第二十八章 霊媒師 三年後ー74
~~~さらに二年後の霊媒師達・4~~~
株式会社おくりび事務所内、平和な朝・誠視点
AM8:45
会社の始業は8時半、今は8時45分。
いつもだったらこの時間、茶でも飲みつつメールチェックをしている頃だ。
なんだけど、今朝はそんなの出来やしねぇ。
その理由ってのが、
『ユリリィィィン!!』
「お義母さぁぁん!!」
嫁と姑、事務所の中で両手を重ねて大騒ぎをしてるんだ。
しかもなんだよ ”ユリリン” って、ヘンな呼び方してやがる。
藤田家みんな ”リン付け” か?
”マコリン”、”サユリン”、”タカリン” ときて(祖父、祖母、母)、最後の仕上げに ”ユリリン” か?
んでもって、それよりさらに気になってるが、今日の朋の恰好だ。
真っ赤な髪に合いやしねぇ、なんだってそんな服を着てんだよ。
ユリ、ガツンとビシッと突っ込んでやれ。
”ヘンなあだ名つけないで!” とか ”なにそれコスプレ?” とかとかよ。
なに、朋はユリにメロメロだから、なにを言っても怒りゃしねぇさ(俺もだが)。
なんてコトを考えてたら、さっそくユリが朋に向かって言ったんだ。
俺はてっきり突っ込むモンだと思っていたが、
「わぁぁぁぁ♪(キラキラ) 今日のお義母さん素敵です! すっごく似合ってます!」
あーあーあー、思いっきり褒めちまった。
言われた朋はスッゲェニヤニヤ、『そうかぁ?』なんでデレている。
仕方がねぇ。
ココは一発、息子の俺が突っ込むか。
「いやいやチョイ待て。どーしたんだよ、その恰好。なんだってスーツなんか着てんだよ」
そう、今日の朋はなんでか知らんが、白のワイシャツ、紺のジャケット、同じく紺の膝丈スカート。
服だけ視れば、まるでどこかの会社員だ。
いつものラフな感じじゃねぇ、カーゴパンツはどこいった。
『えっへへー! 似合うか? 似合うだろう? ほら、アタシはさ、生きてた頃はレスラーで会社勤めをしてねぇからよ。1度で良いから、こういう恰好をしたかったんだ。今日はちょうど、おくりびにくる用事があったし、どうせならカッチョイイスーツ着て、出勤気分を味わおうと思ってな!』
朋ははしゃいでそう言うと、クルッとその場で一回転(ターンじゃなくてバク転だ。つか、そっちかよ)。
それを視たユリはと言うと、
「カッコイイ……(はーと)」
赤いほっぺでウットリしてて、朋をさらに調子に乗せた。
『そうかぁ?(デレデレ)カッコイイかぁ?(デレデレデレデレ)あーもーユリリンは本っっっ当にカワイイな! 大好きっ!』
「私もっ!」
キャーーーー!!←嫁と姑大騒ぎ
なんだこりゃ。
よく分からんが盛り上がってる。
ケンカするより良いけどよ、俺も仲間に入れてくれ。
……
…………
しばらくキャーキャー騒いだ後、朋はココで本来の用事を思い出してくれた。
『そうそう、忘れるコトだった。コレ、約束のブツだ』
そう言って差し出したのは小さな箱で、札を使ってしっかり封印されていた、……にもかかわらず、ここからでも禍々しさをヒシヒシ感じる。
スゲェな……昔のミューズの ”負の感情” どころじゃねぇ。
もっともっと強い瘴気だ。
「ああ、悪いな。助かるよ」
『これを使って ”生者除け” を作るのか?』
と、朋が聞く。
俺はそれに頷いた。
「そうだ。前はよ、ウチの社員が闇落ちしてて、その感情を人形に染み込ませて作ってたんだ。でもソイツ、今じゃすっかり ”負の感情” が出せなくなった。だからな、各星々で悪霊を滅して回る朋に頼んだんだよ。滅した悪霊の瘴気を集めて、有効活用しようと思って」
そうだ、今のミューズじゃ ”生者除け” は作れねぇ。
アイツはすっかり幸せで、すっかり優しい女になった。
ははっ!
まったくな、いつか変わってくれたら良いと思っていたけど、まさかこんなに変わるだなんて思ってもみなかった。
本当に良かった、……人は誰でも変われるからよ。
いつだって、いくつになってもやり直しができるんだ。
俺はそれがすごく嬉しい。
本当に、本当にな____




