表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊媒師募集  作者: たまこ
827/1194

第二十章 霊媒師 瀬山 彰司ー91

「先代! 瀬山さん! 僕……僕……ごめんなさい、ヘマしちゃった。おさの小蛇に噛まれたんだ。来てくれて嬉しい、めちゃくちゃ嬉しい……! ……あっ! そうだ、あの、みんなと大福はどこにいるの? 無事だよね?」


良い年して大泣きだった。

気が張っていたのがプツッと切れて、安心して緩んでしまって、僕はダメな大人になっていた。


『大丈夫、泣かないの。みんなも大福ちゃんも山にいるよ。岡村君の身体もだ。みんなはおさの本体の方を拘束中だよ。ここにいるのは半分本物、もう半分は幻影だからね』


ああ……良かった……僕は先代の言葉にホッとしたんだ。

おさは嘘つき、言ってる事はデタラメだから、きっとみんなは無事でいると踏んでいた。

でもそれはあくまで予想だもの。

こうやって教えてもらって、ようやく心から安心出来た。


『岡村さん、ごめんね。また父が迷惑をかけたね』


悲痛な顔で僕に謝るのは瀬山さんだ、ううん、瀬山さんは悪くない。

血が繋がっている事と、おさの罪はまったくの別物だ。

僕はおさが大嫌い、でも瀬山さんは大好きだもの。



その大嫌いなおさ

いい加減弥生さんの姿を解いてくれと思うのに、美女ビジュアルのまんまで唇を噛み締めている。


『彰司……持丸……何故だ……どうやって此処に入った……私の霊力ちからで造った、私の霊力ちからに反応する、私の霊力ちからでなければ干渉は不可能なはず……』


おさ……すごい悔しそうだ。

どうやって突破したんだろ……ま、僕にとってはどうでもいい話だ。

2人が来てくれただけで胸がいっぱいだもの。

だけど、それに瀬山さんが答えた。

ただの回答じゃなく、親子の会話になっていく。


『父様……お忘れですか? 私はあなたの息子です。良くも悪くも血の繋がった親子なんですよ。父様と私の霊力ちからはよく似ています。だから干渉も出来るのです』


見た目は儚げな少年だ。

細い肩、薄い背中、澄んだ瞳はあまりにも清らかで、息子であると改めて訴える姿に泣きそうになる。


『息子……? ああ……そうらしいな。だがそれも昔の話だ。裏切者のお前を息子とは認めない。それよりも、私とお前の霊力ちからが似ていると言ったが、完全に一致はしていないはずだ。なのにどうやって此処に来た、』


ギロリと息子を睨む。

弥生さんの猫の目が虎の目に変わる。


『…………簡単です。父様の霊力ちからより、私の霊力ちからの方が強いのですから。父様が構築された空間、これを私の霊力ちからで一部再構築しました。故に出入りは自由、改変も拡張も自在、そしてもちろん破壊もです』


悲しそうな目だった。

こんな事言いたくないと、そんな色が濃く滲んでいた。

それに対しおさは目を吊り上げて睨みつけている。


『お願いです……これ以上罪を重ねないでください。私も父様も生きていた頃、一緒に現場に出た事がありましたよね? その時、悪霊に向かって仰ったじゃないですか「往生際が悪い、」と。同じ事を言わせないでください。どうか潔く、罪を認めて見事滅されてください』


瀬山さんの懇願に沈黙だ。

視てられない、瀬山さんがあまりにも辛そうなんだもの。



『平ちゃん、』


おさを真っすぐ視つめる瀬山さんが、先代に声を掛ける。


『ん、』


なんとも短い返事だ。

先代は不貞腐れた少年の顔で、親子を視続けていた。


『岡村さんと一緒に先に戻ってて。私はもう少しだけ父と話したいから』


『んー、そう? こんなヤツと話したって時間の無駄だと思うけど』


あ……先代、話し方がいつもと違う、なんか、こう、若い。


『あはは、ごめん。……僕も(・・)ね、そうかなって思うよ。でも、最後だから』


あ……瀬山さんもだ。

自分の事、”僕”って言ってる。

きっと昔、うんと若い頃はこうだったんだろうな。

2人は今、昔に戻ってるのかもしれない。


『ショウちゃん、本当に大丈夫かよ。またコッソリ大泣きするんじゃないのか? おさと話すと決まって後で泣いてたもんな』


『そ、そんな事ないよ! 大丈夫、心配しないで』


『ふぅん、ま、いいけど。じゃあ先に戻ってる。ショウちゃんが作った道使えばいいんだろ?』


『うん、平ちゃんと岡村さんなら通れるから。ごめんね、勝手な事言って』


『そんなのいいよ。そのかし早く帰って来いよ? わかったか?』


『う、うん。約束』


あらら、これじゃあどっちが年上か分からないや。

でもすっごく仲良さそうだ。


『行こう、』


僕に向かって手を差し出した先代は、ちょっぴり恥ずかしそうだった。

若い頃の話し方を僕に聞かれて照れているのかもしれない。


若い姿の先代が、僕の手を引き窓に向かう。

それをおさが怒鳴り止める。


『待てっ! 岡村は私のものだ!』


振り向けば、真っ赤な目で僕を視るおさと、後ろ姿の瀬山さん。

先代は面倒そうに『いいよ、行こう』と無視をする。

そこにおさが更に怒鳴った。


『何故そこまで邪魔をする……! 生き人ならいざ知らず、持丸も彰司も死人しびとではないか、貴様らは黄泉に逝けるのだろう? それなら大人しく黄泉で暮らせば良い。現世で何が起ころうとも貴様らに関係のない事だろうが……!』


