第二十八章 霊媒師 三年後ー78
『岡村はもう、霊視も口寄せも出来ると聞いた。成長したな……かつてのおまえは霊視すら出来なかったのに』
そう言って涙ぐむのは白髪のポニテのいぶし銀、中村さんだ。
生きてた頃の晩年は、新人霊媒師達の教官をしてたんだ。
だからだろうか。
事あるごとに僕に色々教えてくれるし、習得すれば喜んでくれるのよ。
『えぇっとー! 岡村くんは囲碁は出来るようになりましたか? あとで是非、森木と一戦交えましょう、はい』
綿あめみたいな白髪のモジャモジャ。
”えぇっとー” が口癖の森木さんとは、いつか囲碁をしましょうと約束してた。
お任せください、ルールはすでに覚え済みです。
あとで是非是非打ちましょう。
『岡村、覚えてるか? 俺、お前の為にカスタム銃を造ってやるって言ったよな。今日はそれを持ってきている。後でそれを渡すから、そん時に使い方を教えてやるよ』
えぇ!
本当に造ってくれたの!?
覚えてる! ガンマニアの大上さんは、僕でも使えるイカした銃をくれるって言ってたよね!
嬉しい! 覚えててくれて、僕の為に造ってくれたなんて嬉しい!
『なぁなぁ、岡村はカノジョは出来たのか? まさか今でも片想いとか言わないよな? ”希少の子” なのにカノジョもいないとかハズカシイぞ』
でたっ!
なんでもかんでも ”希少の子” に結びつけちゃう、永遠のティーンエイジャー翔くんだ。
何度も言うけど ”希少の子” は関係ないからね?
無関係だからね?
『コラ! 翔はすぐに、そういう事を言う。いいか? ”希少の子” は関係ない。モテるモテないは、どちらにしても本人に原因があるんだ』
あーうー、大鎌持たせりゃ世界で一番カッコイイ杉野さんは、僕を庇ったつもりだろうけど、惜しい、最後はも少しマイルドでもイイんじゃないかと思うんだ(反論出来ないけど)。
そんなこんなで笑いつつ、積もる話をガンガンしてさ。
だけどさすがは司令塔、途中、中村さんが僕に向かって言ったんだ。
『岡村、我々の所にはまた後で来たら良い。先に持丸達の所に挨拶に行ってこい。なんといっても今日は彰司さんの奥方さまもいらしているからな』
そ、そうだ!
瀬山さんの奥さま!
お会いしたいしご挨拶も絶対したい!
なんてったって、瀬山さんにはめちゃくちゃお世話になってるからね。
「ありがとう、中村さん! 僕、行ってくるよ。ご挨拶してくる!」
みんなに手を振り足早に、辺りをキョロキョロ視渡せば……視つけた!
先代と瀬山さん、そして奥さまの三霊が、仲良く話をしてたんだ。
タタタタタッと足早に。
僕が三霊に近づいてくと、それに気づいた先代が大きく両手を振ったんだ。
『おーい! 岡村くーん! おいでおいでー!』
はーい! と元気に返事をしながら傍まで行くと、佐知子さんが優しく微笑みおじぎをしてくれたんだ。
うわぁ……なんて綺麗な霊だろう……この女性が瀬山さんの奥さまなんだ。
抜けるような白い肌、大きな瞳、黒髪を一つにまとめ、和服がとっても似合ってる。
『岡村さん、紹介するよ。こちらは私の大事な妻の佐知子です。佐知子、こちらは岡村さん。いつも話している子だよ』
瀬山さんがそう言うと、
『はじめまして、佐知子と申します。瀬山がいつもお世話になっております』
とっても綺麗な優しい声を聞かせてくれた。
「は、初めまして、岡村英海と申します。昔から瀬山さんにはお世話になりっぱなしなんです。今日はお会いできてとても嬉しいです」
ちょっぴり緊張、だけどこうしてご挨拶が出来たのがとても嬉しい。
大好きな瀬山さんの奥さまだもの。
だから粗相はしたくない、いつもよりも丁寧に挨拶をしたつもり……なんだけど、大丈夫だったかな?
なんてコトを心配してると、察したのか、先代がこんな事を言い出したんだ。
『んもー、2人ともカタイよー。岡村くんはいつもこんなじゃないでしょう? さっちゃんもそう、いつもよりヨソユキじゃなーい』
え!
そうなの?
佐知子さんも緊張してたの? でもってヨソユキなの?
偶然ですね、僕もです!
じゃあじゃあ、もう少し砕けた感じでいいのかな?
