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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十七章 霊媒師 繋がり-15


時刻はド深夜、草木も眠る丑三つ時。


リビングはいまだ明るく、生者も死者も好き勝手に過ごしてる。


ユリはコクコク船を漕ぎだし、ありゃあ、いつ落ちてもおかしかねぇや。

無理しねぇで寝りゃあ良いのに、昨日と一緒で ”寝ない寝ない” と土俵際で踏ん張り中だ。

ま、本人はそのつもりでも寝落ちはちけぇ。

寝たらそっと、布団まで運んでやろう。


ユリのすぐ近く。

真さんとエイミーは、瀬山さんの話で盛り上がっていた。

同じ師匠を持つ2人……だからよ、それぞれが習った技を教え合っているんかな? なんて思ってたんだ。

だが違った、そんなんじゃなかったわ。

話のメインは瀬山さんの嫁さん話で、やれ ”どんな方なんですか!?(エイミー)” だの ”物静かな別嬪さんだ(真さん)” だの ”僕も会ってみたーい!(エイミー)” だの ”じゃあとっとと口寄せ覚えろよ!(真さん)” だの、やたらと楽しそうだった。


んで、俺はと言うとこんな深夜に内職中だ。

霊力ちからを使ってある物を(・・・・)構築中で、これがまた中々どうして難しい。

本当はこの構築、式達も手伝うはずだったんだ。

なのにアイツら使えねぇ!

ユリからもらった日本酒飲んで、早々に寝ちまいやがった!

酔いどれ達は ”楽しい、美味い” と笑いっぱなしで……ははっ!

マジでスッゲェゴキゲンだった。

楽しい気分でそのまま寝落ち、今頃良い夢視てんだろうよ。

まったく、しょーがねーなー。



……

…………


ガラッ、


リビングの扉が開き、そこには親父とトモと猫がいた。

先頭は大福で、長い尻尾に生者と死者が繋がれている。


『うなー!』


ん?

今のはもしかして ”ただいまー!” か?

猫語なんて分かんねぇと思っていたが、表情と行間でなんとなくそんな気が……した。


「おう、おかえり。親父、トモ、2人でゆっくり話せたか? 大福、ありがとな。おまえのおかげで親父達は再会出来た。マジでスッゲェ感謝してる。お礼に ”ちゅるー” を用意するからな。もちろん箱買い(・・・)でだ」


『なななッ!?(キラキラキラキラ)』


ははは!

分かっちまった、今絶対 ”箱買い!?” って言っただろ!

あぁ、箱で買ってやる!(”ちゅるー” なんて箱でも安いが)

楽しみにしてろ!


ゴキゲンな猫又の後ろでは、親父とトモがピッタリと寄り添って……なんだよなんだよ、2人共幸せそうな顔しやがって。

なんでか知らんが鼻の奥がツンとしてきた。

親父……良かったな、トモも……良かった。

切れたと思った繋がりが、本当は切れてなくて、今夜新たに強く強く繋がったんだ。


「誠もユリちゃんもエイミー君も、……それから、真さんもいるんだろう? トモちゃんから聞いたんだ。みんな、遅くまで付き合わせてしまって悪かったね。…………本当にありがとう。トモちゃんをみんなで説得してくれたんだってね、私と会うようにと……これもトモちゃんから聞いたよ。本当に……ほ、ほんとうにありがとう、もう二度と会えないと思っていたのに……それがこんな……私が今夜、どんなに幸せか、……こ、言葉では言い表せないよ、」


親父はそう言って、涙を溢しながら破顔したんだ。


トモは、そんな親父の目元を拭って笑ってる。

両手を伸ばして一生懸命、……あーあー、幸せそうな顔しやがって。



トモさん、大和さん、2人が会えて本当に良かった……僕、ずっとこうなれば良いなぁって思ってたんだ。大和さん、社長、今まで黙っててごめんなさい。本当は生まれ変わってないのを知っていたのに、」


エイミーが半べそだ。

目を真っ赤にしてあやまっている。


なに言ってんだ、あやまる事はねぇよ。

俺も親父も怒ってなんかいねぇ。

エイミーも真さんもトモに口止めされたんだ。

約束事を反故にするより最後まで守り切る、そういうヤツは信用出来る。


……

…………


それから、猫又の妖力ちからを借りて、親父と真さんが再会した。

会うのは去年の春以来だ。


「真さん! 会えて嬉しいですよ。さゆりさんと貴子さんもお元気ですか?」


『ああ、2人共元気にやってるよ。なぁ大和、改めて礼を言う。ユリを大事にしてくれてるんだってな。昨日ユリが言ってたよ。誠にも大和にも、宝物みてぇに大事にしてもらってるって。この家でみんなで暮らすのが楽しくて幸せで仕方がねぇとも言っていた。本当にありがとう。これからもユリの事、よろしくお願いします』


真さんはそう言って深々と頭を下げた。

親父は大いに慌てちまって、


「ちょ!! 頭を上げてください! ユリちゃんはとっても良い子だ、大事にするのは当たり前ですよ! あんなに優しい子はいない、……結婚が決まって、当初誠はこの家を出てユリちゃんと2人で暮らそうと考えていたんだ。それをユリちゃんが止めたんです。家を出ていったらお義父さんが独りになっちゃうって……舅と同居してくれてるの」


