霊媒師おまけ……バッドアップル-4
『にゃはははは! やめ! やめ! くすぐったぁっ!』
動物達が小山になったその下で、17才の声だけ聞こえる。
他のヤツらも大体おんなじ状況で、どいつもこいつももみくちゃにされていた。
うっは!
ケモノ達に容赦はねぇ!
遊ぼ遊ぼとテンションマックス、小山の下では野郎共……きっとヨダレでベタベタだ、んぷぷ!
アタシは愉快でたまらなくって、小山のまわりをアッチにウロウロ、コッチにウロウロ。
慌てるヤツらの顔が視たくて、ひたすら覗き込んでいた。
と、その時。
ブワッ!!
突然、強い風が吹いたんだ。
あ、……この感じはリーじゃねぇか?
そう思って振り向けば……やっぱりだ。
視上げた空にはライトブルーのメタリック。
大きな翼を堂々広げた水龍が、気品を持って滞空中だ。
しっかしまぁ、相変わらずデケェな。
誠の龍呼とイイ勝負だわ。
もたげた鎌首、そこから下はグルングルンと渦巻いて、優雅にユラユラ揺れている。
深海色の凛々しい瞳、大理石の鋭い牙は開いた口に綺麗に並び、その口の左右には鞭のような立派な髭がしなってるんだ。
圧倒的な美しさ、圧倒的な神々しさ。
それでいて慈悲深い、コイツの名前は ”リヴァイアサン” 。
ダーマン星の龍族で、虹の国の管理人を勤めてる。
そのリヴァイアサンの頭の上には……
『朋美ー! 早かったねぇ!』
マジョリカがちょこんと座って、アタシに向かってブンブン両手を振っていた。
『マジョリカー!(ブンブンブン!)リーも久しぶりー! 元気だったかぁ? 今日はいきなり押しかけて悪かったな! コイツら全員、アタシの可愛い部下なんだ! 黄泉に来てまだ日が浅いから、虹の国の仕事を手伝って馴染んでもらおうと思って! 今日はよろしくたのむよー!(ブンブンブン)』
地面の上から大きな声でそう言うと、リヴァイアサンは深海色の目を細め、優雅に優美に霊体を揺らすと、鎌首をさげ……
『朋さんお久しぶりですねぇ。お元気でした? いきなり押しかけ大歓迎! 私も嬉しいし、ココに住むケモさん達も大喜びですよ。みんな遊ぶコトが大好きですから。それで……と、朋さんの部下さん達は……あ、もしかして、そこのケモ山の下敷きですか? あーやっぱり! ふふふ……きっと待ちきれなかったんでしょうねぇ。ついさっきマジョリカさんが「今日はヒト族のオトモダチが遊んでくれるよ!」ってみんなに言ったら大はしゃぎしてましたもん。私が来る前に先回りされちゃった』
とまぁ、ゆっくりのんびり。
まるで近所の爺さんみてぇな話し方。
なんつーか、いつもながらギャップに笑う。
圧倒的なビジュアルなのに、中身は呑気な爺さんだ。
でもま、虹の国ではコレが合っている。
ケモノ達は霊体も小さく臆病な子もいるからな。
リーは霊体がデケェから、大きな声や早口は、つもりじゃなくても威圧感を与えちまう。
このくらいがちょうど良い。
『みなさーん! 今日はヒト族のお兄さん達が来てくれましたー! みなさんとは初めましてですね。今日は1日たくさん遊んでもらいましょう! ふふ、私もついでに遊んでもらおうかな。というコトでみなさん、お兄さん達から一旦降りてあげてください。このままじゃ遊ぶ前に潰れちゃいます』
リーはユラユラ滞空しながらケモノ達にそう言った。
聞いた子達はコクコク頷き素直にどいて、小山のあとには野郎共が仰向けに倒れ込んでいた。
あーあー、みんなして毛まみれだ。
んでもって……ははっ!
なんだその顔。
なんだかちょっとニヤケテルじゃねぇか。
◆
ケモノ達がワクワクしながら待ってる中で、まずは軽くご挨拶だ。
野郎共はリーともマジョリカとも初対面。
今日は1日世話になるし、でも、オカタイコトはめんどっちいから、ごくごくライトな自己紹介をしたんだよ。
まずは虹の国の管理人のリヴァイアサンだ。
『どうもどうも、はじめまして。虹の管理人をやってますリヴァイアサンです。ダーマン星の龍族で、虹の国で勤務してから……えっと……えっと…あれ? 何年でしたっけ、途中300年まで数えてたのにまた忘れちゃった。ま、いっか。とにかくずーっとココで働いてます。名前は長くて呼びにくいから虹の仔達はみんなして ”リー” って呼びます。良かったらバッドアップルのみなさんも ”リー” と呼んでください。今日は来てくださってとーっても嬉しい! ウチのケモさん達も大喜びです! どうぞどうぞよろしくおねがいします♪』
おぉぉぉぉ!!
