霊媒師おまけ……バッドアップル-3
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謝罪行脚のすべてが終わり、バッドアップルは一週間の休暇を取る事にした。
それを言った時、隊員達は口を揃えて異論を唱え、やれ ”我々に休暇は必要ありません!” だの ”まだ現場に一度も出ていないからすぐにでも入りたい!” だの ”どうしてもとおっしゃるなら自主トレをして過ごします!” だの……ため息のでる真面目っぷりだった。
……
…………
『へぇ~! 朋美のところの隊員さん達、みんな真面目なんだねぇ。一週間も休みがあったら……(ポワン……♪)ウチならぜーんぶ遊びに行っちゃうのに!』
丸テーブルに頬杖ついて、ソーダを飲みつつニコニコ笑うマジョリカ・ビアンコ。
あ゛ーーー! 今日もスッゲェ可愛いな!
星の髪がサラサラ風になびいてて、青と金の瞳がキラキラ宝石みたいに輝いている。
タイプは違うがユリちゃんとおんなじくらいに可愛らしい。
アタシとは真逆のタイプで大事に大事にしたくなる(アタシはモロに白雪寄り)。
『ったくなぁ……真面目が悪いワケじゃねぇんだけどよ。ただ、度が過ぎてる。とにかくストィックなんだ。ココは黄泉だぜ? 遊ぶところがそこいらじゅうにあるってのに、どこにも行こうとしねぇんだから……参っちゃうよ』
休暇第一日目。
アタシはフラッとミシレイニアスの街に来て、そこで偶然マジョリカに会ったんだ。
マジョリカも今日は休みでブラブラしてて、だったら一緒にお茶を飲もうとカフェに入って女2人のお喋りタイム。
そこでアタシはヤツらの愚痴をぶちまけた。
『あーもー、ストイックも良いけどよ、たまには力を抜かねぇと、100年も経たねぇうちにココロがペシャッと潰れちまうわ。そうさせたくねぇんだよ。もっとこう、メリハリつけて自分の時間を楽しんで、それに対して罪悪感を持つこたねぇと気づいてほしい。あとそれと、もーちょっとフランク度を上げてくんねぇかなぁ……あれじゃあぶっちゃけ、アタシの方が疲れるわ』
言い終えて、はぁ……と大きくため息つけば、
『んも、ため息つくと幸せ逃げるよ。朋美、これ美味しいから食べてみて。ハイ、あーんして、あーん』
マジョリカは自分のケーキをフォークにさして、アタシに ”あーん” と食べさせた。
『(パク!……モグモグ)……あ、コレ美味いな。もう一口ちょうだい、』
『いいよ。ハイ、あーん』
『あーん、…… (パク!……モグモグ)……ははっ! マジウマ! あー、アイツらにもこういうの食わせてやりてぇなぁ。特にランナーはガキだから喜ぶだろうなぁ』
『朋美ってば……ふふふ、なんだか本物のママみたい』
『んー? ママみたいなモンだよ』
言いながら白髪のポニテが頭に浮かび、思わずププッと笑っちまった。
あのビジュアル、子供にしてはアダルトすぎだ。
笑ったアタシにつられたのか、マジョリカも一緒になって笑いだす。
2人して笑った後。
マジョリカはソーダのグラスを手で持ちながら、なにかを考えているようだった。
しばらくそうして黙っていたが……ふと、閃いた! みたいな顔をして、声を弾ませ言ったんだ。
『ウチ、良いコト思いついちゃった。あのね、真面目な隊員さん達がそんなに言うなら、休日返上でお仕事をお願いしようと思います!』
『仕事をさせる? ん……まぁ、アイツらなら、言えばなんでもするだろうけど、アタシはそうはさせたくねぇなぁ』
休む気ないなら働かせよう、……マジョリカにしてはハードな提案だ。
この子はいつでも優しくて、ふわっとホワンとしてるのに。
まさか……実はドSか?
『大丈夫、……ふふふ、この仕事なら朋美も賛成すると思う。ウチも一緒に行くつもりだし、もちろん朋美も一緒に行こ! あのね、その仕事はね……』
と耳打ちされてアタシは納得。
あーなるほど、仕事ってソッチ方面か!
イイじゃん!
それスッゲェ良いよ!
ダッァシャッ!
さっそくアイツら呼びに行こう!
◆
ここで一旦、アタシとマジョリカは二手に分かれるコトにした。
マジョリカには一足先に現場に行って、向こうさんの担当者にさ、本日1日臨時バイトで27名送り込むから好きなように使ってくれと伝えてもらい、アタシはアタシでアイツらを呼びに行き、瞬間移動で現場入りをする予定。
マジョリカを移動の陣まで視送って、直後、家っつーか、寮っつーか、とにかくホームに帰ってきた。
アイツらは部屋だろうか?
