霊媒師おまけ……バッドアップル-1
本当に____
申し訳ございませんでした!!!!!
地面に額を擦りつけて、誠心誠意土下座した。
アタシの後ろに27名、野郎共も同じように土下座する。
霊の家の庭先で、土下座の相手は玄関ドアを半開きのまま、目を白黒させていた。
いつまでも顔を上げないアタシらに、土下座の相手____寺田さんは転がるみたいに駆け寄ると、
『ちょ、ちょっと!! やめてよ!! いいからっ! そんな事しなくていいからぁっ!!』
慌てたようにそう言って、寺田さんまで地面に正座で固まった。
『いや、そういう訳にはいかないよ。さっきも言ったけどさ、寺田さんが生きてた頃、15年前に起きた峠の事故はコイツらのせいなんだ。そのせいで寺田さんはケガをして、痛い思いと怖い思いの両方をさせてしまった』
アタシが言うと、後ろに並ぶ野郎共は土下座の頭をめり込むくらいに地面につけて、次々と謝罪の言葉を口にした。
アタシはそれを聞きながら、顔を上げて寺田さんに言ったんだ。
『本当は……もっと早くに来るべきだった。だがな、言い訳するんじゃねぇけどよ、コイツらが自由に動けるようになったのはつい最近の事なんだ。何十年も悪い霊に捕まって、脅しと恐怖にずっと支配されていた。魂を握られて、中には家族を人質に取られ……命令に背けない状況だった。……コイツらは峠に来る生者全員、殺してこいと命令されてた。でもそれだけは出来なかったんだ、……最終的には謀反を起こし、魂を刺し違える気で悪い霊をコイツらが滅した。これ以上被害者を出さない為にだ、……だからといって、それが免罪符になるとは思っちゃいねぇ、寺田さんにケガをさせた事は紛れもない事実だ。今すぐ許してくれとは言わねぇ、だが、』
少しで良いから話を聞いてやってほしい、……と、続けるつもりだった。
だがそれを、白髪ポニテの年長者。
中村”武弌、ニックネームは ”センターソン” がやんわり止めた。
『ボス……! ……すみません。話の途中で入るなど無礼な事を……あの、申し訳ありません。少しだけ私にも話をさせていただいてよろしいですか? ああ、ありがとうございます。
……寺田さん、ボスがさっき言った事。私達が、かつての長に恐怖で縛られていた、そのせいで命令に背けなかったという話ですが、それはどうぞお気になさらないでください。どんな事情があったにせよ、寺田さんには無関係です。なんの落ち度も無いあなたにケガをさせてしまった。あるのはその事実だけ。本当なら、もっと私達に勇気があれば、脅されようがなんだろうが、あんな命令に従うべきではなかったのです』
地面に両手をついたまま、センターソンは絞るように言葉を発した。
寺田さんはなんにも言わない、ただ、ジッとセンターソンを視つめている。
センターソンはチラッとアタシと目を合わせ、口パクで ”すみません” と困ったように眉を下げると、続く言葉を絞り出した。
『ずっと、……ずっと後悔しています。申し訳なく思っています。もし……寺田さんが謝罪を受け入れられない、気が済まないとおっしゃるのなら、私達はなんでも仰せのままに従います。気が済むようになさってください。寺田さんにはその権利があり、私達はそれを受け入れる義務があります』
……と、言い終えたセンターソンは再び地面に目線を落とし、寺田さんの言葉を待った。
まったく……クソ真面目な男だな。
わざわざよ、謝罪のハードル上げるみてぇな事しやがって。
他のヤツらも止めやしねぇし、どいつもこいつも真面目かよ。
でも、キライじゃねぇや。
そういうオマエらだからこそ、アタシは組みたくなったんだ。
寺田さんは大きなため息をついた。
そして吐いた息を取り戻すべく、スゥッと大きく息を吸い…………こう言ったんだ。
『事情は分かりました。確かに生者だった15年前、峠道で車の事故に遭いました。その原因はあなた達だったんですね。あの事故は大変だった……私、足を骨折したんです。でもね、当時警察の方に言われたんですよ。”これは死んでもおかしくない事故だ” ”よくこの程度で済みましたね” って。あなた達は私を殺せと命じられて、骨折だけで済ませてしまった。……怒られませんでした? その……なんでしたっけ、悪い霊に。……そもそもこんな事、私は知らなかったんだもの。知らんぷりして黙っていたって良かったのに……わざわざ謝りにくるだなんて、そっちの方が驚きました』
寺田さんはプッと吹き出し、目尻を拭った。
『腹が立たないと言えば……ウソになるかな。死にはしなかったけど骨折スッゴイ痛かったからムカつきますし。でも……もういいですよ。15年も前の事だし、こんなに辛そうな顔をして……気持ちは十分伝わりました。……え? そりゃあ伝わりますよ。だって視て、庭の百色華は1本だって枯れていない。あなた達の謝罪がウソであるならとっくに枯れてるわ、』
そう言って見渡す庭には、時間で色を次々変える、百色華が優しく淡く……風に吹かれて揺れていたんだ。