爺さんみたいな喋り方だがビジュアルだけは神々しい。
リーを視上げる野郎共は驚愕しつつも興奮が隠せてなくて、仕事だからと真面目な顔をしてるけど、口の端をムズムズピクピクさせていた。
そしてお次はマジョリカだ。
『はじめまして! ウチはマジョリカ・ビアンコ、朋美とはずっと仲の良いトモダチなんだぁ。ウチはイタリア人だけど家族は日本人なの。だから、みんなとも仲良く出来たら嬉しいです! 今日はお休みなのにお仕事をお願いしちゃってごめんなさい。ウチも一緒に頑張るからね! モフモフ達といっぱい遊ぼー!』
言い終えて、拳を握るキュートな姿にコイツらは、
『『『『『『…… て、天女さま!? ……』』』』』』
とザワついた。
そーだろそーだろ、可愛いだろ、天女だろ!
アタシの自慢のトモダチだ!
その後は27人。
緊張しつつも順番に自己紹介を進めていって、全員が終わった所で、アタシは指をパチパチ鳴らした。
構築したのは特殊部隊の基本アイテム、ドッグタグに模した形の翻訳機器だ(製作者はバラカス)。
黄泉の国の中にいれば、バラカス自慢の翻訳機能が働いてるが、特殊部隊は黄泉を飛び出し色んな星に行くからさ、言語の壁に阻まれないよう、ペンダント型の翻訳機器を身につけるんだ。
一般には入手不可能レアアイテム、これを使えば動物達の言葉がワカル(動物達のコトバは諸事情によりバラカスの翻訳機能はスルーされるんだ)。
ホントはさ、現場でしか使っちゃいけないモノだけど、分かりゃしねぇよ使っちまえ!
『へにゃ! へにゃ!』
『はにゃー!』
『ひにゃー!』
『ほにゃー!』
『チュンチュンチュンチュン!』
『シャー!(蛇の喉の音)』
動物達の鳴く声がデカクなってきた。
ははっ!
悪いな、ちょっとばっかし待たせちまった。
今からガッツリ遊ぶからな!
『ボス、マジョリカさんを含め全員ドッグタグを身につけました。これで動物達の言葉が分かるのですか? そんな事が本当に、…………んっ?』
センターソンが話の途中でコトバを止めた。
”んっ?” と僅かに眉毛を寄せて、動物達に目をやった。
目線の先には黒に橙、所により白が混ざる、ふわふわパヤパヤ斑な毛玉。
いわゆるサビ猫ってやつだな。
そのサビ猫は、ゴム毬みてぇにぴょんぴょん跳ねているんだけどよ。
『へにゃ! へにゃ! へny……まだ? リーたちのゴアイサツはまだおわらにゃいの? おはぎはもうまちくたびれたにゃー!』
『『『『『『…… えぇっ!? ……』』』』』』←27名見事なシンクロ!
野郎共はサビを視て、アタシを視てマジョリカを視た後にリーを視た。
全員揃って口をパクパク、”猫がしゃべった!” と焦ってる。
んぷぷー!
コレだよコレェ!
アタシはさ、コイツらのこーゆー顔が視たかったんだ!
1霊1機、身に着けた翻訳機器は今日も絶好調に訳してくれてる。
野郎共とマジョリカは目をまん丸に驚いてるが(マジョリカは光道だから使ったコトがねぇ)、こんなモンじゃあ終わらねぇぜ!
『はにゃ! ゴアイサツが長いにゃ! もうあきたにゃ!』
『ひにゃ! アイサツなんて尻のニオイをかげばいいのに!』
『ふにゃ! いまからかぎにいくにゃ!』
『ヒトの子の髪で巣をつくりたい! 星の髪がいい! チュン!』
『茶々丸たち、人の子のオシリをかいだらダメだよぉ、きらわれちゃうぅ』
シマシマ模様の三つ子の猫も、カラフルインコのラブバードも、オレンジ色のニョロニョロ蛇も言語の壁が取り払われた!
『『『『『『…… なんとー!! ……』』』』』』←野郎共
『きゃーーーー♪ みんなのコトバがワカルよぉ!』←マジョリカ
『私はもともと分かりますけど♪』←チョット得意げなリー
マジョリカはサビ猫みてぇにぴょんぴょん跳ねてはしゃいでる。
リーは ”ふふふ” とニコニコ笑い、野郎共はあばばあばばとテンパリ中だ。
動物達は今か今かと遊ぶのを待っている。
犬猫うさぎにハムスターにフェレットも、鳥もサカナも蛇も亀も……他にもたくさん!
その中でも、最初に喋った斑のサビ猫。
ちんまい霊体でテテテと走り……今、センターソンの目の前までやってきた。
んで、
『こんにちニャ! はじめまして! おはぎはおはぎだよ! 今日はいっぱいあそんでくれるんでしょう? あのね、あのね、おはぎね、さいしょは ”ヘビごっこ” がしたい!』
長い尻尾をピーンと立てて、はしゃいだ声でそう言った。
つーか、”ヘビごっこ” ってどんな遊びだ? 想像がつかねぇけど……ま、きっとおもしろいんだろう!