はー、と雑なため息をついた先代は、空いてる手で耳をほじっているのだが、真面目に聞く気はなさそうだ。

おさは当然話続ける。

聞いてようと聞いてなかろうと関係ないみたいだ。


『ましてや、せっかく希少の子として生まれたのにも関わらず、30年もそれに気付かない愚か者を庇う必要があるか? もっと早くに気付き修行をしていれば、今頃凄まじい霊媒師になったであろうに……! 30過ぎて今更修行をした所で高が知れている。ならば私が身体を貰って、希少の霊力ちからを生かしてやろうと言うのだ……! 感謝されてこそ、邪魔される言われはない! 消されて当然の小僧なのだよ!』


あれま、スゴイ言われようだな。

突き抜けすぎてて腹も立たない……と思ったのは僕だけだったみたいで。

この後、先代が暴走した。



あ、と思った時、先代は僕の手を離していた。

一瞬で移動したのか、弥生さんの姿をしたおさの前にいる。

パーソナルスペースなんて知った事か! な、近距離で顔を斜めに詰め寄った。


『消されて当然? ソレ、オマエの事だよな?』


それは凄みのある声と口調だった。

あれ……? えっと……先代だよね?


『私ではない、だから、』


おさが言いかける、が、それをバッサリぶった切る。


『岡村は”おくりび(ウチ)”の三男坊だ。俺の(・・)大事な大事な息子なんだよ。俺の息子が消されて当然? ふざけんなヘビ野郎。オマエこそ今すぐココで滅してやろうか?』


や、ちょ、先代……?

僕のコト呼び捨てになってるよ?(ぜんぜん良いけど、ウェルカムだけど)

それと今、社長と弥生さんと水渦みうずさんとジャッキーさん(ガチギレ時)を混ぜ合わせた感じになっちゃってますけど、いつものキャラと全然違うんですけど、ちょ、先代?


『……き、貴様、持丸、誰に向かって口を聞いている、』


怒りで顔を真っ赤にしたおさが声を震わす。

が、先代の勢いは止まらない。


『誰に向かって? オマエだよ、オマエ!! 目の前で! オマエ視ながら話してるんだ! それくらい分かれ! つか大物っぽく振舞うな! 腹立つー!!』


フンガー!!


先代キレまくりだよ、もうキャラ崩壊だよ。

『岡村くんが作ったスィートポテト! んまいねぇ♪』

なんてニコニコ笑う、かわゆすキャラが行方不明になりました。

こりゃあ、若い頃の話したがらない訳だわー。

このフンガーキャラを収める事が出来るのは、親友である瀬山さんしかいないのだが、扱いは慣れたものだった。


『平ちゃん、落ち着いて。岡村さんがビックリしてるよ。僕、手短に話すから、話したら山に戻るから、そしたらみんなに滅してもらおう? 若者達が頑張ったのに、最後のトコだけ年寄りがしゃしゃり出たら嫌われちゃうよ! いいの?』


腰に手をやり諭すように。

瀬山さんはどこまでも優しくて、先代は『若者達が頑張ったのに』にめっちゃ反応してたんだ。


『あっ、そうだよな! 悪い、俺、カーッとなった! 中村にも怒られるトコだったよ。ごめんショウちゃん。そんじゃあ、先に戻ってる! 早く帰ってきてな! 岡村、行くぞ!』


大反省の先代は、瀬山さんに素直に謝り僕の手を取った。

まだ僕を呼び捨てにしてるけど、テンパってるのか気付いてない。

瀬山さんは小さく手をフリフリしてて、それでも、飛び掛かるおさを片手で止めた。



『トゥ!』


僕の手をしっかり握り、先代は窓から飛び降りる。

いきなり床がなくなって、「わーーーーーっ!」と叫ぶヘタレな僕に、先代はゲラゲラと笑っていた。


下を視れば、たくさんの花が咲くキレイな道が視えたんだ。

あれが瀬山さんの作った道なんだな。

それにしても……僕は昔、お花屋さんでバイトをしてたのに、あの花は視た事がない。

不思議だな……赤、青、黄、紫、ピンク……多色に咲き乱れるその花たちは、時間で色を変化させていた。

どれだけ視てもちっとも飽きない、あれはこの世の花じゃない。

そうだ……前にジャッキーさんから聞いた事がある。

たしか花の名前は【百色華ひゃくしょくか】だったはずだ。

黄泉の国だけに咲く、特別な花。


「キレイだなぁ」


山に帰る道のりを、僕と先代は虹の色を楽しみながら戻っていったのだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