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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十八章 霊媒師 三年後ー51


明けて翌日、早朝5時。

僕は社長に電話した。


「…………という事が昨日あって、……うん、だからもう貧血は大丈夫。身体的には絶好調で、霊力ちからも発動し放題。まったくもって問題ナシだよ。……うん、うん……ありがとうございます。本当に社長にもユリちゃんにも、みんなに心配かけちゃった。ごめんなさい、……え? そんな事はどうでも良いの? ちょ、良かないでしょ。現場にも出られなくって迷惑かけたし、それでなくても弥生さんが育休中で1人減なのにさ。僕、復帰したらバリバリ現場に出るからね。ハードなトコでもガンガンアサインしてください」


まずは報告。

ひみちゃん……や、社長にすれば ”ペルソナ” だけど、彼となにがあったのか、彼にどんな事情があったか、そのすべてを報告したんだ。

最初社長は驚いてたけど、ひみちゃんが消えた事を話し時には「おまえ……大丈夫か?」なんて、僕を心配してくれた。

社長の気持ちがありがたかった。

本当はさ、昨日姫にグチッたみたいに、辛い気持ちを吐き出してしまいたくって、喉まで言葉が出かかったんだ。

でも、朝っぱらから暗い話じゃ悪いと思って、どうにか自粛をしたんだよ。

それなのに……


「ん……ありがと、僕は大丈夫だよ。すっかり身体は元気だし、貧血も息切れも眩暈もないし、だからぜんぜんダイジョウブ、…………って、ホントだってば、無理してないよ、…………え? ……ん、うん、そうだけど……うん、……うん、ごめ、チガウの、うん、うん? ……ん……そうだね、だけど僕は迷惑ばっかりかけちゃって、……うん、ああ……ごめん……ごめん、ぼ、僕、本当は大丈夫じゃない、辛いんだ」


結局、僕は社長に甘えてしまった。

しつこいくらいに「ムリすんな」とか「見栄張るな」とか、挙句の果てには「今からソッチに行ってやる」とか言い出しちゃって、そんなん言われて張ってた気持ちがプツンと切れて、思わず弱音を吐いちゃったんだ。

