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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十章 霊媒師 瀬山 彰司ー86


薄い意識の中を彷徨っていた。

身体がダルくて目が開かない。

閉じた目には何も映らないというのに、頭がグルグル回ってる。

回転性の眩暈だ。

まるで船酔いみたいでキモチワルイ。


あれ……僕……どうしたんだっけ?

確か……カウントの途中だったはず……おさをみんなで滅そうと、武器を構えてたんだ。

それで……?

ああ……そうだ、カウントもあと一つとなった所で……何かに、いや……おさの小蛇に首を噛まれた。

それから……意識が遠のいて……みんなの怒鳴り声と……かける君の泣き声が聞こえて……あと……おさの声が……頭の中に直接聞こえたんだ。


おさは僕に『捕まえた』と言っていた。

捕まえたって……どういう事?

僕は小蛇に噛まれたけど、こうして今、自我を持ってる。

という事は魂を喰われたんじゃないのだろう。

小蛇には毒があるけれど、おさは僕を傷付けられない。

だから大丈夫なはずなんだ……眩暈はするけど、身体はやけにダルいけど。



……

…………ちゃん、

………………えい……

……………………えいみ……ちゃん、


誰かが……僕を呼んでいる?


身体を揺さぶられ、眩暈の頭が更に回って吐き気を催す……が、気持ち悪いはずなのに、僕の胸はバクバクと躍り出し、それどころではなくなった。


「エイミーちゃん、大丈夫か? しっかりしろ」


心配そうな色を帯び、僕の名前を何度も呼ぶのは、酒に焼けたハスキーボイス。

出来る事なら毎日だって聞きたい声だ。

僕は気持ち悪いのを我慢して、気合を入れて目を開けた。


「あ、目ぇ覚ましたっ!」


僕の顔を覗き込む、猫のような大きな目と視線が合った。

やわらかそうな白い肌、通った鼻に、グロスの塗られた艶の唇。

華奢な肩は儚げで、いつもの黒いワンピース。

伸びかけの短い髪が僕に向かって垂れていて……


「…………弥生さん、……どうして?」


頭が混乱する。

驚きと喜びと胸の高鳴り。

いるはずのない好きな人が「良かった……」と大きく息を吐いていた。



「なんでアタシがいるかって? 先代に呼ばれたんだよ。たまたまW県近くの現場に入ってたのが昨日終わってさ。帰ろう思ったら、修行中の事故でエイミーちゃんが倒れたから来てくれないかって頼まれたんだ。ほら、先代も瀬山さんも幽霊だし野郎だろ? 応急措置はしたけど、看病の仕方が分からなかったんだって」


ソファの上にドカッと座り、そう言った弥生さんはケラケラと笑った。

僕はと言えば、小さなベッドに寝かされているのだが……ココ、どこ?


「ココか? 山の近くのビジネスホテルだよ。W県に着いてから、山までタクシーで迎えに行って、その足でホテルに来たんだ。エイミーちゃんを運んだのはタクシーの運ちゃんでさ、”酔っぱらった弟を休ませたい”って言ったら、部屋まで運んでくれたの」


そ、そっか。

弥生さんにも運転手さんにも迷惑かけちゃったね、ごめんね。


「ぜんぜん! とりあえず、大した事なさそうで安心したわ」


事情が分かった所で、僕はベッドの上で半身を起こした。

弥生さんは無理するなと言ったけど、なんとなく落ち着かないし、眩暈もだいぶ治まった。

中を見れば飾りのない四角い部屋で、あるのは弥生さんの座っている小さなソファに小さなテーブル。

窓は一ヶ所、大き目だけど曇っているのか薄暗い。

テレビとかお茶セットとか、余計なモノは一切無い、そんな部屋だった。


「ねぇ、弥生さん」


話しかければ「なんだぁ?」なんてお気楽だ。

その顔がやけに眩しく、話しかけておきながら目線を外してワザとらしい咳をした。


「……や、その、おさ……、おさはどうなったか聞いてる? それからみんなは? 大福はどこにいるのかな、」


弥生さんがどこまで聞いているかは分からない。

だけど僕は霊視が出来ないから、聞いてるかぎりの事でいいから知りたかったんだ。

おさを滅する、それはみんなの切願だ。

カウントもあと一つという所で、僕がヘマをしたんだ。

小蛇なんかに噛まれてしまって、一撃を中断させてしまった。

僕なんかは放っておいて、滅してくれてればいいんだけど……







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