表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊媒師募集  作者: たまこ
1165/1194

第二十八章 霊媒師 三年後ー53

~~~3日目・火曜日~~~


AM8:30

神奈川県K市、岡村家玄関


「じゃあ帰るね。また来るよ」

『うなぁぅ』←訳:くるぅ


言いながら靴を履き、リュックも背負ってスマホはポッケに突っ込んで、帰る準備が整った。

後ろに立ってる母さんは、きなこを抱えて僕とお姫のお見送りだ。


「ええ、またいつでもいらっしゃい。あ、そうそう。今日のうちに宅急便出しとくから。お米とお味噌と醤油と缶詰。あとレトルト食品と洗剤も入れとくわね」


「わぁ! いつもいつもありがとう。救援物資、本気で助かるよ」


本当にありがたい。

お米とか重たい物は、買いに行くのも大変だしさ、なにより気持ちが嬉しいの。

こうやって実家に戻ってくるたんび、息子を想ってお土産いっぱいくれるんだもの(荷物になるから宅配で)。


「あらそう? こんなので良かったらいつでも送ってあげるわよ。そうだ、リンデンも入れておくわね。寝る前に飲むとよく眠れるから。英海ひでみ、ここはあんたの家なんだからいつ帰ってきて良いの。なにかあったら、…ううん、なにもなくてもね。大福ちゃんもそうよ。英海ひでみの都合に合わせる事はないわ。イチニャンでも好きな時に帰っておいで。ササミいーっぱい茹でてあげる!」


『うなな!』←訳:ササミ!(歓喜の猫又)

「ほにゃにゃ!」←訳:ササミ!(便乗するきなこ)


”ササミササミ” と喜ぶ猫ズに親子でデレデレしまくって、最後は笑って手を振り合って、僕らは実家をあとにした。



結局、実家に2泊もしてしまった。

一晩泊まって帰るつもりが、アルバム見たりお茶を飲んだり、ゆっくりのんびりしちゃってさ、気づけは夜で夕飯食べて、さぁ帰ろうと思ったら、お姫ときなこがキャッキャと遊んで楽しそうにしてるじゃない(きなこの霊感は健在)。

それ視ちゃったら、これはジャマしちゃダメなやつ、無理っすわ、帰れませんわと2泊目決定しちゃったの。

ホントは昨日、遅くとも午後にはどこかにおでかけしようと思っていたのに…………ま、いっか。

実家で過ごしてのんびり出来たし、それに、ひみちゃんを覚えていたのは母さんだけじゃないって分かった。

聞けば、父さんも覚えていたんだ。


____英海ひでのミエナイオトモダチ?

____覚えてるよ、”ひみちゃん” だろう?


それがすっごく嬉しかった。

ひみちゃんも喜んでるに違いない。



……

…………

………………


「さて、お姫さま。今日はこれからテクテク歩いて大仏さまを見に行こう。電車には乗らないで海沿いをお散歩しながら。今日も良い天気だし、気持ちよさそうだろう?」


この場所からなら歩いて行っても20分もかからない(実家出て数メートルのトコにいる)。

お姫と僕と、ここにはいないひみちゃんと、道草しながら楽しく行こう。


「ではでは、れっつごー!」

『うっなー!』←訳:れっごー!


さっそくテクテク、僕らは仲良く歩き出す。

空を見れば薄青色の広い空。

明るい陽ざしが降り注ぎ、まだ少し肌寒いけど春の気配もチラホラ感じる。

横をすぎるはEノ電の、ガタンゴトンと四両編成。

乗り物好きの姫のおめめがキラキラだ。


ああ、楽しいなぁ。

ひみちゃんも楽しいって思ってくれるかな。

ひみちゃん……”おくりび” のみんなとも会わせてあげたかった。

僕のフリじゃなくってさ、ちゃんと、ひみちゃんとして。


そんな事を考えながら歩いてた。

平日の午前中、人の数は多くもないが少なくもない。

この時間じゃ学生とかはいないけど、地元の人や観光の人、いろんな人が道を行く、………………ん……?


あれ……?

前から来る女性ひと、……どこかで見たよな感じがするな……気のせいか?

