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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十八章 霊媒師 三年後ー16


3月第3月曜日 PM8:19


今夜のゴハンはすこぶる豪華!

サーモンいくらにボタン海老、トドメに毛ガニがたっぷりのった海鮮弁当!

なんとお値段2500円!

弁当1つに2500円よ? 

富裕層しか手が出ない、普段の僕なら無縁の弁当!

それが今、僕の目の前にあるのだっ!

ひゃっほーい!

もちろん自分じゃ買ってない!

そんな勇気があるワケない!

これは社長のオゴリなの!

僕、社長に一生ついて行きます!


光り輝く海鮮弁当(未開封)。

これを大きなデスクの上に、2つ並べて待機中だ。

水渦みうずさんとお姫、早く帰ってこないかなぁ。

いい加減腹ペコだ。

だけど、どうせならみんなで一緒に食べたいからさ。

こうして事務所で待ってるの。



遡るコト今日の夕方。

退社時間が迫った頃に、僕が社長にお願いしたんだ。


「僕……やっぱり水渦みうずさんを待っていても良いかなぁ。20時過ぎには戻ってくると言ってたし、無人の事務所に女の子1人だなんて危ないもの。それにお姫も一緒だし(早く会いたい)……ダメ?」


社長は快く許可を出してくれた。

本当は自分が残るつもりでいたのに、水渦みうずさんたっての希望で ”ユリさん連れてとっとと帰れ” と言われてしまった。


「エイミーがダイジョブなら頼むわ。夜もおせぇし、残ってくれりゃあ安心だ。その代わりメシ代置いてくよ。水渦みうずと一緒に美味いモンでも食ってくれ、(ゴソゴソ……)……あ、細けぇのがねぇや……むぅ……仕方がねぇ、コレで!」


とまぁ、こんな経緯でいただいたのが五千円!

さすがに多いと思ってさ、おつりは返すと言ったんだけど、そこですかさずユリちゃんが、”今、駅ビルで北海道物産展やってるみたい!” と言うもんだから……ねぇ。

ふふふ……これはもう、物産展に行くしかないなと遠慮なくいただいてしまったのだ!



…………しかし、月曜から色々な事があったな。

去年の暮れから始まった、霊力ちからを使うと必ず起こる体調不良。

その原因と思われる ”ペルソナ”。

社長曰く、僕が生み出した者……らしいけど、僕はそんな覚えがないし、謎が多い存在だ。

今日……水渦みうずさんは、その ”ペルソナ” と接触した。

顔を視て言葉を交わし、手にも触れてきたんだ。

電話でなら聞いたけど、出来れば直接話を聞きたい。

本当に僕にそっくりなのか、話した感じの印象はどうなのか、なにを考えていそうだったか……とかさ。

なんでも良いから、些細な事でも構わないから、とにかく情報がほしかったんだ。


自分で淹れたジャスミンティーを飲みながら、退屈しのぎにストレッチをしていた。

無理ない動きを重ねていけば、身体が伸びて気持ちが良い。

調子にのって、よく分からないけどヨガっぽいポーズをとったら足の裏がつってしまった。


イテテテ! なんて、1人でジタバタ大騒ぎをして、涙目で足を揉んだりしていたら……


ガチャ、


背中でドアの開く音。

ヨタヨタしながら後ろを見れば、水渦みうずさんと大福がポカーンとしながら立っていたのだ。



……

…………


「驚かせないでください。事務所の電気がついているから(モグモグ)、社長かと思って中に入ったんです(モーグモーグ)。そしたらいるのは岡村さんで、しかも……(モグモグモグ)、変な動きをしてるから悪霊にでも憑かれたのかと思いました。あぁ……いくらが美味しい……」


