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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十八章 霊媒師 三年後ー18


結局、あの日の水渦みうずさんは、”ペルソナ” からなにを言われたのかを頑なに教えてくれなかった。

僕はそれが気になったけど、しつこく聞くのも悪いと思って追及するのを止めたんだ。

ただ、一つだけ心配事があったんだけど……



____内容は控えますが、

____”ペルソナ” が言ったのは、

____私を傷つけるような言葉ではありませんでした、

____どうせまた心配しているのでしょう?

____同じ顔の ”ペルソナ” が酷い事を言っていたらどうしよう……と、

____大丈夫です、

____そうではないので安心してください、



これを聞いて気持ちが楽になったんだ。

ホッとして息を吐き、そして少し笑ってしまった。

昔からこうだ。

水渦みうずさんは僕の心を読むんだよ。

最初はさ、霊視で心も読めるんだと思ってた。

でも、「岡村さんは単純ですし、顔に出るので分かりやすいです」 こう言って ”霊視でココロを読んでる説” を否定したんだ。

それにしてはしょっちゅう心を読まれるな……とは思うけど、昔はチョット怖かったけど、今となってはもう慣れた。

むしろ不安なこんな時は、この先回りが心地よくも感じてるんだ。

ま、それは恥ずかしいから言わないけどね。


……

…………

………………



次の日の朝。

喉の痛みで目が覚めた。

時計を見れば早朝4時半、外は暗く冷え込みもかなり激しい。

僕は布団をかぶり直して身体を丸めた。


「うぁあ……喉イッテ……もしかして風邪かなぁ……昨日の晩は寒かったもんなぁ」


喉の痛みに心当りがいくつもある。

話を終えて会社を出たのが22時頃。

夜も遅いし、水渦みうずさんを家まで送って帰って来たのが0時過ぎ。

次の日も仕事だし、慌ててシャワーを浴びたあとは、濡れた髪もそのままにベッドに潜り込んだんだ。

暖房はつけたけど、タイマーだから1時間後にスィッチオフで、そこからガンガン冷えたのかもしれないよ。

アウチ……油断した。


と、とりあえず、暖房つけて二度寝しよう。

この時間ならあと2時間は眠れるし。

そしたらチョットは良くなるかもしれないじゃーん……って、良くなってくれないと困るよ。

今日は出勤、しかもまだ火曜日だ。

週末までまだまだあるし、依頼者様へのお手紙だって溜まってる。

ココは一つ、気合いでなんとかしなくっちゃ!


…………と、かつてない程気合いを入れて眠ってみたけど、1時間も経たないうちに目が覚めた。


ゴホッ!

ゴホッゴホッ!


ちょ、ダメ、ナニコレ!

オプションで咳まで追加されちゃった!

喉は痛いし咳は出るし、これで熱まであったらさ、風邪の ”猪鹿蝶いのしかちょう” が揃っちゃう!


よし、揃わせないぞー!

喉と咳、ここまでで ”猪鹿いのしか” 2つが揃ったけど、熱が無ければギリセーフ!

薬飲んでマスクして、それで会社に出勤だ!

測定ぇぇぇ!!


ピッ!


早ーーーっ!

最近の体温計って測定するのも一瞬だ!

どれどれ?

僕の予想じゃあっても7度くらいじゃないか?


____38.5℃


……ん?

……え?

なにこの数字……38度超え?

マジで?

うっそーん!!

”蝶” まで揃っちゃったー!!


あ……駄目だ、数字を見たら具合が悪くなってきた。

そっか……熱もあったんだ……だから(変に)テンション高かったんだ。


ゴホッ!

ゴホッゴホッゴホッ!

ゴホッゴホッ!


咳もひどくなってきたし頭もぼーっとする。

これ、ガチでダメなやつだ。

仕方がない、今日は休もう。

無理して行って、こんなんじゃ逆に迷惑かけちゃうよ。

ユリちゃんに風邪を移したくないし(社長はダイジョブ移らない)。



そうと決めたら社長に連絡……なんだけど。

5時半か、さすがに早いか?

でもたぶん社長は起きてる。

この時間なら、大和さんと組手試合をしている頃だ。

いいや、かけちゃえ。

スマホを手に取り迷わずタップ。

呼び出し音を聞いてると、


『う、うなぁん!』


心配そうに四尾を揺らす、お姫が傍に寄って来た。


「大福、心配してくれるの? ありがとね(ゴホッ!ゴホッ!)。今日一日寝てれば治るよ(ゴホッ!)。ああでもお姫が猫又で良かった。僕の風邪が移る心配がないからさ(ゴホッ!ゴホッ!)。今日もずっと一緒にいてね。姫がいたら風邪なんてすぐ治っちゃ、あ! 社長? 岡村です。朝早くからゴメ(ゴホッ!ゴホッ!) あぅ……すみません。どうやら風邪を引いたみたいで、今日はお休みいただけますか?」


やっぱり社長は起きていた。

僕の掠れた声を聞いて、めっちゃ心配してくれる。


「え? 食べる物と飲む物? ストックあるから大丈夫。うん、うん、病院も行ってくるよ(ゴホッ!ゴホッ!)、なるべく今日中には治すから……って無理するな? 明日も休んでいい? ご、ごめんなさい。キツかったらそうさせてもらうかも、……うん、うん、ありがとございます。ちゃんと温かくして眠るから、……あ、そだ! それとね、僕が風邪を引いた事、水渦みうずさんには言わないでほしいんだ。昨日一緒にいたから、自分のせいだと思っちゃいそう、」