さすがにな、自主トレするとか言ってたけどよ、この半年間休む事なく謝罪したんだ。
休暇の初日はそれぞれゆっくりしてるだろうと踏んでいたのに、……アイツらは思った3倍勤勉だった。
野郎共は揃いも揃って庭にいた。
円となり、これまた揃って両手を高くあげていた。
『…………ったく、なにしてんだよ』
思わず小さく呟いた。
だってなぁ、せっかくの休みなのによぉ。
あげた両腕。
向かい合わせた手の平がこれでもかと光を発し、鋸みてぇな稲妻がバチバチ音を立てている。
稲妻はあっと言う間に巨大な輪になり、天にかざした手のひらは光に溶けて目に視えねぇ。
まるでデッケェ王冠みてぇだ。
それを下からみんなで支え、腰を落として踏ん張っている。
スゲェ霊力だ。
半年間のブランクがウソみてぇな凄まじさ、……ははっ!
コイツらやっぱり並みじゃねぇ!
霊力もスキルも群を抜いて持っている!
王冠は野郎共の霊力を吸い上げギラッギラに光ってる……が、あげた両手が震え始めて支えるのがやっとの状態。
いつ爆発してもおかしかねぇ、つかやりすぎ?
オイオイ、ダイジョブか……? なんて思っていたら、ここでポニテの年長者、センターソンが低い声でこう言った。
『天に昇りし我らが霊力、槍の豪雨とならんことを、』
言霊キターーーーーーーー!!
ワクワクしながら眺めていると……野郎共が支える王冠、そこからさ、強い光が天に向かって次から次へと打ち上げられた。
そして、
空を流れる星よりも速く、何千何万、数えきれねぇ光の線が打ち上げられて、そのすべてを打ち終えた時。
ザンッ!!
ザンッザンッザンッ!!
ザァァァァァァァァァァァァ!!
光の線は槍となり、天から数多、星の数ほど降ってきた。
キッターーーーーーーー!!
言霊通りぃぃぃぃ!!
頼もしいったらありゃしねぇ!
こんな大技、他のどの隊だって出来やしねぇよ!
さすがはアタシの部下達だ!
今からだってヨユーで現場に出れちゃうわ!
いっそ行くか! 初現場! ……って、そうだそうだ。
ウッカリテンション上がっちまったが、悠長に見学してる場合じゃなかった。
アタシはコイツら呼びに来たんだ。
『おーい! 自主トレしてるコト悪いな。おまえらチョット良いか?』
槍を避けつつみんなに近づき声を掛ければ2秒で整列。
ココロん中で、マジスゲェ……と感心しながら、簡単に事情を説明した。
……
…………
『分かりました。我々で役に立つなら喜んで。なんでも言いつけてください』
センターソンが答えると、横並びの野郎共は『ウッス!!』と気合いを視せつける。
誰一人不平も不満も漏らさねぇんだ。
ふっ、……そんなヨユーも今のうちだけ。
おまえらの慌てふためく顔、今日はたっぷり拝んでやるぜ。
『頼みてぇ仕事は向こうに着いたら説明するよ。まずは移動だ。おまえら全員アタシの傍に来い、____じゃ、行くぞ』
ブンッ!!
全員まとめて、今回アタシが移動をかけた。
だってコイツら目的地を知らねぇし。
瞬き一つで現場に到着。
えっと……マジョリカはどこかな?
それかリーでも良いんだけど……
……そこは、視渡すかぎり豊かな草原が広がっていた。
大地には芝生と草むら。
花が咲き木がそびえ、その真ん中には綺麗な小川が流れてる。
自然たっぷりのどかな場所で、遠くには大きな橋が架かってるんだ。
『ボス……ここは? 美しい所ですね……あの山の向こうには……虹、でしょうか……? 見事な虹だ。まるで大きな橋のように天高く架かってる、』
センターソンがため息交じりにそう言うと、どこからともなくワラワラと、いやジリジリと、いやダーッとダッシュで、いろんなヤツらが集まり出した。
この状況に真っ先に反応したのはランナーだった。
『うわっ!! えっ!! ウソ!! なにこれ!! なにここ!! もしかして……天国!? うひゃぁん!!』
あ、ランナーが襲われたー(棒読み)
飛び掛かられてもみくちゃにされてるぞー(さらに棒読み)
ランナーを襲ったヤツらはココに住むモノ達だ。
正確に言えばココに住むケモノ達。
犬猫うさぎにハムスターにフェレットも。
鳥もサカナも蛇も亀も、他にもたくさん!
『へにゃっ! へにゃっ!(ゴッチン! スリーン!)』
『はにゃ!(ベロベロベロ)』
『ひにゃ!(ガブガブガブ)』
『ふにゃ!(爪トギトギ)』
『チュンチュン!(くちばし攻撃)』
『……(ノソノソ……霊体にのぼる)』
あーあー、大変なコトになってるな。
動物達のイイオモチャにされてるわ。
耐えろランナー、ほかのヤツらも全員耐えろ。
今日は1日、ココで仕事をしてもらう。
ココにいる動物達とたっぷり遊んで、草木の手入れもするんだよ。
バッドアップル、最初の任務だ。
ここに住む動物達はしつこいからな、延々に遊べ遊べと絡んでくるから覚悟しろ。
あぁ?
ココはどこかって?
決まってんだろ。
ココは虹の国。
動物達の楽園だ!




