霊媒師おまけ……バッドアップル-5
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『それじゃあ、おはぎからいくよ! せーの……せーの……ニャローーン!!』
意外にも勇ましい掛け声だ。
おはぎと名乗ったサビ猫は、”ニャローーン!!” と叫んだその直後、ヒト族みてぇに立ち上がる。
後ろ足で器用に立って、前足はバンザイポーズでシャキンと伸ばしてキメ顔だ、………………コレ、なにしてんだ?
芝生の上でつま先立ちで、一生懸命霊体を伸ばしてるんだけど、ただそれだけだ。
わ、分からん……これが ”ヘビごっこ” ?
どの辺が ”ヘビ” なのか、まったくもって分からねぇ。
だがしかし、ケモノ達には分かるんだろな。
だってスッゲェ盛り上がってる。
『おはぎイイ感じ! そのまま真っすぐ! おなかに力を込めて!』
力強く言ったのはオレンジ色のニョロニョロヘビだ。
サビのセコンド、名前はコンちゃんだと言っていた。
『う、うん! おはぎ、がんばるにゃー!』
バンザイポーズの肉球が、汗でツヤツヤ光ってる。
おはぎは真剣そのもので、頑張るヤツは人だろうと猫だろうと応援したくなっちゃうよ。
とそこに、シマシマ模様の三つ子の猫の茶トラ模様、茶々丸がレフリーみたいに躍り出る、で。
『はにゃ! さすがは茶々丸の妹、おはぎは腕を上げたにゃ! さぁ、つぎは人の子の番だにゃ! ちょうせんしゃ、前へ!(キリーッ!』
うっはー!
挑戦者、呼ばれちゃったよ!
誰が出るんだ?
おはぎの対戦相手は一体……って、センターソン、おまえかー!
あはははは!
ヤベェ! 笑う! 腹イテェ!
センターソンがオドオドしてる!
どうして良いか分からなくって二の足踏んでる!
____謝罪行脚を終えたこれから精進あるのみ、
____なんだってします、
____どんな努力も惜しみません、
いつだって真面目な努力家、頭のキレる司令塔。
窮地にあっても素早い状況判断で、正しく動ける強者だ。
さぁ、さぁさぁさぁ!
センターソン! この窮地、どう切り抜ける!?
『中村さん! ダイジョブか!?』
JINが大汗掻いている。
ランナーは浮かれた顔で『がんばれ!』なんて応援してて、イーグルはテンパってるのか両手に銃を構えてやがる(デザートイーグルじゃあねぇ)。
あれは……水鉄砲? と思ったがチガウ、シャボン銃だ。
引き金引くたびシャボン玉がフワーッと溢れて、キレイなシャボンにケモノ達は大喜びだ。
オロオロしているセンターソンは、それでもおはぎの前に出ると茶々丸にこう言ったんだ。
『も、申し訳ないのですが、”ヘビごっこ” のルールを教えていただけませんか? ”挑戦者” と仰るからにはこれは競技とお見受けしました。が、勉強不足で恐縮ですが、私共はそのルールを知りません』
ブハッ!
おまえ、ホントに、もぉ!
どんな時でも真面目キャラは崩れねぇのな!
クソ丁寧に喋りやがって!
でもよぉ、それじゃあダメだと思うぜ?
だって視ろよ、
ポカーーーーーン…………
茶々丸はもちろん、おはぎもコンちゃんも他の仔達も、お口ぱかんで固まっている。
『キョウギ……? オミウケ……? ベンキョ……? キョースク……? は、はにゃっ! ナニ言ってるんだにゃ! ムズカシイコトバはわからないにゃー!』
そーだそーだー!←他の仔達の援護射撃
ブーブー言われて大汗掻いてるセンターソン、そこに天女が舞い降りた。
『中村、この仔達にムズカシイ単語はダメだよ。もっと分かりやすく話してあげなくちゃ。あとあと、少しカタイかなぁ。もっともっと、くだけた言葉使いが良いと思う。あ、ウチにもそうしてね。友達みたいに楽な感じが嬉しいな』
マジョリカにそう言われ、戸惑いつつも頷いたセンターソンは、咳ばらいをした後にこう言い直したんだ。
『い、今のは分かりにくかったね、ごめんよ。それでね、私たちは ”ヘビごっこ” を知らないんだ。だからやり方を教えてほしい』
パァァァァァ!←ケモノ達とアタシもついでにイイ笑顔!