ああもう、この人はいっつもこうだ。

普段はふざけてばっかしなのに、デリカシーも欠けてるクセに、誰かが辛くて苦しい時は、迷う事なく手を差し伸べる。



それからたっぷり1時間。

甘えすぎかと思ったけれど、社長に話を聞いてもらった。

悲しい気持ちも辛い気持ちも悔いてる気持ちもなにもかもだ。

その流れで、今日からの3日間は、ひみちゃんの事だけを想って過ごしたいのだと打ち明けた。

だから会社を休みたいと、ワガママついでに言ったんだ。


「本当にごめんなさい。ぜんぶで3日、……今日が日曜だから、月曜と火曜にお休みをいただきたいの。勝手を言ってるのは分かってるんだけど……」


散々迷惑かけたクセして、言ってて声が小さくなっちゃう。

どうだろう、許可してくれるかな。

僕は握ったスマホの受話越しに、社長の返事を待っていた……が、待つほど時間はかからなかった。

社長は静かに、


「ああ、いいさ。俺が駄目って言うと思うか? ゆっくり休め。気がすむまでな」


そう、言ってくれたんだ。





~~~1日目・日曜日~~~


AM7:03


「さてと……忘れ物はないかな? ハンカチよーし、ウェットティッシュよーし、スマホよーし、充電器よーし、お財布よーし、お弁当よーし、」


ワンルームの狭い玄関。

そこで僕は、お出かけ前の荷物のチェックに余念がない。

大きなリュックを上からのぞいて指さし確認。

僕が ”よーし” と言うたびに、となりのお姫も ”うな、うな” と頷いている(キャー! 可愛いっ! 宇宙イチッ! キューティーすぎてマーベラスゥ!)。

今日はこれからお出かけするんだ。

僕と大福と、あと、ここにはいないひみちゃんも一緒にね。


少し前。

早朝6時に社長との電話を終えて、それから僕は忙しかった。

ご飯を炊いて、卵とシャケを同時に焼いてササミも茹でての弁当作り。

それが終わればキッチンの後片付けとベッドメイクをササッと済ませ、持ってく荷物をリュックに詰めこみ最後は着替えて準備完了。

マルチタスクでここまでざっと1時間。

普段の僕の、出勤準備はとにかくモタモタしてるというのに、我ながらやれば出来ると驚いた朝だった。



「家の鍵もよーし、……うん、完璧! 忘れ物は無しだ! そんじゃあ大福もひみちゃんも出発しようか」


『うなー!』←訳:ひゃほー!


リュックは重いが気分は上々、天気も良いしお出かけ日和だ。

靴を履き、ポンチョを羽織り、マフラー代わりに首に巻くのは一般人には視えないタオル。

そう……僕が昨日、霊力ちからでもって造ったタオル、ひみちゃんのお気に入りだ。

ファッション的にはどうかと思うが、これを一緒に持って行ったら、ひみちゃんが喜ぶような気がしてさ。

ひみちゃんの唯一の形見、彼は泣くたびこれで涙を拭いていたっけ。

泣き虫ひみちゃん、ワガママひみちゃん、大事な僕のオトモダチ、魂分けた双子の相方。

さぁ、キミはどこに出かけたい?

キミの行きたい所に行こう。



ひとまず僕らは駅に向かった。

リュックを背負ってテクテクと、5分も歩けば到着だ。

改札口ではお姫がピョンピョン跳ねながら、


『うなななー! うななななー!!』←訳:電車にゃー! 早く乗るにゃー!


テンションマックス、ウキウキだ。

大福は意外な事に ”動く鉄の箱” が大好きなのだ。

車だったり電車だったり飛行機だったり、乗り物全般なんでも好きだが、特に電車は四尾をフリフリ浮かれちゃう。

それゆえに……


『うっな! うっなうななー!』←訳:きっぷ! きっぷかってー!


毎回毎回切符をおねだりされるんだ(通勤時は除く)。

まったくさ、ユーレー猫は切符なんか買わなくたってダイジョブなのに。

今までの買った切符はテイクアウトでオウチに保管(大福の宝箱に入れてある)。

まぁでも、切符くらいで喜んでくれるなら、何枚でも買っちゃうけどねっ!


「はいよー。ちゃーんと買ってあげるからチョットだけ待ってねー」


言いながら券売機にお金を投入。

とりあえず1番安い一区間のをポチッとな、……とした後に、僕は少し考えて、追加で小銭を投入した。


「ひみちゃんの分も買おう、」


ははは、こんな事してばかみたいかな。

誰かが見たら、お金の無駄だと思われちゃうかもしれないよ。

でも、良いんだ。

僕にとってはムダじゃないもの。

もしもココにひみちゃんがいたら、お姫と一緒に ”切符切符” と騒ぐだろうし、買ってあげたらやっぱりお姫と一緒になって、ウキウキ浮かれて喜んじゃうと思うのよ。



そんなコトを考えながら、券売機の吐き出し口から2枚の切符を手に取って、1枚を猫の鼻に近づけた。

姫はスンスン匂いを嗅いで、満足そうに喉をゴロゴロ鳴らしてる。

ああ可愛い、可愛いにも程がある……なんて、鼻の下をロングに伸ばしてニヤニヤしてると、乗りたい電車の到着を知らせるアナウンスが聞こえてきたんだ。


「ヤバイ! もう来ちゃうみたい! お姫、走るよ!」


『うなっ!』←訳:うん!


そんなこんなでダッシュをかまして、なんとか電車に乗り込んだ僕達は、そこからスヤスヤ、目的地まで眠りこけてしまったのだ。



電車の中でスヤスヤ眠って1時間とあと半分、目的地に到着した。

降りた駅を後にして、そのまま真っ直ぐ400メートル。

男の足なら5分もしないその距離に、現れたのは見上げる程に巨大でキレイなガラスのドーム、ここの施設のシンボルだ。


『ななっ! うななななー!!』←訳:ななっ! ナニアレー!!


あはは、立派なドームを目の前に、お姫がえらく興奮してる。