前方目測150メートル強。

いまだ視力は2.0の僕だけど、さすがにこの距離、個体識別は難しい、……にもかかわらず、なんだかすっごく気になるの。

かと言ってジロジロ見るのも失礼だ(相手が女性ならなおさら)。

ま、気のせいだろ。

こんな所で知り合いに会う確率は低いもん、……と、思ってた。

けど違ったんだ。

向こうから来る女性。

その距離が削られるにつれ、僕は目を疑った。


「え……? なんでココにいるの……? 偶然……? てか仕事は……?」


頭の中ではハテナマークがポンポン飛んで、そしてとうとう、距離が詰まって互いに足を止めたんだ。


そして女性はこう言った。


「岡村さん、おはようございます」


「あ、ああ、おはよう。…………って、なんでアナタがココにいるの?」


「岡村さんを追ってきました。誰かを霊視で覗き視るのは実に3年振りです。雑作もないですね。アッサリと視つける事が出来ました」


霊視で居所探ったの?

それでわざわざ神奈川ここまで来たの?

え……?

どうしたのよ、水渦みうずさん。


こんな所で知ってる人に会うなんて、びっくりしすぎて動揺してる。

しかもそれは偶然じゃなく、霊視で探して神奈川県まで来ちゃうだなんて、余程の急用?

や、だったらなんで電話しないの?

電話じゃなくても霊力ちからを使って声を飛ばせば簡単なのに、わざわざ遥々こんなトコまで……ハッ!

もしかして怒ってる?(心当りはないけどさ)

知らない間に僕がなにかをやらかしちゃって、直接顔見て文句を言わなきゃ気が済まないとかそんな感じ?

でもな、怒ってるとかそんな顔はしてないのよね……むぅ、分からん。

聞きたいコトが多すぎるけど、あまりに多くてなにから聞いたら良いものか……とりあえず。


「えっと……水渦みうずさん、今日は仕事じゃなかったの?」


薄っすら残る僕の記憶じゃ、水渦みうずさんは今頃現場にいるはずでは……(先週まで事務仕事をしてたからみんなのシフトを知っている)


「ああ、仕事は休みました。突発で、」


えぇ!?

シレッと答えた水渦みうずさん……なんだけど、僕はめちゃくちゃ驚いたんだ。


「突発!? 水渦みうずさんが?」


「はい。今日だけはどうしても此処に来たかったので」


「ややや、待ってよ! 体調不良じゃなさそうだし、現場を飛ばして突発なんて今までなかったでしょうよ! どんな理由で、……って、その前に、水渦みうずさんの現場は誰が行ったの……?」


僕は有給、弥生さんは育休中、この時点で2人減だ。

行ける霊媒師ひとはいるのかな、いや……人数的に無理だろう。

聞いてるだけで汗を掻く、僕がアワアワ慌てていると、水渦みうずさんは澄ました顔してこう言った。


「心配ご無用。現場には、私の代わりに先代と瀬山さんが向かってくれました。最強のツーマンセルです。安心して任せられますよ」


「えぇ! 代打がまさかのレジェンド2人!? マジか……そうきたか……半世紀ぶりのツーマンセル復活じゃん!」


そうだったのか、確かにそれなら安心だ。

てかむしろ、仲良し2人で現場に入れて喜んでるかもしれないよ。


「そういう訳で何も問題ありません」


キリッと一言、水渦みうずさんはかすかに笑う。


「あはは、そうだね。これ以上はないや。……で? 水渦みうずさんはどうしてココに? 会社を休んで僕を探して来たって事は、なにか急用があるのかな?」


聞いてみた。

東京都下から神奈川まで、電車で来るにも近い距離じゃないのにさ。

一体なんの用事だろう?


「用事、そうですね。正直、勢いだけで来てしまった感は否めませんが……申し訳ありません。社長から ”ペルソナ” の話を聞いてしまいました。その事で岡村さんがとても落ち込んでいるというのも、」


あ……話、聞いたんだ。

参ったな……内緒にする気はなかったけれど、でも……落ち込んでるとか言われると……なんとなく気まずいな、……そんな事を考えて、僕は……そう、なんとなく黙ってしまった。

水渦みうずさんは、そんな僕をジッと見て、何度かなにかを言いかけて、口をパクパクしてたんだけど、少しして、小さな声でこんな事を言い出したんだ。


「……重ね重ね申し訳ありません。許可もなく貴方を覗いて、勝手に此処まで押しかけました。すぐに帰ります、……ですが、もし良かったら、一杯だけお茶を奢らせていただけませんか? どこかで座って温かいお茶を。私と、岡村さんと、猫又と、……それから ”ペルソナ” も一緒に、」


最後の方は尻すぼみ。

でも、彼女は言った、”ペルソナも一緒に” と。

その一言が沁みるほど嬉しかった。


水渦みうずさんは僕の返事を待ちながら、おずおずと僕の首元に手をやった。

なんだ……? と思えば。

マフラー代わりに巻いてたタオルが乱れていたのか、優しく静かに整えてくれたんだ。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