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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十章 霊媒師 瀬山 彰司ー84

みんなは口を閉じたまま考え込んでいた。

お互いに顔を見合わせ、眉を下げている。

やがて、僕らの中で最年長、中村さんが静かな声で言ったんだ。


『……まったく、これだから新人は。悪霊の怖さを分かっていない。どんなにしおらしくなったところで所詮は悪霊。いつ手のひらを返されてもおかしくないのだ。甘い、甘すぎる。…………だが、岡村のその甘さが我々を救ったのも事実。いいさ、お前の好きにしろ。これも勉強だ____』


中村さんは印を結ぶと上げた両手を振り下ろす。

直後、大きな剣が出現し、二刀流の刃の先をおさの顔に突き付けた。


『だが言っておく。おさに謝罪の意など無い。不本意ながら長い付き合いだ、我々にはそれが分かる。助かりたい一心でお前に付け込もうとしてるのだ。

かけるの言う通りだよ、岡村は人を信じすぎる。だがそれも性格だ。そのせいで痛い目に遭うまでは、変える事は出来ないだろう。だったら、今学べ。我々を使ってな(・・・・・・・)


厳しくも優しい目だった。

ジィッと僕を視つめてる。

僕の喉は乾いてしまって、張り付いてしまいそう。

それでもなんとかして声を出し、聞きたい事を聞いてみたんだ。


「”我々を使って”……というのは、どういう意味ですか……?」


『…………我々は罪人つみびとだ。偉そうにおさを滅そうとしているが、我々だって、本来は滅される側の悪霊だ。だが……お前は我々を人として扱い、そして信じてくれた。本当に救われたよ。お前には恩がある。お前を守る為ならどんな事でもする。…………お前が、おさの言う、”謝罪したい”という言葉を信じ、話を聞くというのなら好きにしたらいい。但し、おさが手のひらを返したら、我々が岡村の盾になる。霊力ちからは残り僅かだろうが、自爆覚悟で来られたら……正直難航するかもしれん』


中村さんの話を聞いてみんなが動いた。

おさのまわりを狭くグルリと輪になって、使い慣れた各武器をおんなじように突き付ける。

僕は目だけでみんなを追った。

その中にはかける君もいて、『そういう事なら俺だって』と意気込んでいる。

鼻の奥がズキズキ痛む、声が上ずりそうになる。



「それってつまり……おさの嘘を承知で、僕の好きにさせるって事ですか? それでおさが襲ってきたら身を挺して僕を守ると……そんなの……どうかしてるよ、なんでわざわざ、そんな事をしなくても、たった一言、『それはダメだ』と言えば済むのに。みんなが反対するのなら、無理に我を通そうなんてしないよ、」


『お前の性格ならそうだろうな。だからこそ心配だ。お前はこれからも霊媒師を続けるのだろう? この先、現場で似た状況になった時、悪霊の嘘が見抜けず、付け込まれるかもしれない。だが此処で学んでおけば回避出来るかもしれないじゃないか。見抜けなかったらどうなるか、肌で学べ。なに、どうせ最後は消滅する身、お前の糧になるなら本望だ』


ポニテのいぶし銀がニコッと笑う。

他のみんなも揃いも揃って歯を視せる。


もうやだ……なんで……?

なんでそんな事言うの?

なんでそんな顔で笑えるの?

みんなでおさを追い詰めた。

決して簡単じゃなかった。

やっとここまで来たというのに。

滅するまで、あと半歩もないのに。

全員で滅するんでしょ、それが本当の願いでしょ。


こんな事いわれたら、僕はこう答えるしかないよ。


「あの……! 瀬山さんには悪いけど、おさの話、聞くのやめます! だって嘘なんでしょ? だったら聞かない! みんなに無理してほしくないもの!」


声を大に撤回宣言。

みんなはそれぞれ『いいのか?』とか『納得出来たのか?』とか言っている。

いいの、だいじょぶ、納得してる。

おさよりみんなを信じてるもの。



男達がグルリと囲む、輪の中心。

そこから強烈な視線を感じた。

目線を上げると、皆の霊体からだの隙間を縫って、僕を凝視するおさと目が合った。

白濁の皺の眼は深く窪み、舌打ちの音が耳に滑り込んできた。






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