第二十八章 霊媒師 三年後ー76
双子の天使はバラカスじーじに言われた通り、走るのをやめ、トコトコと歩き出す。
その後ろではヤヨちゃんが、マジョリカさんに優しく背中を押してもらうと、ほっぺを赤く染めながら、やっぱり走らずトコトコしだした。
そんな様子の、すこぶるカワユなチビッ子達に激萌えしてると、途中で僕に気付いた双子が、
「!? えーみ! えーみがいる!」←おめめ真ん丸弥春ちゃん
「!? だーふくもいる!」←お口ぱかーんな茉春ちゃん
で、
カキーンとフリーズ。
バラカスじーじと僕と大福、どこから攻めるかガチでマジで悩みだしてしまったの。
なもんで、
「よし、じゃあ、みんなで一緒にじーじのところに行こう!」
どさくさ紛れに僕も参戦。
プリチー三つ子を引率してさ、じーじの所にテクテク歩いて行ったんだ。
で、で、
三つ子達がじーじを前にキャッキャとはしゃぐ傍らで、僕はさり気にモフモフお腹に抱き着いた(勝手に念願叶えたYO!)。
ボフッ!
うわぁぁぁぁぁぁぁ……
氷のように冷たいけど……
やわらかくってフワフワだぁ……
ナニコレステキ。
あ、だけどチョットまずかったかな?
お互い噂は聞いていたけど、僕達は初対面。
なのにいきなり距離詰めすぎか? と心配したけど、バラカスじーじは霊体だけじゃなくってさ、器もすっごくデカかった。
猫よりも少し硬めな肉球を、僕の背中に押し付けながら、
『しょーがねーなー』
そう言って、ケケケと笑ってくれたんだよね。
あはは、ホントにすみません。
ああ、しょっぱなから最高だ!
今日はなんだか楽しい1日になりそうだよ!
モフモフお腹に埋まっていると。
「おぅ! 来たかエイミー!」
大きな声に振り向けば、食材を両手に抱えるスキンヘッドのマッチョマン。
その隣には同じくマッチョのクシャクシャヘアー、社長とジャッキーさんだ。
ジャッキーさんは僕を見るなり、
「エイミーくん、生身の身体で会うのは久しぶり! ……って、なんでキミはバラカスに抱っこされてんの? 子供達も連結してるし」
そう言って驚きながらも吹き出した。
あはは、良いでしょう?
僕がじーじに抱き着いたらさ、その僕に弥春ちゃんと茉春ちゃんとヤヨちゃんがくっついちゃって、ハッピートレイン状態なのよ。
そんな事情を自慢、ゲフンゲフン、説明した後。
名残惜しくもチビッ子達と猫も一緒にじーじに任せ、庭を小走り、大人達に合流した。
「弥生さんとマジョリカさん、おはよ! マジョリカさん、今日は外に出てるんだね」
そうなのだ。
今朝のマジョリカさんは弥生さんの中にいなくて外にいる。
僕が言うとマジョリカさんは、
『うん、今日はじーじが来ているからね。バラカスは仕事もあるし滅多に現世に来れないから、来た時はみんなの顔がみたいんだって。だから来ると、ウチに外に出て来ーいってウルサイんだ』
照れたようにそう答え、さらにそれを弥生さんが補足した。
「バラカスは弥春と茉春にメロメロだけど、マジョリカにもメロンメロンだからな。孫と一緒に娘の姿もみせないと、寂しがって鼻水垂らして泣くんだよ」
なぁるほど、と思うと同時に頭の上から『鼻水なんか垂らさねぇよ!』と聞こえてきたけど、”寂しがる” を否定しないバラカスさんが微笑ましい。
バラカスじーじに大笑いのママと母ちゃん。
ふたりは仲良くくっつきながら、庭を歩いて子供達の元へと向かう。
僕はというとマッチョコンビに向き直り、いつもの朝のご挨拶だ。
「社長もジャッキーさんもおはよ。良い天気だしバーベキュー日和だね! 僕、昨日から楽しみにしてたんだ! それにしてもビックリしたよ。まさか今日、バラカスさんに会えるとは思ってもみなかった! いやぁ、実物めちゃ可愛いくて萌え転がっちゃう!」
ホント、喋ると渋い中年だけど、そのギャップがまた良いの。
サプライズにテンション上がって僕が言うと、社長がすぐに乗っかった。
「なー! 俺もビックリした! 昨日の夜、ジャッキーからバラカスも連れてって良いかって聞かれてよ。俺もスッゲェ会いたかったし、当然OKしたんだよ。でよ、朝に会っておったまげたんだ! デケェわ、可愛いわ、喋りはアレだわ! ははっ! 黄泉の国ってのは色んなヤツがいて面白れぇよな! しかもバラカス、朋とも仲が良いんだと。っとに、笑っちまうよなぁ!」
あ!
