第二十八章 霊媒師 三年後ー75
~~~さらに二年後の霊媒師達・ファイナル~~~
本日は ”株式会社おくりび” の創立記念日、社員全員お休みです・僕視点
東京都O市。
この町は梅の花が有名だ。
豊かな自然とレトロな雰囲気の味わい深い街並みは、ノスタルジーを刺激する。
有名なのは梅だけに留まらずスポーツも活発で、中でも毎年開催される大規模なマラソン大会は、海外からもランナー達が走りにくる盛大さ。
そして土地柄なのか、穏やかで優しくて面倒見の良い人が多いという。
僕の住むFM駅から電車に揺られて1時間。
O駅に着いた僕とお姫は、駅ロータリーで両手をあげて伸びをした。
秋晴れの良い天気だ。
後ろを見れば駅建物と赤く染まった大きな山が、前を見れば色とりどりのコスモスが、どこを向いても本当に本当にキレイな町だ。
わぁ……ここに来るのは久しぶり。
懐かしいなぁ。
初めて来たのは6年前で、社長とユリちゃんが結婚を決めた時だ。
清水家と藤田家、両家の顔合わせに僕が通訳として同行したんだよね(通訳と言っても言語は同じ日本語だから、生者と死者の橋渡しだけど)。
あの日はホントに色々あってバタバタだった。
中でも1番ヤバかったのは……ユリちゃんのお爺さん、真さんに僕の身体を乗っ取られたり乗っ取られたり乗っ取られたりなあの出来事。
アレは本当に焦ったよ。
だけどまぁ、今となっては笑えるけれど。
大事な僕の思い出だ。
それで……と、時計を見れば9時半過ぎ。
このままゆっくり歩いて行けば、約束の10時に丁度良い感じだな。
今日は会社の創立記念日、仕事は休みで社長のオウチでバーベキューをするんだよ。
こんなコト初めてだ。
去年も一昨年もその前も、なんだかんだと依頼が入って現場に出てた。
が……しかし、今年はたまたま、この日の依頼は0件で、だったらいっそ休みにしよう、こんな機会滅多にないからみんなで飲むかと社長が言い出し、自由参加で会費は1000円(安っ!)、”来たいヤツは10時に俺んち集合なっ!” とまぁ、こんな感じで決まったの。
で、僕とお姫はウキウキしながらやって来たのだ。
「駅から社長のオウチまで、大体歩いて15分だ。ささ、お姫様。お散歩がてらのんびりテクテク向かおうか」
愛しのお餅に声をかければ『うなぁん』とキュートに一言鳴いて、僕の隣を弾むように歩き出す。
キャー! ふわふわ! もちもち! お餅界のプリンセス! プリティーでマーベラスで360度ドコから視てもテラ可愛い! 宇宙規模のカワユイ選手権、お姫が優勝! 頂点はココにゃーっ!(ガチでそう思う!)
テクテク歩いて15分、社長のオウチが見えてきた。
遠目からでも大きな家で目立ってる。
焦茶色した外塀が延々と、そらあもう延々と続いているから、歩けど歩けど門まで中々着かないの、………………って、なんだあれ……?
社長の家は日本家屋で、イメージ的には古い旅館を連想させる。
大きな建物、その建物に負けないくらいの広い庭。
母屋の裏手は、これまた広い裏庭と道場が建っているんだ。
バーベキューは表の庭でするのだと言っていた。
”俺んち着いたら、構わず中に入ってこい。庭にいるからよ!” とも。
なんだけど…………ん? んんー?
外塀の向こう側、そこからはみ出る白い小山がみえるんだ。
なにあれ?
前に来た時あんなのあった?
距離があるから正体不明で、僕は首を傾げつつ、隣のお姫に ”なんだろね?” と言おうとした時、
『うなっ!? うなーーっ!!』
大福はゴム毬ライクにピョンッと跳ね、塀に登ると小山目掛けて駆け出した。
え!? なに!? どーしたの!?
焦った僕が、後を追おうと走りだしたその瞬間。
ゴゴゴゴゴと小山が大きく揺れて上に伸び、白だと思った山肌に、部分的に黒い模様が視えたんだ。
僕は走って距離を詰め、目を凝らし、謎の小山をジッとみるコト十数秒。
山肌はよくよくみたらフワモコで、……あれは……あれは………………!
