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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十八章 霊媒師 三年後ー52

~~~2日目・月曜日~~~


AM7:30

神奈川県K市、岡村家リビング



英海ひでみ、あんたおかわりは?」


炊飯ジャーを横に従えしゃもじをブンブン振っている、母さんが僕に片手をさしだした。


「あ、じゃあ軽く半分だけ」


言いながら、空になったご飯茶碗をパスすると、それを聞いてた父さんが、


「半分なんて、それじゃあ大きくなれないぞ」


真面目な顔で言ったんだ。


「え……ちょ、父さんナニ言ってんの? 僕もう34なんだけど。この年で大きくなるなら横方向しかないんだけど」


冗談だとは思うけど、あまりに顔が真顔なもんで念の為のツッコミだ。

するとそこに母さんも乗っかって、


「そうよぉ。お父さん、英海ひでみの年忘れちゃったの? この子もこんなでイイ大人になったんだから。子ども扱いしちゃダメよ。ハイ、ゴハンお待たせ。たくさん食べなさい」


とまぁ、ゴハンをよそってくれたは良いけど、ナニコレ!


「ちょっとちょっとー! 僕、軽く半分だけって言ったじゃなーい! なんですこぶる山盛りなのよ! こんなに食べられないよー!」


やってもらってアレなんだけど、あまりの量に思わず文句を言ってしまった。

だって、残すの勿体ないじゃない。


「あ、あら、そんなに多かった? で、でも、昔はこれくらい、ペロッと食べてたわよね。大丈夫よぉ、食べられるわよぉ!」


息子の文句にアセアセしている母さんを見て、父さんはなんでかニヤニヤ嬉しそう。

まったくさ、僕からすればドッチモドッチなんだけど。


「昔っていつの話よ。この量で食べられたのは中学高校の時じゃない? あの頃はガチな育ちざかりだったし、部活もやってたからね。でも今は34なの。んもー、よそっちゃったし頑張って食べるけど……2人共、僕が立派な中年だってコトは忘れないでよねっ!」


……って、朝から僕はなに言ってんだろ。

だけどまぁ、いつもと違って賑やかゴハンだ。



昨日、僕とお姫とココにはいないひみちゃんと、都内にある水族館に行ってきた。

それは楽しい1日で、最後に乗った観覧車では、地上117メートルの高い場所から見える景色に大歓声を上げたんだ。


たっぷり遊んで電車に乗って、僕はそのままアパートに帰るつもりでいたんだけどさ、お姫が突然こんなコトを言いだしたんだ。


『うななうななうなななうななっ!』←訳:トウとカアときなこに会いたい!


え?

今から?

だってもう夜だけど、帰りの電車無くなっちゃうけど……と、3秒くらい考えたけど、でもホラ、僕ってお姫の言いなりじゃん?

なんでもかんでも願いを叶えてあげたいし、電車がなければ泊まれば良いし、それに……ひみちゃんも、母さん達に会いたいかなぁと思ってさ。

それで夜に電話して、”今から行くね” と突撃したの。


結果としては来て良かったよ。

母さんも父さんも、きなこも一緒に大喜びで、好きなだけ泊まっていけと大歓迎してくれたんだ。




同じく2日目、ゴハンを食べ終えてのAM8:10



「「 気をつけて行ってらっしゃい 」」←僕と母さん

『うなななぁ』←訳:いってらぁ(大福)

「ほにゃぁぁ」←訳:しゃぁぁ(きなこ)


「行ってきまーす」←父さん


玄関先で岡村家が勢揃い。

2人とニニャンで会社に出かける父さんを見送った。

残された母と息子は手分けをしながら家事仕事。

僕はゴハンの後片付けを、母さんは掃除と洗濯、……で、生きてる猫とユーレー猫は、二匹仲良くソファの上でうたた寝だ(キャー! カワユー!)。


……

…………


「あー、終わった終わった。2人でやると早いわねぇ。英海ひでみ、お茶でも飲みましょうよ。まだ帰らないでしょう?」


母さんはそう言って、カチャカチャ音をさせながらお茶の用意をしてくれた。


「うん、飲む。今日はなんのお茶? ……甘い香りだ、」


お湯を入れたティーポットから、仄かに漂うお花のような良い香り。

ウチの家族はお酒を一切飲まない代わり、ハーブティーを好んで飲むの。

お酒に比べて値段も安いし、色んな種類をたくさんストックしてるんだ。

季節とか体調だとか、その日の気分でなにを飲むか決めるんだけど……


「これはリンデンフラワーよ。甘い香りでほんわりするし、味もぜんぜんクセがないの。効果としては消化を助けてくれるのと、美肌効果もあるのよ……ふふふ」


なるほど、そこね。

いくつになっても身だしなみに(……で、良いのか?)気を遣うのは良い事です。


「ふぅん、消化促進は良いね。でも、僕は男だから美肌効果はどっちでも良いけど」


「あらぁ、ダメよぉ。最近は男の人だってスキンケアをするんだから。英海ひでみもやった方が良いわよ。その方がモテるから」


「えぇ!? そ、そうなの?」


「そうよぉ。だからハイ、これ飲んで美肌になって、いい加減彼女つくんなさい。どうせいないんでしょう? まったくもう、はぁぁぁ…………と言うのは冗談。リンデンはね、心身共に緊張を解いてくれる効果もあるのよ。要はリラックス出来るんだけど……あんた、なんか様子がおかしいわ。なにかあったんでしょ。隠したって分かるんだから」


ドキーーーーン!!