なんてコトを考えてると……
『そうだよ、佐知子。岡村さんはとっても優しくて良い子なの。だから緊張しないで良いし、……僕はね、2人が仲良くなってくれたら嬉しいんだ』
あ……瀬山さん、今、自分のコト ”僕” って言った。
今、師匠は自然体でいるんだろうなぁ。
それにさ、奥さまを視つめる目がいつもに増して優しくて穏やかだ。
なんだかとっても幸せそう。
ここにいる瀬山家はもちろんだけど、藤田家も、清水家も志村家も、みんなみんな幸せそう、家族って良いなぁ。
和やかな空気の中。
肩の力を抜いた僕達は、たくさんの言葉を交わし合ったのだ。
「おぅ! おまえらぁ! 肉が良い感じに焼けてるぞー! 余らしてもしょうがねぇんだ! いっぱい食え食え!」
スキンヘッドを光らせて、肉や魚を次々と焼く社長。
傍らでは、僕と嵐さんが一心不乱に野菜をカット。
キーマンさんは切った野菜とお肉を交互に ”イエァッ!” と気合いで串にさしてく連携プレイ(キー嵐コンビは後から到着、そして合流)。
バーベキューは大賑わいで、生者も死者もモグモグモグモグ、”美味い美味い” の大合唱だ。
僕は野菜を切りながら、バラカスさんを中心に女性とお子が集まる一角、そこをチラチラ見てたんだ。
美味しいお肉にはしゃぐ双子とヤヨちゃんと、マジョリカママに弥生母ちゃん、貴子さんにお婆ちゃん、ユリちゃんと朋さんもいて、その中に水渦さんもいるんだよ。
彼女は笑っていた、……とは言ったって、性格的に豪快にではないけれど、歯を見せて、目尻を下げて笑ってるんだ。
初めて会ったあの頃からじゃ、考えつかない事だよね。
友達は1人もいないと言ってたし、他人といるのは疲れるのだと言っていたのに……それがどうよ、今はとっても明るい顔だ。
伸ばしかけの髪の毛がキレイにピンでとめてあるのも、あれだってユリちゃんがしてくれた、水渦さんの友達がしてくれたんだ。
「さぁてと! エイミー! 嵐! キーマンもジャッキーも! ここらで一旦野郎共も休憩だ! 食うぞー!」
社長の雄叫び。
それに僕らは「「「「おぉぉぉぉ!!」」」」と返し、焼けたお肉にかぶりつく。
うっまーい!!
____秋の晴天、平和な休日
現場に出れば苦労もあるけど、今日はひとまず楽しもう。
大事な仲間と大事な人と、過ごせる時間は宝物。
何気ない今日という日は、いつかの未来に思い出となるのだろう。
それを思い出した時、ただ純粋に懐かしく思うのか。
それとも、その思い出を胸に抱えて誰かの為に戦うのか。
それは今は分からない。
だけどね、こんな日がたくさんあればあるほどに、僕はきっと強くなれると思うんだ。
大事な人を守りたい。
その為に霊力も腕力も必要だけど、それだけではまだ足りない。
大切なのは愛情だ。
愛に形はないけれど、愛はこの目でみえないけれど、みえないものがチカラをくれる。
子への愛、妻への愛、夫への愛、恋人への愛、仲間への愛、猫への愛。
あらゆる愛がチカラをくれる。
あらゆる愛が不可能を可能にする。
僕自身は弱くても、誰かを想う気持ちがあれば、それが僕を強くする。
そして同時、僕が誰かを強くするかもしれないんだ。
そう、これは僕が6年かけて学んだ事____
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急募!
霊媒師1名。
年齢、学歴、男女不問。
経験者優遇、研修期間有り。
霊力はあるけど除霊やお祓いは未経験という方、最初は先輩霊媒師と共に現場入りしますのでご安心ください。
給与:経験、能力を考慮の上当社規定により優遇。
社会保険完備。面接時は本人確認書類をお持ちください。
履歴書は不要です。
こちらで霊視させて頂きます。
____これなんかどうでしょう!(ニパァ!)
6年前のあの日あの時、僕の運命が走り出した。
あの日に視た先代の笑顔は、今でもはっきり色鮮やかに覚えてる。
あの時に霊媒師になると決めた判断が、僕の人生を大きく変えた。
霊力なんて無いと思ってた。
幽霊なんか信じてなかった、……それなのに。
人生ってなにが起こるか分からないよね。
あの日に別の判断をしていたら、今頃僕はなにをしていただろう。
考えたって答えは出ない、……だけど。
今の僕がただひとつ言える事。
それは、霊媒師になって良かったと思っている。
そして僕はこれからも霊媒師であり続けるのだろう。
すべてはそう、大事な愛を守る為に。
霊媒師募集____了
これで完結となります。
長いお話を最後まで読んでくださった皆様に深く感謝申し上げます。
この後はエピローグがありますので、あと少しお付き合いいただけたら嬉しいです。