一気に話し……途中、スヤスヤ寝落ちのユリを見た。

座布団3枚縦に並べ、その上に身体を丸めて熟睡中だ。

親父とトモは目を細めてユリをみる、そして続けて言ったんだ。


「ユリちゃんの気持ちが嬉しくてねぇ……ウチに子供は誠が1人。ユリちゃんは誠の妻ではあるけれど、それ以上に娘だと思っています。ね、トモちゃん」


『うん!』


即答のトモ

親父を視上げて寄り添って、嬉しそうに笑ってる。

それを聞いた真さんもエイミーも、それから俺も大福も、みんなして力の抜けた笑顔になった、…………ただひとりを除いて。


ギリ……ギリリ……ギリギリギリ……


そう、ユリだけは歯ぎしりしながら熟睡中で夢の中だ。


ユリ……もう大丈夫だからな。

田所はもういねぇ、今はまだ歯ぎしりが出ちまうだろうが、いつか必ず歯ぎしり無しで眠れるように、これから先もずっとずっと大事にするから。

何年経っても愛情は変わらねぇ。

親父とトモに負けねぇくらいの夫婦になろう。


みんなから注目を浴びるユリ。

本人は呑気にスヤスヤ眠ってる。

俺はユリの寝顔を眺め……それから、さっき構築したばかりの物、それをササッと取り出した。

本当は2人で渡してぇとこだがよ、起こすのもかわいそうだし良いだろう。


「そうそう、真さん、トモ。コレを渡しとくわ」


トモに一通、真さんには三通、藤田家みんなの分だ。


『ん? ずいぶんとキレイな封筒だな、なんだこりゃ……あぁっ!! こ、これは……!!』


ははっ!

驚いたか!

真さんは顔を真っ赤に紅潮させてる。

トモも同じだ。

ほっぺが赤い、髪と同じくれぇになってる。


『ちょ!! 誠、これ……招待状!? あんたとユリちゃんの結婚式!』


驚く2人に、ちっとばっかし勿体ぶって、「ああ」と一言頷いた。


「さっき俺が構築したんだ。現世のモノじゃあ黄泉の国には届けられねぇ。だからよ、招待状のデザインはユリが考え、それを俺が作る事にしたんだよ。今夜2人に会えて急いで仕上げた。真さんには3通だ、さゆりさんと貴子さんにも渡してくれ」


2人は驚き、そして大はしゃぎだった。

後ろではエイミーが号泣してる、”良かったね、嬉しいね” と、涙と鼻水でグチャグチャだ。

エイミーありがとな。

こうやって、自分の事みてぇに喜んでくれてよ。

おまえはユリみてぇに優しい男だ。

おまえがいたから今がある、マジでありがとな。



「そこにも書いてあるが、結婚式は南の島だ。なに、式には大福も来てくれるから親父とだって話し放題、心配はいらねぇよ。向こうに着いたら俺が現地で口寄せするから、当日は用意をして待っててくれ」


コクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコク!!


オイオイ、2人共頷き過ぎだ。

スッゲェ気合いが入ってる。

結婚式は明日じゃねぇから少し落ち着け……って、無理か。


真さんは床に崩れて泣き出しちまった。


『……ああ……夢みてぇだ……! 俺はよぉ……孫の花嫁姿も見れねぇまんま死んじまって、なのによぉ……視れるんだなぁ……ユリの晴れ姿をよぉ……貴子も婆さんもどんなに喜ぶか……!』


トモトモで、親父の胸に顔をうずめて、


『本当だよな……嬉しくてどうにかなりそう……アタシ、あのままウソをついてたら、結婚式に出るなんて出来なかった、なのにさぁ……こんなコトってあるんだな……んとに……アタシもまだまだ素人だ、……ははっ! もぉぉぉ最高にハッピー!!』


言った声が心なしか震えてる。

もしかしたらトモのヤツ、泣いてるのかもしれねぇな。


……

…………

………………


きっと、どこにでもある日常なんだと思う。

俺にはたまたま霊力ちからがあるから、死者を視て、言葉を交わす事が出来る。

そこだけは特殊なのかもしれねぇが、生者とか死者とか関係なくて、単純に嫁がいて親がいて祖父母がいて友がいて……それぞれが繋がって、それぞれが寄り添って、笑い合って、生きてる間もその後も、同じ時を刻んでいくんだ。


仕事してメシを食う毎日。

楽しい事もそうじゃねぇ事も、分かち合って乗り越えて、

たまにこうしてみんなで集まり大騒ぎをしてよ。

ああ……幸せだ。


どこにでもある特別・・な毎日、

平凡すぎる愛すべき日々、

俺はそれを両手で抱え、

繋がりが切れねぇように、

大事な人を大事に出来る幸せを噛みしめながら____




____これからを歩んでいきてぇと思う。





第二十七章 霊媒師 繋がり____了








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