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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十章 霊媒師 瀬山 彰司ー83

おさはただ大上さんを視るだけで黙り込む。

形成逆転。

喰らうと言えば、震えあがった部下はもういない。

駒だ、虫けらだ、消耗品だと散々下に視てたのに、今、その下の者に魂を握られている。


元暴君は、現世に留まり50年だ。

自力のみでの霊体からだの維持は、とっくに出来なくなっている。

故にこれまで喰らい続けた。

他人の霊力ちからを奪い取り、そのすべてをおさ自身に使っていたのだ。

だが今、おさにとってのエネルギー源は絶たれ、既存の霊力ちからは削りに削られ残りも僅か。

頭のみの小さな霊体からだは薙刀で固定され、逃げる事も叶わない。

恐怖に顔を歪ませたっておかしくない状況だ。

なのに____長おさはまだ笑っていた。

何か勝算があるのだろうか。

それとも無意味なプライドだろうか。

わからないけど、不気味な笑みは張り付いたままだった。



大上さんが僕らを呼んだ。

かける君は『これでやっと……』と呟きながら、肩を震わせている。

他のみんなも押し黙り、だけど興奮は隠せなくって、変に足音がデカかった。


『悪いな。俺がどれだけゴキゲンなのか、それだけ言うつもりでいたんだ。コイツは人の楽しい話が大嫌いだから、聞かせてやれと思ってさ。だけど、顔を視てたらムカついて、勢いが止まらなくなっちまった』


銃口を当てながら、おさから目線を外さない大上さんがそう言って謝った。

中村さんはそれを受け、大きく首を振る。


『いいんだ、大上。よくやってくれた。途中色々あったが現時点で負傷者ゼロ、全員で追い詰めたんだ。最後の一撃は誰が撃っても、皆で滅したに等しい』


僕を含む全員に囲まれるおさは、うんと年寄りに視えた。

心なしか頭に生える蛇達も萎れてる。

動きが鈍いし、目は濁った赤で光もない。

霊力ちから、本当に残り僅かなんだな。

かける君じゃないけど、やっとだ。

ここまで長かった。

でも……最期まで、特に僕は油断したら駄目だ。

頭しかないし、その頭は薙刀で固定されてるし、二丁拳銃は火を噴く寸前だし、大丈夫だとは思うけど、ここで僕がおさに乗っ取られたら、みんなの頑張りが無駄になる。

それだけじゃない、僕の霊力ちからは僕から離れ、みんなを傷付けるだろう。

そんな事、絶対にさせない。

気を引き締めておさを視た。

いよいよだ、これが最後だ、滅したら、それを視届けたら、次は____

考えると気持ちが沈む。

おさに勝つのは嬉しいけど、でも。



『岡村……、』


不意に名前を呼ばれた。

さっきまで笑っていたはずなのに、絶望を色濃く浮かべたおさが僕を視る。


「……なんですか?」


話す事なんてない、だから無視しても良かったんだ。

なのに返事をしてしまった。

みんなはおさと僕を交互に視る。


『お前に頼みたい事がある』


「頼みたい事……?」


まさかこの期に及んで、魂を喰わせろだの身体を寄越せとかじゃないよね?

そんな願いなら聞けないよ、ううん、どんな願いだって聞く気はない。


そう思っていたのに。




頭の蛇が力なく下がった。

顔の皺は深く刻まれ、目の周りは窪み真っ黒になっている。

張り付いた笑いは剥がれ、おさは縋るようにこう言った。


『…………彰司に伝えてほしい事がある、……これまでの事を謝りたい』


「瀬山さんへの伝言、ですか……」


これには揺れた。

おさがどれだけ酷い人でも瀬山さんの父親なのだ。

今此処に瀬山さんはいない。

父親の最期の言葉、しかもそれが謝罪の言葉だとすれば、伝えた方が良いのではと思う……でもな、謝りたいって本当かな、罠じゃないのかな。

急にしおらしくなるは変じゃない?

そう思うのに、キッパリと断れず小さく唸る事しか出来ない。


そんな僕にかける君は『騙されるな』と息巻いて、大人達は微妙な空気で渋い顔だ。

僕は迷っていた。

だがおさは、良いとも言っていないのに、勝手に話し出したんだ。


『此処まで追い詰められれば逃げられぬ。悔しいがお前達の言う通り、私の霊力ちからも残り僅かだ。これが……これが最期なのだと思うと、やはり浮かぶは彰司の顔だ。私は……瀬山の家を守りたかった。故にその思いが無理をさせてきたかもしれぬ。そういった気持ちを伝えてほしいのだ。頼む、少しだけ話を聞いてくれ、』


薙刀が突き刺さり、今では修復液も出ないくらいに弱ってる。

もしかしたら、このまま放っておいても消滅するのは時間の問題かもしれない。

僕はどうしたらいいんだろう、僕は____


「……わかりました、」


僕がそう答えると、かける君が声を荒げた。


『岡村っ! 騙されるなって言ってるだろ! お前は人を信じすぎだ! コイツは絶対に嘘をついてる! 悪い事を考えてるんだ!』


言葉はキツイ、でも少年は僕を庇うように抱き着いて、おさを睨みつけている。


「ごめんね、心配だよね。……あのね、伝言聞くだけ。聞いたら伝えるだけだから。瀬山さん、今此処にいないでしょう? もしかしたら聞いておきたかったってなるかもしれないじゃない」


『それは……そうかもしれないけど』


「大丈夫、おさと距離を取る。手短に、聞いたらすぐ、みんなで滅そう」


言いながら、心の中は激しく揺れていた。

おさの話を聞く……これが本当に正しい事なのか、僕に判断がつかない。

それでも聞こうと思ったのは、もしかしたら……最後のおさの言葉が、瀬山さんを救うかもしれないと期待したからだ。

だけどこれは、僕だけの判断じゃ駄目だ。

みんなに聞いて、それで良いかを聞いて、それから。


かける君、大上さん、中村さん、……みんな。瀬山さんへの最後の伝言、聞いてもいいかな? ……正直、無視してもいいとは思うんだ。でも、もしかしたら、おさの言葉が瀬山さんを救うかもしれないじゃない。過去は変えられないけど、おさのした事は取り消せないけど、それでも、たった一言謝罪の言葉があるのと無いのとでは全然違うと思うんだ、……どうかな? もちろん、みんなが反対なら聞かない。……僕達はトゥエンティーエイトマンセル、28人でひとつのチームだからね」


僕はみんなの顔を視た。

みんなは、なんて言うだろう。






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