ナイスマジョリカァァァ!
センターソンのフランクレベルが20上がった!
オカタクねぇよ!
砕けてるぅ!
んで、この仔達も今度は分かったみたいだ。
茶々丸をはじめ、ケモノ達はコクコク頷き ”ヘビごっこ” のルールを事細かに教えてくれた(でもみんな同時に話し出すから聞き取るのが大変だったけど)。
『なるほど、分かった! ヘビの仔みたいに霊体を伸ばして、どっちがより長く伸びるかで勝負するのか!』
理解したセンターソンはもうオロオロなんかしちゃいねぇ。
挑戦者として、改めておはぎの前に立った……が。
うわぁ……コレ、勝負にならねぇだろ。
身長差がハンパねぇや。
センターソンは大体アタシと同じくらいの身長で、180はあるはずなんだ。
対しおはぎは……スッゲェちんまい。
バンザイしててもセンターソンの膝止まりだ。
『はにゃ! では挑戦者、センタソー! かけ声のあとにカラダをのばすにゃ! ヘビの仔みたいに長くなるにゃ! 言っておくけど……てかげんはいらないにゃ。茶々丸の妹は ”ヘビごっこ” がじょうずなんだにゃ。ゆだんしてるとイタイ目みるにゃ! はにゃはははははははー!!』
茶々丸め、スッゲェ強気だけど本当にダイジョブか?
おはぎ、負けたら泣いたりしねぇかな?
ちょっと心配だ。
手加減不要、油断をすれば痛い目に、……と言われたものの。
センターソンの足元で、プルプル立ってる小さな猫にどこまで本気を出したらいいのか、戸惑いまくっていた。
つま先立ちのバンザイポーズは急所の腹が丸視えで、その腹も、ぽってりたるんと出てるんだ。
人でいうなら胃下垂みてぇな下っ腹。
やっこい猫毛がパヤパヤしてて、思わずナゼナゼしたくなる。
長い尻尾は左右にユラユラ揺れていて、顔はキリッと勇ましい。
んでよ、さっきからなんだ?
どこからともなく香ばしい匂いがするんだよな……なんつーか、ポップコーンみてぇな匂い。
リーに言ったらアッサリと、
『ああ、それはおはぎさんの肉球から匂ってきてるんですよ。肉球にかいた汗はポップコーンの匂いによく似てるんです』
マジか、ヤベェな。
汗の匂いがポップコーンとかどんだけ可愛いんだよ。
センターソン、もういいよ、負けてやれ。
おはぎに花をもたせてやれや。
センターソンは遠慮がちに下を視た。
背中を若干丸めているが、この段階ですでに圧勝だ。
花を持たせてやりてぇけど、さすがにコレは難しいかも、……とココで、グズグズしている挑戦者にレフリーがこう言った。
『さぁ、とっととのびるにゃ! のびる前のかけ声をわすれたらシッカクになるからちゅういするにゃ! ファイッ!』
急かされたセンターソンはいよいよ覚悟を決めたのか、胸の前に手をやると ”ヘビごっこ” の構えをとった。
そして小さく ”勝負は勝負” と呟いた後、
『セ、センタソーーー!!』
と声を張り上げおはぎに習ってバンザイポーズ!
シャキーンと堂々両手は天に。
まるでさっきの自主トレみてぇな機敏な動きだ。
そんでもって、あはは、掛け声なっ!
茶々丸の呼び間違いをそのまま採用、センタソー!
真面目な顔での重低音、だけど叫ぶはセンタソー!
んぷぷー!
なんかチョットイイ感じ、キャラが崩壊し始めた!
だがしかし……センタソー、大人げねぇなぁ。
180の長身が、両手を上げれば2メートルをヨユーで超える。
おはぎはヤツの膝丈で、つま先立ちで腹を視せつけプルップル。
まるで勝負になりゃしねぇ。
センタソーは(コッチの方が気に入った)、”や、やりすぎたか……” な顔でオロオロしてるがバンザイポーズは継続中。
おはぎはポヤッと上を視て、鼻をヒクヒクさせていた。
ダ、ダイジョブか?
もしかして泣いちゃうか……?