「間違いない! 巨大なパンダちゃんだ! ウソだろ!? バラカスさんも参加なの!?」
聞いてない!
聞いてないけど超サプライズでテンション上がる!
だからお姫は駆け出したのか!
あの仔はすぐに分かったんだ、白い小山がバラカスさんだと!(さっきはかがんで腰の辺りが視えてたのかも)
話は何度も耳にしたけど実際会うのは初めてだ!
会ってみたい!
話してみたい!
欲を言えば抱き着いて、モフモフモコモコしてみたい!
ニヤニヤが止められないよ。
岡村英海、36才、独身猫好き、もちろんパンダも大好きだ(パンダって ”熊猫” だもん!)。
モフモフ欲を燃料に、僕は本気の走りを見せて広い庭に滑り込む。
ズザーーーーーーッ!!
ハァ、ハァ、息を切らして上を視れば、そこにいたのは四尾のお姫を肩に乗っける巨大な熊猫。
デ、デカイ……!
ほ、ほ、ほ、本物だぁぁぁ!(ハート)
ゴゴゴゴゴゴ……!
ジャッキーさんから聞いた通り。
バラカスさんはデカくって、二階建てのオウチくらいの大きさだ。
僕は顔を思いっきり上げ、大きな声でご挨拶をしたんだよ。
「おーい! おーい! はじめましてー! 僕、ジャッキーさんと弥生さんとおんなじ会社の岡村英海と申します! マジョリカさんとも友達で、バラカスさんのお話は昔っから聞いてます! 僕の事はご存じないと思うけど、バラカスさんとは会ってみたいと常々思って、」
”いたんです!” と続ける予定が、白と黒のカワユイお顔とアンマッチにも程があるよな渋い美声に中断された。
『おっ! じゃあ、おまえが岡村か! 知ってるよ、俺の家族は勿論だが、色んなヤツがおまえの話をしているからな!……にしても、ケケケ! 岡村は噂通りの優男じゃねぇか!』
え、や、待って、僕ってば誰にどんな噂をされてるの?
てか、それを言うならバラカスさんも噂通りだ。
ホントに ”ケケケ!” と笑うんだもん(なんかカンドー!)。
「僕、バラカスさんに会えて嬉しいです! 今日は弥生さん達と一緒にいらしたんですか? ……って、そーいや他のみんなは? ひょっとして、まだ僕とバラカスさんしかいない感じです? 社長とかユリちゃんとか大和さんはどこにいるんだ?」
半分質問、もう半分は独り言ち、庭でキョロキョロしていると、後ろの方から元気な声が聞こえてきたの。
「じーじ! じーじ! ちっこしてきたー!」
「じーじ! じーじ! あそぶ! あそぶー!」
え!?
この声、幼くて可愛らしい話し方、これはもしやと振り向くと。
志村家の双子の天使、弥春ちゃんと茉春ちゃんだ!
その後ろには、長い髪をひとつにまとめた弥生さん、そのまた隣は黒いワンピにツインテールのヤヨちゃんが、マジョリカさんとお手々を繋いでニコニコと笑ってたんだ。
ああ……なんか良いなぁ。
みんなすっごく幸せそうで、笑顔がキラキラ眩しいや。
微笑ましさと羨ましさと、まぜこぜ気分で走る双子をを目で追った。
弥春ちゃんと茉春ちゃんは、”じーじ、じーじ” と言いながら、迷うコトなくこちらに向かって駆けてくる。
ふと、上を視れば、バラカスさんの顔がすっかり溶けていた。
そしてその場にドドーンと座ると、モッフモフの両手を広げて言ったんだ。
『弥春! 茉春! そんなに走るな! じーじはどこにも行きやしねぇよ! 転ばねぇよう、ゆっくりココまで歩いて来い! それからヤヨも来い! お姉ちゃんだからって我慢するこたねぇよ!』
あっ!
そっか!
”じーじ” ってバラカスさんのコトか!
言ってたもんな、マジョリカさんと弥生さんとジャッキーさんはバラカスさんの子供だと。
血の繋がりはないけれど、魂で繋がり合っているんだと。
それじゃあ当然、弥春ちゃんと茉春ちゃんとヤヨちゃんは、孫になると言うコトだ。