そういや前に言ってたよ。
朋さんはバラカスさんとも白雪さんとも仲が良いって。
それだけじゃない。
瀬山さんとも藤田家とも仲良しだしで、あはは、ホントに世間は狭いよね(現世と黄泉も含む)。
男3人、お喋りしながらバーベキューのセッティング。
庭の真ん中、そこにすでに設置済みの、大きな大きな木のテーブルとたくさんの折り畳み椅子、立派なコンロも二台ある。
これを運んでくれたのは社長とジャッキーさん、だよね。
うわぁ、きっとコレ大変だったはずだ。
もっと早くに来れば良かった。
なんにもしてない焦った僕が、慌てて2人にそう言うと、
「ぜんぜん大変じゃねぇよ。こんなテーブル、俺なら片手で運べるからな!」
と、力自慢の社長に続き、
「コンロも軽いし、2台一度に運べたよ」
ニコニコ笑うジャッキーさん。
え? マジで一発運びなの?
やん、それが出来るのあなた達しかいないから。
「そ、そか! じゃあ食材の用意を手伝うよ!」
運んできたのはお肉とお魚、野菜切りはまだだろうと踏んだんだ。
カット担当、それに僕が立候補だ。
「そうか? じゃあ一緒にやるか。今日はな、女子供はなんにもしねぇと決めてるからよ。ああ、そうそう。ミューズもとっくにウチに着いて、今はユリと部屋でなんかやってるよ。つーか、俺はてっきりエイミーと一緒に来ると思ってたんだがな(ニヤニヤニヤ)」
あぅ……!
なんだろ、ヘンなコトを言われた訳じゃないのにさ、なんだかすっごく照れるんですけど。
社長の3倍大人の男、ジャッキーさんは特になんにも言わないけれど、なにを思うか目頭押さえる涙目笑顔が気になっちゃうよ!
水渦さんには昨日ラ〇ンをもらってる。
行きはバラバラ、その代わり、帰りは一緒に帰りましょうと。
だから良いの、大丈夫(なにが?)。
なもんで僕は力技で話題を変えた。
「そ、それよりさ、話は突然変わるけど、さっき僕、フツーにバラカスさんと話してたよねぇ。なんで僕はバラカスさんの言葉が分かるんだろ? え? 社長も分かるの? マジで? つか言っちゃえば弥春ちゃんと茉春ちゃんもヤヨちゃんもお話してた。不思議じゃない? ココは現世でバラカスさん作、翻訳システムがある訳じゃないのに。あ、それともバラカスさんが日本語で話しているの?」
バラカスさんは色んな星のあらゆる言語を網羅している。
だから日本語で話しているのかもしれないけど、それもなんだか大変そうだし、なにか素敵なシステムを使っているのかなと思ったの。
聞けばそれにはジャッキーさんが答えてくれた。
バラカスさんは、普段マジョリカさんが使っているのと同じモノ。
個人で使う翻訳ツールを身に着けているんだって(これもバラカスさん作)。
マジョリカさんのは星の形のペンダント型、バラカスさんもお揃いのペンダントをしてるらしいけど……(目を凝らしてジーーー)、毛皮に埋もれて視えないや。
「弥春と茉春が生まれた時、バラカスは意地でも双子と喋りたいって気合いを入れまくってたからねぇ。生まれる前から現世入りして、初めて双子を視た時には、鼻水垂らして泣いたんだ」
そうだったんだ……そりゃあ嬉しいよね、そんなん泣くわ、鼻水だって垂らして当然だ。
「泣いた理由は孫の誕生に感激したのと、……それと、その双子達に自分の姿が視えないのを知り号泣したんだ。そう、双子には霊力が無くて、死者の姿が視えないの」
「え……? 視えないの? だって、現に今……、」
言いながら振り向けば、そこにはキャッキャと遊ぶ家族が目に入る。
双子は難なく、バラカスじーじを、外に出ているマジョリカママを(外では元の霊体になる)、そしてお姫も目に捉えてる。
お喋りだってしてるんだ。