そう言って、うっとりモグモグ目を閉じるのは水渦みうずさん。


『うななな、うなぁん、うなぁ……』←オサカナうまいにゃぁ……


大福もおんなじだ。

僕のサーモン一切れを(醤油はかけてないヤツ)お弁当のフタにのせて出してあげれば、うなうな言って味わってるの。


「いやぁ、驚かしてちゃってゴメンネ。ストレッチしてたら足の裏がつっちゃってさぁ。……毛ガニ美味っ!」


僕も一緒にモグモグしながら舌鼓。

あぁ、サイコーだ。




夢のようなゴハンを食べ終え、2人とイチニャン、声を揃えて ”ごちそうさま” をした後は、水渦みうずさんが容器を片付け、僕はお茶の用意をし、大福姫はソファに寝転び毛繕い(マイペース……!)。


そんなこんなで10分後、人の子2人もソファに座って、まずはお茶を飲んだんだ。


「岡村さんのジャスミンティーを飲むのは久しぶりです。……すごく美味しい」


両手でカップを手に持って、水渦みうずさんはゆっくりとお茶を飲んでいる。


「そうだったっけ。こんなもので良かったらいつでも飲ませてあげるよ。美味しいと言えば、海鮮弁当最高だったね。社長にお礼を言わなくちゃ。あんな高級弁当、実力じゃあ食べられないもん」


”あはは” なんて笑いながら僕が言うと、水渦みうずさんは口元だけで少し笑う。

そして少し考え、こう言ったんだ。


「お弁当、美味しかったです。でも、…………昔、岡村さんと現場で食べたカップ麺の方が美味しかったかな。覚えてます? 神奈川のポ現、黒十字様の現場です。そこで深夜、散らかった部屋の中で志村さんが用意してくれたカップ麺を食べたじゃないですか。あの時……岡村さんは、カップ麺でも私と一緒に食べると美味しいって言ってくれたんです、…………覚えてないか、4年も前の事だもの、」


いや、……覚えてるよ。

そんな事もあったね、あの時食べたカップ麺は僕も美味しいと思った。

……うん、ちゃんと覚えてる。


懐かしいな。

僕がまだ ”おくりび” に入って間もない頃だ。

社長から ”これが最後のOJTだ” と言われてさ、ベテラン2人の足手まといにならないように、必死になったのを覚えてる。

あの頃の水渦みうずさんはキツかったなぁ。

言う事ぜんぶが辛辣で、話すたんびに僕は血塗れ状態だった。

現場に着いて早々に、


____黙ってろ、ド新人 


とまで言われてタジタジしたもん。


それでも、嫌いにはならなかった。

だって口は悪いけど、態度もなにも悪いけど、なんだかんだで僕を助けてくれたしね。

だから……あの夜の事はよく覚えてるよ。

水渦みうずさんは言ってたよね、誰かと夕飯を食べるのは数年振りだと。

友達が1人もいないと豪語して、なにかにつけちゃあ ”私は醜女しこめ” と自虐的な水渦みうずさん、……あれからアナタは随分変わった。


相変わらず口調はキツイが攻撃的ではなくなった。

愛華さんと再会してからまとう空気も優しくなった。

見た目もうんと変わったよ。

愛華さんと本橋さんの愛情ゴハンは低カロリーで栄養満点。

健康的にスリムになって、弥生さんからメイクも教えてもらってさ。

服や小物はユリちゃんとマジョリカさんが一緒になって選んでくれる。

時間が合えば、みんなで仲良く出掛けてるって聞いてるよ。


嬉しいなぁ……水渦みうずさんに友達が出来た。

眩しいなぁ……すっかり美人さんになっちゃった。


今のアナタは街を1人で歩いても、誰からも怒鳴られないし邪魔にもされない、アナタを罵る不埒な者はどこにもいない。


アナタはすっごく変わった、……でも、やっぱりぜんぜん変わってないや。

豪華な豪華な海鮮丼より一緒に食べたカップ麵、そっちの方が美味しいなんて、そんなコト、水渦みうずさんしか言わないよ。

忘れちゃってもおかしくないほど些細な思い出。

それをアナタは覚えてて、それを僕も覚えてた、それがなんだかとっても嬉しい。


「あはは、あの時のカップ麺は本当に美味しかった。あの後僕らは満腹で、あろうことか現場で寝落ちをしたんだよね。ジャッキーさんは怒りもしないで寝かせてくれたの。現場は大変だったけど楽しかったな」