僕のまわりをダッシュでウロチョロしちゃってさ、まるでちっちゃな子供みたいだ。


「ほらぁ、大福少しは落ち着いて、転んだら大変だよ……って聞いちゃいないな。すごいはしゃぎようだよ。茹でたササミに ”ちゅるー” をかけた時くらいのテンションだわ。ふふふ……まさかこんなに喜ぶなんて、ココを選んで大正解だ」


お出かけ所にチョイスしたのは水族館。

海のイキモノ達がいっぱいいるんだ。

マグロにペンギン、サメにウミガメ、タコにイカにクラゲでしょ。

それから、深海の隠れスターのダイオウグソクムシもいる(ダンゴムシの上位互換みたいな子、カッコいいから結構好きなのよ)。

まわりは海だし中は広いし、1日中遊べる場所だ。

どこに行こうか迷ったけれど、ひみちゃんは視た目は大人で中身はコドモ……ゆえに、動物園とか水族館とか喜びそうだと思ったの。

で、陸と海と、どっちのイキモノを見に行くか、迷うトコではあったんだけど……


『うなな! うなななー!』←訳:サカナ! おいしそー!!


ココはやっぱり姫優先でいくべきだと思ってさ。

ひみちゃんも僕バリ(・・・)の姫好きだもん、これがベストと確信してる。


あー、それにしても良い天気だ。

水族館を1日たっぷり堪能したら、夕方は海辺を散歩してみよう(キレイな貝殻拾いたい)。

そんでもって暗くなったら観覧車にも乗っちゃうよ(すぐ近くにあるの!)。

水族館のチケット見せれば1割引きになるって言うし、これはもう乗らない訳にはいきますまい。


立てたプランに僕は1人で ”ウンウン” 頷き、パーフェクトだと自画自賛、……だったんだけど。


『うなー♪(テチテチテチテチ!)』


予想の3倍はしゃぐお姫がアッチコッチに走り出し(早っ!待って!)、泳ぐ魚をよくよく視ようとアクリルガラスにへばいついたり(カワユー!)、もっと視ようとガラスをすり抜け水の中に入っちゃったり(え!?ちょっ!)、とにかくもう大変で、でもおかしくて、傍からみれば僕は1人でいるというのに笑ってばっかいたんだよ。



朝一番から夕方まで。

僕らはたっぷり水族館を楽しんだ。

はしゃぐお姫に振り回されつつ、お昼は持参のお弁当食べて、帰り際にはお土産用のお菓子を3箱、それと、弥春みはるちゃんと茉春まはるちゃんにもなにか買ってあげたくて、可愛いイルカの縫いぐるみをチョイスした(色違い)。

それらをレジに持ち込んで、荷物になるからアパート宛てに発送手配。

お買い物に大満足で、ホクホクしながらその足で海辺の散歩に行ったんだ。



海は綺麗だった。

水平線には沈む太陽、夕焼けが波に溶けだしキラキラ光って目に眩しいの。

砂浜をゆっくりのんびり歩きながら、ここにはいないひみちゃんに語りかけてみたんだよ。


「視て、すっごい綺麗だよ。波が細かく光ってる……夕焼けで、海がオレンジジュースになったみたいだ。ひみちゃんがここにいたら、”ジュース飲みたーい!” なんて、お姫と一緒に駆け出しそうだ。あはは、絶対やるだろうな…………あはは、ははは……視たかったな……ひみちゃん、ここにいたら良かったのに。なんでいないんだよ」


当然ながら返事はない、……けど、ひみちゃんの笑った顔が頭の中に浮かぶんだ。

僕とおんなじ顔してさ、子供みたいな顔してさ、……嬉しそうにニコニコしてるの。


「…………ひみちゃんって、今はどこにいるんだろ。”声のヒト” は ”回収した” って言ってた。とういう事は、きっとどこかにいるはずなんだ。……とはいっても、”自我を消した” と言っていたからなぁ……僕の事は忘れちゃったんだろうなぁ、」


僕とひみちゃん、さかさまになっちゃった。

好きなヒトに忘れられちゃう、それがこんなに辛いだなんて想像以上だ。

ひみちゃん、ごめんね。

こんな気持ちをずっと抱えてきたんだね。


…………もう、

|僕を知ってるひみちゃん《・・・・・・・・・・・》とは会えないのかな。

どうなんだろう、会えたら良いけど分からないや。

そうだ、僕はなにも分かってない、知らない事が多すぎる。

ひみちゃんの事、”理解を担う者” の事、それから ”希少の子” の事も。

それらを知れば、先の未来は変わるだろうか。

”希少の子” だか ”サポート” だか知らないけど、訳も分からず一方的にひみちゃんを奪われた。

すべては僕の力不足が原因だけど、足りない知識を補えば、それを力に変えられたなら、納得のいかない事にとことん対抗出来るだろうか。

そしていつか、ひみちゃんを取り戻せるだろうか、…………それすらも……分からない、分からないけど____


____それでも、

 


太陽はどんどん沈む。

瞬き3つもしている間に光は海に呑まれてく。

代わり、濃紺色の夜空が上から降りてきて、辺りは徐々に暗くなる。

夕と夜の狭間に立って、僕は大きく息を吸う。


両手両五指、向かい合わせに湾曲させた。

重ね絡める慣れた印、……そう言えば、ひみちゃんは片手だけで印を結んでたな。

ひみちゃんと同じ事、僕も出来るようになりたいよ。

今度、瀬山さんに教えてもらおう。


そんな事を考えながら印のすべてを結びきる。

僕の両手は霊力ちからが溢れ、両五指は赤く光って火花が散ってる。

それを真っすぐ天に向け、僕は延々霊矢を撃った。

薄闇に赤い光が尾を引いて、何百何千、数多の霊矢が空に飛ぶ。

ひみちゃんへの気持ちを込めて、まだうっすらだけど僕の決意も込めながら。







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