え、ちょ……マジか……なんで分かった?

実家ここに来て、僕、なにも言ってないよねぇ?

普通に喋って普通に笑って、普通にゴハンを食べてたのにさ。

なのに分かっちゃったの? なんで? ホントになんで?

……って、この状況。

なにがあったか話した方が良いのかな、……でも、内容が内容だから(”希少の子” とか ”理解を担う者” とかだし)話しても伝わりにくいと思うんだ。

それに今は、下手に話すと泣くかもしれない、てか泣くわ。

どうしようかと考えて、曖昧に笑う事しか出来なかった。

そんなヘタレな僕を見て、母さんはサラッとサクッとこう言ったんだ。


「ま、なにがあったか言いたくなければそれでもいいわ。とりあえずリンデン飲んでゆっくりしなさい。肌もキレイになるわよ」


うは……ははは。

そうなんだ、それで良いんだ。

はは……ははは、……なんか、ありがとね。


リンデンティーを浴びるように飲みながら、僕と母さんは古いアルバムを眺めていた。

それは僕の幼い頃の写真でさ、今より若い母さんと父さんが寄り添っているものだった。


「あぁ……懐かしいわぁ。この頃の英海ひでみ、可愛いわねぇ。あんたはね、昔はよく女の子と間違えられてたのよ」


当時の写真はデータじゃなくてプリントアウトが主流の頃だ。

一人っ子の僕の写真は大量で、分厚いアルバムは積みあがるほど数がある。


「あ、ほら見て! これ、公園で遊んでる! あんたは覚えてる? 昔近所に木の公園があったのよ。そこはブランコもシーソーも、ぜーんぶ木で作られててね。そこがあんたのお気に入りだったの。よく通ったわぁ。今では取り壊されてなくなっちゃったけどね」


木の公園、……ああ、もちろん覚えてるよ。

と言うか、つい2日前に遊んできた。

本物じゃないけれど、ひみちゃんが再現した公園だけど、……ブランコもシーソーも乗ったんだ。


僕は話を聞きながら、幼い頃の自分の姿を穴があくほど眺めてた。

写真には当然ながら僕しか写ってないけれど、視えないだけで僕の中にはひみちゃんが住んでいた。

公園も2人で一緒に遊んでいたんだ。



「思い出すわぁ。この頃あんたは3才で、ヨチヨチ歩きで言葉もうんと幼くて、可愛くて可愛くて仕方がなかった。……でもね、時々ヘンな事を言ってたのよ」


母さんは、昔の話をまるで昨日の事のように、僕に話して聞かせてくれた。

その話と言うのが……


「あの頃の英海ひでみはね、……ん、なんて言うのかしら……誰もいない所で1人でよく喋ってたのよ。独り言とはチガウ、誰かと話をしてるみたいに」


え……1人で誰かと話してた?

ん……それって……もしかして……


「その時の英海ひでみ、すごくゴキゲンだったわ。家の中でも公園でも楽しそうにニコニコ笑ってた。最初はちょっと怖かったけど、ママ友に小さい子にはよくある事だと教えてもらったの。イマジナリーフレンド……だったかしら。放っておけば、そのうちいなくなるから大丈夫。叱ったり無理に止めさせたりしないで見守ってればいいって」


やっぱりそうだ、母さんは僕とひみちゃんが話しているのを聞いていたんだ。


「それはね、あんたが小学校に上がるまで続いたわ。それまではひっきりなしに話してたから、私、あんたの ”オトモダチ” の名前まで覚えちゃったのよ」


え……!?

そうなの!?

じゃあ母さんは名前を知ってるの!?


「母さん! ……あ、ごめ、大きな声出しちゃった。あのさ、今の話。母さんは僕の ”視えないオトモダチ” の名前を知ってるって言ったよね? それ、今でも覚えてる?」


心臓がドキドキしだした。

ひみちゃんは言っていた。

母さんも父さんも好きなんだって、自分の本当の親みたいに思ってるって。

そんな母さんがもし、薄っすらでも彼の存在に気がついていて、名前まで知っていたら……彼はどんなに喜ぶだろう。


「や、やだ、びっくりさせないでよ。……覚えてるわ、英海ひでみのオトモダチの名前は ”ひみちゃん” でしょう? ミエナイけれど、あんたの初めての友達だもの。忘れないわ」


ああ……ああ……そうだ……大正解だ。

彼の名前は ”ひみちゃん” 、僕の大事な友達だよ。







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