自然と笑みがこぼれてしまう。

水渦みうずさんは、笑う僕を真正面からジッと見る、そしてこう言ったんだ。


「……私にとって、あの日の事は忘れらない出来事でした。私と一緒に食事をとりたい、そんな人は皆無でしたし、……ましてや、打ち上げに誘われたのも初めてでした。岡村さんには酷い事をたくさん言ったのに、扱いも悪かったのに、それでも貴方は一切態度を変えなかった」


「そんな、大袈裟だよ。あの頃の水渦みうずさんは今より言葉はキツかったけど、でも、根っからの悪い人とは思わなかったし、実際その通りだったもの。アナタは優しいよ」


「………………」


「あ、出た。水渦みうずさんってチョットでも褒められると黙っちゃうよねぇ、あはは」


僕が言うと、水渦みうずさんは耳まで真っ赤に恥ずかしそうに俯いた。


「そ、そうでしょうか、……あ、あまり……そういうのに慣れていないので……すみません……」


あ……今のは軽い冗談で、責めたつもりじゃなかったのに。

いつもだったら2倍3倍言い返すのに、たまにこうしてショボンとしちゃう。

僕はこれに弱いんだ。


「ご、ごめん、違うんだ。水渦みうずさんがあやまる事じゃないよ。良いんだ、照れてしまってどうして良いか分からなくなっちゃうんだよね。分かってるから大丈夫…………って、よく考えたら褒められただけでテンパる人がよく ”ペルソナ” には怯まなかったよねぇ。アナタは強いんだか弱いんだか……あはは、たまに分からなくなっちゃうよ」


ヘンなの、と思いつつ僕が言うと水渦みうずさんは、


「”ペルソナ” になんて怯みませんよ。だって……彼は岡村さんじゃないもの」


当然です、な顔をした。


「え……? それどういう意味……?」←ポカン顔の僕

「えっと……それは……」←目を逸らす水渦みうずさん

『うなぁぁん?』 ←チョット悪そうな顔のお姫


三者で順に顔を見合わせしばしの沈黙。

僕の頭の中ではさ、”だって、彼は岡村さんじゃないもの” これがグルグル回ってた。

さっきの言い方……コレすなわち、僕に対して怯むコトがあるって意味だ。

ヤバ……僕、知らないうちに嫌な態度をとっていた?

気を遣って言わないだけで、威圧感とか感じてた?

そんなつもりはミリもないけど、もしそうだったら僕の方こそあやまらなくちゃ。


水渦みうずさん、もしかして僕、」


なにかしました……? と聞こうとしたのに、水渦みうずさんは被せるように大きな声を出したんだ。


「お、岡村さん! そんな事より ”ペルソナ” の話をすべきです! 今夜待っててくれたのも、その話がしたかったからでしょう!? 夜も遅いし無駄話をしている時間はありません! 早速本題に移りましょう!」


フンガー! な勢い、その迫力は先代バリだ。

正直僕はチョイビビリでさ、


「あ、うん、ごめ、そうだよね、時間遅いもんね、で、でも、”ペルソナ” の話が聞きたいだけで待ってた訳じゃないんだ、や、もちろん聞きたいけど、夜に女の子を1人にしたくないなって、」


アワアワ言い訳並べてみたの。

でもそれがマズかった。

水渦みうずさんはほっぺを真っ赤にこう言ったんだ。


「お、お、女の子って……そういう事言わないでください!」


な、なんで!?

だって実際女の子じゃない! と言える空気じゃぜんぜんない。

よく分からないけど怒っているし、話を早くシフトしよう!


もっとも____


それは是非とも聞きたい話だ。

”ペルソナ” の情報ならどんな事でも知りたいよ。







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