕がワルイの、こんなんで安心してくれるなら、僕、頑張っちゃうんだから。




山に戻ってから、どのくらいの時間が経ったのだろう。

僕達は瀬山さんの帰りを待っていた。


____最後だから


そう言って、父親と話がしたいとフィールドに残った瀬山さんは、今頃なにを思うのかな。

僕とかける君と大福は、おさの顔の前で体育座りをしていた。

他愛のない話をしながら、相変わらずデザートイーグルを突きつけたままの大上さんに時々突っ込まれながら、一緒になって見張っていたんだ。

目の前のおさは、固く目を閉じたまま、顔をしかめたり唸ったりと小さな変化を視せていた……が、依然意識はないままだった。


一体フィールド(むこう)で何を話しているんだろう?

此処にいる僕以外、誰もかれも息をするように霊視が出来るけど、親子の会話を覗こうというひとは1人もいない(ブロックもされてるけど)。

ただただ、おのおの好きなコトをしながら瀬山さんの帰りを待っていた。


そして先代だ。

僕と一緒に戻ってきた先代は、今までどこにいたのか、それは聞いても教えてくれなかった。

だけど、


『ずぅっと視てましたよ。本当に危なくなったら行くつもりでした』


ちゃんと見守っていてくれてたみたいでさ。

きっと、何か考えがあっての事なのだろう。

おさを前に2人は、『私達が行くからっ!』と言っていたんだもの。

それがパタリと消えたのは事情があるんだ、それを今は言えないというのなら無理して聞くつもりはない。



先代は今、あっちこっちと歩きまわって、みんなと話をしてるようだった。

昔の先代を知ってるひとも知らないひとも関係なしに、目が合えば近付いて話し込んでいる。

こっちはこっちで何を話してるんだろうな。

まぁでも、先代も”元瀬山の霊媒師”だからね。

共通の話題は案外たくさんあるのかもしれない。







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