社長に固く口止めをしてから電話を切った。

会社を休むと連絡したから安心して眠れるよ。

少し寝て、起きたら病院にいかなくちゃ……ああでも、動きたくないなぁ。

喉が痛くて咳も辛くて、熱のせいか身体が酷く重いんだ。

頭がボーッとする、寒気がするのにおでこは熱い。

喉も乾いてカラカラなのに、キッチンまでが遠く感じて行きたくない。


本当ならこんな時、自分で自分に癒しの霊力ちからを使えばさ、完治まではいかなくても、だいぶ身体が楽になるんだ。

だけど今は使えない。

使った途端に貧血になっちゃうもの。

クソ……”ペルソナ” めぇ……アイツのせいで僕は散々だ。

いつか会ったらたっぷり文句を言ってやる。



頭の中で悪態つきつつ布団を首まで引っ張り上げた。

身体はガタガタ震えてくるのに、顔から上はやけに熱い。

眠れば良くなる、そう思うのに咳がジャマして眠れないし、咳をすれば喉はさらに痛くなる。

こんな時、誰かが傍にいてくれたらなぁ。

一人暮らしの体調不良に心が少々折れかけた……その時。


ゴンッ!!

ゴロゴロゴロゴロー!!


な、なに!?

この音!!


床になにかが落ちたような、床でなにかを転がすような、そんな音が聞こえてきたんだ。

僕は頭をなんとか持ち上げ、音の方向を見ようとした……が、なんてったって身体がダルくて動けない。

正体不明の謎音に、もしかして心霊または怪奇現象!? 

と、霊媒師にあるまじきガクブルしてたら、ベッドの横からお姫の声。


『うなぁ! うなぁぁん!』


姫のシャウトに力を絞って身体を引きずり覗いてみると……床の上には大福と、その隣には1本のペットボトルが転がっていた。


「大福……もしかして、キッチンから持ってきてくれたの?」


もしもの時の為のストック。

キッチンの棚の中には、非常用の食べ物と飲み物が常に備蓄してある。

そこにはお菓子やカップ麺、そして、冷蔵庫に入りきらない飲み物も置いてあり、それをお姫が持ってきてくれたんだ。


『うなっ! うなななな』


やっぱりそうか……猫だからペットボトルは持てないけど、頑張って棚から落として床を転がし運んできてくれたんだ。


「大福ぅ……(ゴホッ!ゴホッ!)ありがとね、すっごくありがとうね(ゴホゴホ)。僕、喉が渇いていたからめちゃくちゃ嬉しいよ(ゴホッ!ゴホッ)。ベッド(ここ)まで運ぶの(ゴホッ!ゴホッ)大変だっただろう? 大福は優しい仔だね。ありがたくいただくね、」


愛情がたっぷり詰まったスポーツ飲料(チョイスも的確)、それをグイグイ一気に飲んだら五臓六腑に沁みわたる。


水分補給をした事で、喉が潤い少しだけ楽になる。

咳は出るけどさっきほどじゃなくなって、この隙に眠りにつこうと布団をかけて目を閉じた。

それと同時に大福が、トスン! とベットに上がってきてさ、テチテチと顔の傍まで歩いてくると、氷のように冷たいおててを僕のおでこにくっつけたんだ。

あぁ……ひんやりして気持ちが良いなぁ……肉球のぷにぷに感もたまらない……し、し、幸せぇぇぇ!

ユーレーニャンコの熱さまし、こんなのきっと世界中で僕だけだ。

なんて贅沢、そう思うと笑っちゃう。

笑うと喉が痛いのに、それでもやっぱり嬉しいの。

お姫の気持ち、お姫の優しさ、それだけで免疫力が上がりそうだ。


「大福……ありがとね、大好き」


言いながら手を伸ばし、小さな頭をナデナデすると、お姫は僕の手の先をザーリザーリと舐めたんだ。

薄目を開ければ心配そうなショボン顔、ごめんね、心配かけてるね。

少し待ってて、気合いで風邪を治すから。

水分補給ヨシ、熱さましもヨシ、あとは出来ればなんでもいいからゴハンを食べて薬を飲むのが理想だけれど、……さすがにそれは無理っぽい。

いいや、当初の予定通り、とにかくこのまま少し寝よう、……寝て起きたら……きっと少しはマシになってて……そしたら……なんか食べ……病院も………………


この時……僕は熱にやられていたのか、意識が半分飛んでいた。

まばらな意識は夢と現実、それと、今と過去を混濁させる。

ベッドの上で仰向けの、視界の先にはいろんなヒトといろんな景色が浮かんでは消えていく。


あれは……大福だ、あれ……? 

おでこにおててが乗っかってるのに、あそこにも大福がいる……あ……でも尻尾が少ない……二尾しかないよ……という事は、あの仔は過去の大福なのか……?

あ……今度は先代だ……ここは……F市のハローワーク?

そうだ……僕はここでスカウトされたんだ……先代が幽霊だとは気が付かなくて、普通に話をしちゃってさ……懐かしいなぁ……

社長もいる……ここ……埼玉の廃病院だ……幽霊看護師のタカシさんと……ダンスバトルをしているよ……あはは……あれは盛り上がったなぁ……

あぅ……ヤバイ……弥生さんと水渦みうずさんが喧嘩を始めた……ユリちゃんの青いリボンが風に揺れてる……ジャッキーさんは筋骨隆々……キーらんコンビは相変わらず仲良しだ…………


あ……今度は前の会社がみえてきた……わぁ……懐かしい……同期で仲が良かった五十嵐だ……五十嵐の奥さんの茉奈まなちゃんもいる……あ……元カノの杏ちゃんだ……お花屋さん……頑張ってるみたいだなぁ……よかったよ……






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